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Channel: スガジロウのダイビング 「どこまでも潜る 」
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0302 さかなクン東京湾に潜る 1

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 さかなクン東京湾に潜る

 2月26日、早朝6時、こんどのロケのアシスタントを勤めてくれる、山本さんの車で、館山、波左間に向かう。
 北東の風が吹いていて、海ほたるから金田に向かう途中、吹き流しが横になって、8から10mと強い。東よりならば、沖の島の陰になるから、なんとか潜れるのではないかと思う。
 7時半、ぴったり1時間半で波左間に着いた。
 NHKの「潜れ!さかなクン」東京湾にさかなクンがもぐる番組の撮影だ。この番組にでることを依頼された。何時も、ブログで、人工魚礁のこと、波佐間のことを書いていたのが効いたのだろう。とにかく、僕は人工魚礁と共に生きてきた。
 番組の前半が東京内湾の海ほたるの近く風の塔を作る工事についての話題で、工事ダイバーの渋谷さんが付き合って、その部分は撮り終えて、東京外湾、出口の波左間に移る。
 この番組のために、2月8日、そして15日、トレーニングをしている。フルフェースマスクを着けて、ロゴシーズという水中超音波通信機を耳に付ける。耳が遠い、陸上でも会話が成立しない僕が、水中で会話が出きるだろうか。会話のようにかってにしゃべればそれが録音されて、あとで編集で会話になる。フルフェースマスクでなくても、ドライスーツでの潜水、ウエイトを13キロも着ける潜水は、エキジット舟に上がるのが辛いのだが、フルフェースマスクはなおさらである。ダイブウエイズのフルフェースマスクを使う。これが一番顔がよく見えるフルフェースマスクだ。潮美のニュースステーションから生まれたマスクだから、僕も開発関係者の一人なのだ。
 昔、さんざん練習して使い慣れて居たはずなのだが、昔は昔であり、僕のフィジカル能力は昔とは、はるかな国遠い昔になっている。まあ、最近も練習しているから大丈夫だけど、と思った。
 
 さかなクンは、板田の海洋大学センターに良く来ているのだから、ずいぶん前から仲良くしていても良いはずなのに、すれ違いをしていて、一緒に潜るのは初めてだ。僕の大学である東京海洋大学の客員準教授になっている。「ギョざいます。」で売れっ子になっている。「初対面でギョざいます。」最初の彼の挨拶が最敬礼で。それよりも低く頭を下げようとすれば、土下座しかない。頭の良い子で、絵も上手で手早い。あっという間にギョざいます言葉を書いた名刺をくれた。 とにかく一緒に潜る。
 海況は波があって、比較的近いドリーム魚礁にどうやら行ける程度だ。
 さかなクンは出発するときからフルフェースマスクを着けている。彼は空気の消費が少ないから、良いけれど、僕は息が弾むから、空気が早くなくなる。ましてデッドスペースがあるフルフェースマスクである。12リットルの重いタンクをつける。
 タンクは出港の時に背負わせてもらい、フルフェースマスクは水に飛び込む直前に着ける。
 NikonAW1300とGOPRO2を並べて、イノンの700ルーメンのライトをつける。光量の大きい、いつも使うフィッシュアイのライトは、超音波と干渉しあって、ピーという雑音を発生してしまう。これは15日のテストでわかった。
 重くて立ち上がれないので這って、頭から飛び込む。なんとか潜降していくが、息が弾んでいる。身体をなるべく動かさないようにしてドリームのサイドの海底に着地する。もちろんオーバーウエイトだし、ドライスーツも締め付けられる。BCに空気を入れ、ドライスーツにも少し空気を入れて、浮くようにするが、水平姿勢で泳ぐことは、無理だ。カメラマンの井田さんとは、魚礁のサイドの海底でさかなクンとであって魚礁に入っていくようなシーンを打ち合わせていたが、さかなクンが来ないので、こちらから行く。
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 このシーンは撮り直しだな。
 魚礁を通り抜けるのだが、縦、長い辺は無理なので、横に一番下の段をくぐり抜ける。井田カメラマンは、外で待ち受けて撮る。次は中段を抜ける。ウミトサカは、上の段の方がきれいだ。最後に三段積の上の段を抜けて上にでる。井田カメラはきれいに水平姿勢で安定して魚礁の中を潜り抜けて動いている。かれはNHKでもエースで、この前には、南極の撮影をして月刊ダイバーで潮美のインタビューを受けている。僕も、本当は今からでも練習して、あんな風に泳げるようにしなければ、と思うけれど、もはや無理、昔の僕は、と愚痴を言っても始まらない。
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 魚礁の外側で、少し稚魚の群を追って、僕の空気が70になったので、浮上する。ウエイトオーバーで服に空気を入れているので、安定が悪く、ロープにつかまらないと危ない。減圧点のバーにつかまって、水面を見ると、小さいボートが波に翻弄されていて、あれにあがるのかと思うと恐ろしい。
 エキジットはいつも地獄だ。この夏、あがったところで波に煽られて、左膝を痛めた。つぎは先日ふくらはぎを痛めて、今も片足を引きずっている。
 フィンをはずしてもらい、立ち上がろうとしたら、波に揺られて丸い、滑りやすに梯子から落ちそうになった。フルフェースマスクだから外の空気は吸えない。なんとか膝であがって倒れ込むように這い上がった。みっともないが、かっこよく怪我をしてはいけない。と、自分を戒める。
 一回目の潜水で疲労困憊した。いつものことで、二回目は拒否したい気持ちになるが、二回目の方が良い潜水ができて、すべて終了したときに元気になる。
 二回目が終わって元気にならないで、もうだめと思うようになったら、引退かな、いや、でも、やっぱり頑張るだろう。
 薪ストーブで暖まる。荒川さんがカタクチイワシを焼いてくれた。しばらくぶりで魚をおいしいと思った。どんどん食べながら、さかなクンのインタビューに答えた。後で考えて、ちょっと態度が悪かったかと心配になる。撮りなおそう。 二回目の潜水、今度はさかなクンとの出会いシーンは決めて、魚礁の中に入らずに外側を回った。稚魚がライトに照らされて、良いシーンが撮れたと思う。カメラが魚礁の中にいて、撮影中、荒川さんがさかなクンを拉致して行った。「ピカチュウ」を見つけたらしい。大きなカメラがついていかなければ意味がないんだけどと思っているうちに、自分の残圧が50になった。フルフェースマスクだと外の空気が吸えないから、波がある時のエキジットは怖い。安全停止などそこそこに切り上げて上がった。今度は船の上の方が要領を覚えてくれて、梯子を上がりきるあたりで、手を貸してくれた。さかなクンがすぐ後ろにあがってきたので、這って場所を空けた。
 
 波静かなところにきて、インタビューのやり直しをしたが、頭がうまく働かない。支離滅裂だろう。それに、難しい質問、魚礁を通して見えてくる漁師の気持ち、これは、魚礁をとおしてみる、小規模沿岸漁業の盛衰というような意味なのだが、それを説明するには、状況が厳しすぎる。
 潜水は二回で終了して、次は一日おいて28日になる。
 さかなクンは、人形をくれた。とにかく、仲良くなれた。
 帰り道、館山名物?くるまやのラーメン、ネギ味噌を食べた。一時、流行った「どさん子ラーメン」など見えなくなったのに、なぜかこの、くるまやラーメンチェーンがつぶれないで、昼時なのだが満席になっている。僕もなんとなく食べたいと思うような味なのだ。
 帰途、海ホタルのあたりまでくると、空は晴れて青空になった。

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