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Channel: スガジロウのダイビング 「どこまでも潜る 」
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1982 東京無人島紀行

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 大学一年の潮美 プールは新宿のDOスポーツです。

NHKのソウフ岩みました。はっきり言って無理なつくりです。なぜ、いるわけもないシーラカンスにこだわらなければいけないのだ。ソウフ岩だけで十分に番組がつくれるのに、と。でも赤間君が出てきてなつかしかった。赤間君と,ソウフ岩をバックにツーショットを撮った写真があったと探したのですが みつからない。検索したら,古いブログが出てきたので、

 この文章は、1982年、娘の潮美が法政大学の一年生、ダイビングクラブに入った時、娘への手紙の形で、ダイビングのことを書き、やがて出版しようとして書いたものだ。その後、娘はニュースステーションの水中レポーターで有名になったから、出版できないこともなかったのだが、娘の同級生が事故で亡くなってしまったためにつつしんでしまった。
 好きな文章だったから、どこかで人目に触れさせたいと思っていた。

 富士マリアナ火山列島の八丈島と小笠原の中間点たりにある鳥島の入り江に船を止めて、うねりに身体を揺られながら書いています。私は船に酔う人です。そのことを人が聞くと、「ええっ!」と驚くのですが本当です。船に酔わない人にとって、海の仕事は船遊びですが、船に酔う人にとっては、難行苦行です。それに耐えて海に出るのですから本当に海が好きなのです。(その後、潮美がニュースステーションなど海の仕事をすることになり、船酔いは遺伝することがわかった。)今度の航海では、(広島大学の練習船、豊潮丸に乗っていた時に書いた)毎日朝起きると酔い止めの薬を一錠ずつ飲んで、過ごして来ました。薬なんてスパシーポ効果(暗示効果)があるだけだと、どこかのテレビ番組で実験をやっていましたが、私にとっては、確かに効果はあります。  
 しかし、今回の船の旅も日を重ねるうちに錠剤も飲まなくて大丈夫になり、うねりに揺られながらものを書けるところまでに慣れました。やはり、船酔いは慣れで、克服できます。神経が過敏なだけなのですね。
 鳥島はアホウドリの繁殖地として保護が行われている島です。アホウドリは英語ではアルバトロスですが、アルバトロスと言うと、雄大な翼を拡げて大洋を遠く旅する海の王者の姿が思い浮かびます。アルバトロスは、長い翼で滑空する鳥ですから、着陸してしまうと長い翼を引きずって歩かなければならないのでよちよち歩きです。飛び立つ時は長い滑走距離が必要です。海から飛び立つのならば長い滑走距離が取れるのですが、陸からの離陸は崖から飛び降りなければ飛び立てません。だから絶海の孤島で繁殖していたのですが、人に見つけられたのが最後で、飛べないでよちより逃げるだけですから、いいように撲殺されて、羽根布団の材料にされてしまいました。ほとんど逃げずに殺されたので、アホウな鳥と呼ばれたと聞きます。明治時代から撲殺が繰り返され、絶滅に瀕してしまいましたので、今は、保護に大わらわです。ここから、アホウドリの飛び立つ崖が見えます。営巣のために卵が崖から転げ落ちないように植え付けた草も見えるのですが、許可なく上陸して近づくことはできません。
 私の乗っている船は、第五稲荷丸、19.99トン、つまり20トン未満のトビウオ漁の漁船です。この船で八丈島を出発し、目指すのは絶海の孤島、孀婦岩(ソウフ岩)です。孀婦岩は、孤島というよりももっと小さくて、海の真ん中に鉛筆を立てたような岩です。八丈島の潜水漁師であり、古い仲間でもある赤間君が、この孀婦岩に大きなイソマグロを突きに行くドキュメンタリーの撮影に出かけて来ています。
 小さい船で、沖合遥かに出かけるにはこの季節、梅雨が終わりかけて、まだ本格的な夏が始まらない時期が良いとされています。「まるで盥の中のように静かだよ。」と聞かされてでてきたのですが、今年は梅雨が終わらないうちにフィリッピンで台風が発生して、孀婦岩まで行かれるかどうか、危ない状況です。
 夏かぜをひいてしまい、八丈島をでるときは、8度の熱がありました。夜8時の出港で、港をでると同時に雨がしとしとと降り始めました。一応寝る所はあるのですが、小さい船で、船員の寝るスペースは、船室の床とエンジンルームの間の空間です。その空間ではディーゼルの匂いと魚の匂いがカクテル状態になっていて、すぐに気分が悪くなります。私が最初に身を入れた寝た場所は、エンジンのすぐ上で、天井と床の距離が40センチほどです。漁船の乗組員が沈没して助からないのは、こんな隙間で眠っているからでしょう。 エンジンが廻り始めると、その振動がそのまま身体に響きます。耳の中で平衡感覚を司っている石が踊り始めるようで、耳の奥がむずかゆくなり、そのうちに気が狂ったようになります。たまらずに、甲板に出て、寝袋に入り、その上から青いビニールシートをかけてもらって眠ることにしました。そのシートの上から、雨と波の飛沫が降り注ぎます。
 「盥の中のように静かな海」といったのは誰だ!盥の中に、笹の葉で作った舟をうかべて、手を入れてかき回しているような海でした。それでも、スミス、ベヨネーズ列岩と潜水し、撮影して船をすすめ、鳥島までやってきました。この鳥島で船は先に進まなくなりました。フィリッピンにいる台風のためです。プロデューサーの大橋さん、ディレクターの山崎さんは、天候の心配で落ちつきません。台風が頭をもたげて北上するようであれば、すぐに全速力で八丈島に逃げ帰らなければなりません。台風が追いついてくると、電信柱よりも高い、20メートルほどの波が頭の上から落ちてくるのだそうです。ただただ、念仏を唱えて、泣きながら走るより他はないと船長は言います。船長は丸い身体の愉快な人で1キロ先から見ても漁師だとわかります。機関長は細長い体であごひげを生やしたファンキーなジャズフアンで船長と喧嘩ばかりしています。ついさきほども、「おまいなんか出て行け」と船長が怒鳴ると、「こんなぼろ船にいるものか出ていってやる」と機関長が怒鳴り返していました。この海の上で、何処に出て行くと言うのでしょうか。港に帰ったら出て行くための、予約の喧嘩をしているのでしょうが、この二人だけがたよりの私達としては二人の仲はとても心配です。が、赤間さんに言わせれば、いつものことで、全然心配はないそうです。
※この機関長は、僕が船に持っていったジャズピアノの山本剛のテープ聞いて感動し、
その後、山本剛を八丈島に呼ぶイベントをやった。おかしな人だ。
 昨日、この鳥島で停滞しているうちに、いろいろと撮っておこうと、赤間さんが、30メートルまで素潜りで潜ってくるシーンを撮影しました。30メートル下でカメラを構えて水面を見上げると、遠く彼方に水面があります。赤間さんは水面から潜り込んできて、私のカメラの前で、反転して、上って行きました。

何とかソウフ岩まで行ったのですが、波の中を飛び込み,赤間君が鮫の群れの中を泳ぐシーンをとり、反転して八丈に逃げ帰ってきました。鮫が好評で視聴率はよかったです。
ああ、そうだ、このとき一緒に行ったアシスタントは鶴町で、2カメで、僕が撮影しているところを鶴町が撮る設定でした。



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