9月8日のフォーラムの構成案を書いて、フォーラムについては一段落した。
講演してもらう藤本君からは、趣旨が理解できたという言葉をいただいた。
さあ、どうなるか、テーマの中にいくつかの革新を仕込んでおいたつもりなのだが、、、それは、直に言えば、これからのダイビングはどうあるべきか、どうなってしまうかなのである。
そのことは、またいずれ、ということにして、豊潮丸の今年の航海についてまとめておかなくてはいけない。航海の途上で、航海記は、ずっと書いてきたから、いまさらまとめは必要ないともいえるが、習慣的にまとめを書き始めてしまっている。
7月4日から12日まで、今回は瀬戸内海周航だった。
まず、この航海で、僕の目的と、僕がそこにいることの意義であるが、まず、2007年におきた東大の悲しい事故は、僕があのチームに絡んでいれば起きなかった。スーパバイザー不在のために起きた。教授はベテランダイバーであったと思うが、監督責任者が必要だった。
もはや、僕も後期高齢者であり、フィジカルに役に立つことはなく、むしろ足を引っ張っているかもしれない。しかし、僕がそこにいて、足を引っ張っていることが、安全に繋がっている。僕が、現在の僕の体力で、僕の経験で想像して危機感を持っていれば、タフな若い学生、教授が危険な目に遭うことはない。
ところが、そうは行かないこともある。そのことも整理しておきたい。
自分の目標としては、①この豊潮丸を使ってのリサーチダイビングの安全システムの確立、(これは、先に書いたことと繋がる)②ウエアラブルカメラを使ってのリサーチダイビングの撮影技術の確立であった。
フォーラムの構成は片づいたといっても、フォーラムのテーマの一つがウエアラブルカメラであるから、ここではリサーチダイビングの撮影とウエアラブルカメラについて述べよう。
航海の前半、5日、6日、7日の撮影は、中尾先生のキヤノン(ハイレベルのコンデジ)を僕が使って撮影した。これまでの、この2年あまりの調査ではこのカメラでうまく撮影できている。
中尾先生が採集をやり、彼の採集する、主として海綿を僕が撮影する。撮影ができたら、カメラを手放して採集生物をビニール袋にいれるのを手伝う。カメラにはストラップがついているから、手放しても大丈夫だ。 それとは別に、GoProは、マスクマウントで、全体の流れを記録する。
8日までの潜水を行って、中尾先生がPCに画像を取り込んだ。見ると、僕の撮影したほとんどがボケている。「嘘だろう」手慣れた撮影だし、一枚一枚、LCD で確認している。
失敗の理由はこうだ。これまでは絞り優先のAEで、内蔵ストロボを発光させていた。ストロボのチャージアップが面倒なのと、時にオーバーになってしまうため、1000ルーメンのライトにきり変えた。そのときにシャッター優先にして撮影感度を上げておかなくてはいけなかったが、そうしなかった。それに、LCDで、きちんと確認している。ところが、その確認の設定が保存する画像を出す設定になっていなかった。手慣れたとはいえ、この設定をすべて中尾先生任せだった。
マスクマウントのGoProで撮った画像で失敗したサンプル撮影の部分を探した。注視したものは何とかなるが、全部注視したわけではない。
9日の潜水からは、自分の一眼をつかうことにした。そして、なるべくマスクマウントGoProで、撮影対象を注視することにした。
キャノン一眼で撮った。落ち着いているし、拡大すればGoProと少しの差がある。
マスクマウントで注視
少しトリミングして一眼カメラを消した。
その結果を中尾先生と検討すると、確かに一眼の写真はおだやかにしっかり撮れているが、GoProのマスクマウントの動画から静止画を切り出した写真の方がシャープに見えて、なおかつきれいに(派手に)見える。
それならば、一眼の静止画とGoProの動画が同時に撮れるように、一眼の上にGoProをマウントしよう。
もともと、今度の航海は、透視度が望めないことから、一眼の二階にGoProを乗せる形を作ってお台場でテストをしていた。予定通り、これを使っていれば前半の失敗も無かったのだが、僕の手を使って採集の手伝いをしようという色気でこのシステムを捨てて、中尾先生のカメラで撮ったのだった。
元来、研究者は、自分のカメラで撮影をしたい。自分のお金で買ったカメラを使いたいのは当然だ。僕が僕のカメラで撮っているとそれはそれとして、先生は自分のカメラで撮る。僕が先生のカメラで撮れば、彼はカメラを持たないで済むから、採集作業がスムースに手早くできる。しかし、僕の今回のような失敗があると、やはり、自分で撮っておきたいとおもうだろう。
二階建てにしたカメラの結果を見ると、二階のGoProの動画からの静止画とキャノン一眼の写真と、この大きさ、つまり調査の報告書としての使用ではほとんど差がない。情報量としては、圧倒的に動画のGoProが多い。
二階建てGoProをマスクマウントで撮影したもの
上のGoProでの撮影
キャノン一眼
この比較ならば、ウエアラブルカメラの方が良い。
今後、スチルもライトでとることが、アマチュアでは中心になるだろうが、やはりプロはストロボを2灯以上、カニのハサミのように両側に広げ、瞬きをする速さで連続発光で撮るだろう。そうしないと、プロとしてのお金がもらえない。
アマチュアのスチルもオリンパスのTEC2など、良いカメラがでているが、プロの使うカメラとは、紙一重の差がある。GoProはさらに紙一重、下にある。
しかし、別にポスターを作るのでなければ、写真は画質ではなく、撮った絵の勝負なのだが、プロの衿持と使う側の要求がある。しかし、それも、時間の問題だろう。すでに、映画が、そしてCMがの動画がスチルカメラで撮られる時代である。逆にスチルをスチルカメラで撮らなければいけないことは全くない。
ところで最近、再びフイルムのスチルが脚光をあびるような傾向がある。シャープネスと派手な美しさでプロが勝負できなくなれば、そのほかの何かが求められる。
僕ももう一度フィルムで撮りたい。撮るかもしれない。6×4のスチルが埃をかぶっている。しかし、今のGoProの100倍の重さがあるカメラだ。やらないだろう。できないだろう。
脱線からもどると、リサーチダイビングのカメラとしては、もはや一眼は不要。ウエアラブルカメラだけで良いと結論した。
そして、次の撮影、お台場では、GOPROだけにした。ライトと組み合わせる関係で、ライトのステイにビニールテープでGoProを括り付けた。僕の水中撮影人生は、ビニールテープと瞬間接着剤に支えられている。などとよくいう。現場処理なのだ。午前中の撮影はこれでうまくできた。いいショットも撮った。昼休みに確認するとビニールテープが少し緩んでいる。くくりなおせば良いのだが、手に持っているものだから、落とせばわかるだろう。「まあ、いいや」と出発した。
エントリーする時、いつもフィンを履くのに苦労する。誰かにちょっと助けてもらえば良いのだが、すべて一人でやらなくてはという矜持がある。レクリエーショナルダイビングでは、きちんと助け合いバディチェックをするが、自分は先に装着して、メンバーの面倒を見るというプロの悲しい習性が身についている。腰まで水に入ってフィンをつけようとして転倒した。フィンをつけて、泳ぎ、撮影位置まで来て、カメラのスイッチを入れようとしてみると、カメラが無い。転倒した時に落としたのだ。透視度はお台場としては良いけれど1.5m、小さいカメラだ。ほぼ絶望。しかしあきらめずに元のコースを泳いで戻った。さっき転倒した位置の砂の上にあった。ほぼ奇跡だ。
左手にライトを持ち、右手にカメラで撮影し、イシガニが、反抗してくるショットをとった。
次の撮影、石巻の鮫浦湾では、石川さんのワンタッチで手にできるマスクマウントをつかい。左手にライトを持った。ライトはD環にクリップと短い細引きで結び、手放しても良いようにした。これで、きちんと撮る時にはマスクから外して右手でカメラ、左手でライト、移動中、手作業の時にはマスクに戻す。お台場で落とした苦い経験があるので、ときどきマスクに手をやって、カメラの所在を確認する。
貼り付いている海綿をはがして、携帯ジェットで吸い込んでいるところ。
これがリサーチダイビングでの撮影の最終スタイル(目下のところだが)だ。
今日からまた中尾先生と鹿児島の甑島に行くが、このスタイルで行く。一応デジカメシーアンドシーのリコーをカメラバックに入れているが使うことはないだろう。
講演してもらう藤本君からは、趣旨が理解できたという言葉をいただいた。
さあ、どうなるか、テーマの中にいくつかの革新を仕込んでおいたつもりなのだが、、、それは、直に言えば、これからのダイビングはどうあるべきか、どうなってしまうかなのである。
そのことは、またいずれ、ということにして、豊潮丸の今年の航海についてまとめておかなくてはいけない。航海の途上で、航海記は、ずっと書いてきたから、いまさらまとめは必要ないともいえるが、習慣的にまとめを書き始めてしまっている。
7月4日から12日まで、今回は瀬戸内海周航だった。
まず、この航海で、僕の目的と、僕がそこにいることの意義であるが、まず、2007年におきた東大の悲しい事故は、僕があのチームに絡んでいれば起きなかった。スーパバイザー不在のために起きた。教授はベテランダイバーであったと思うが、監督責任者が必要だった。
もはや、僕も後期高齢者であり、フィジカルに役に立つことはなく、むしろ足を引っ張っているかもしれない。しかし、僕がそこにいて、足を引っ張っていることが、安全に繋がっている。僕が、現在の僕の体力で、僕の経験で想像して危機感を持っていれば、タフな若い学生、教授が危険な目に遭うことはない。
ところが、そうは行かないこともある。そのことも整理しておきたい。
自分の目標としては、①この豊潮丸を使ってのリサーチダイビングの安全システムの確立、(これは、先に書いたことと繋がる)②ウエアラブルカメラを使ってのリサーチダイビングの撮影技術の確立であった。
フォーラムの構成は片づいたといっても、フォーラムのテーマの一つがウエアラブルカメラであるから、ここではリサーチダイビングの撮影とウエアラブルカメラについて述べよう。
航海の前半、5日、6日、7日の撮影は、中尾先生のキヤノン(ハイレベルのコンデジ)を僕が使って撮影した。これまでの、この2年あまりの調査ではこのカメラでうまく撮影できている。
中尾先生が採集をやり、彼の採集する、主として海綿を僕が撮影する。撮影ができたら、カメラを手放して採集生物をビニール袋にいれるのを手伝う。カメラにはストラップがついているから、手放しても大丈夫だ。 それとは別に、GoProは、マスクマウントで、全体の流れを記録する。
8日までの潜水を行って、中尾先生がPCに画像を取り込んだ。見ると、僕の撮影したほとんどがボケている。「嘘だろう」手慣れた撮影だし、一枚一枚、LCD で確認している。
失敗の理由はこうだ。これまでは絞り優先のAEで、内蔵ストロボを発光させていた。ストロボのチャージアップが面倒なのと、時にオーバーになってしまうため、1000ルーメンのライトにきり変えた。そのときにシャッター優先にして撮影感度を上げておかなくてはいけなかったが、そうしなかった。それに、LCDで、きちんと確認している。ところが、その確認の設定が保存する画像を出す設定になっていなかった。手慣れたとはいえ、この設定をすべて中尾先生任せだった。
マスクマウントのGoProで撮った画像で失敗したサンプル撮影の部分を探した。注視したものは何とかなるが、全部注視したわけではない。
9日の潜水からは、自分の一眼をつかうことにした。そして、なるべくマスクマウントGoProで、撮影対象を注視することにした。
キャノン一眼で撮った。落ち着いているし、拡大すればGoProと少しの差がある。
マスクマウントで注視
少しトリミングして一眼カメラを消した。
その結果を中尾先生と検討すると、確かに一眼の写真はおだやかにしっかり撮れているが、GoProのマスクマウントの動画から静止画を切り出した写真の方がシャープに見えて、なおかつきれいに(派手に)見える。
それならば、一眼の静止画とGoProの動画が同時に撮れるように、一眼の上にGoProをマウントしよう。
もともと、今度の航海は、透視度が望めないことから、一眼の二階にGoProを乗せる形を作ってお台場でテストをしていた。予定通り、これを使っていれば前半の失敗も無かったのだが、僕の手を使って採集の手伝いをしようという色気でこのシステムを捨てて、中尾先生のカメラで撮ったのだった。
元来、研究者は、自分のカメラで撮影をしたい。自分のお金で買ったカメラを使いたいのは当然だ。僕が僕のカメラで撮っているとそれはそれとして、先生は自分のカメラで撮る。僕が先生のカメラで撮れば、彼はカメラを持たないで済むから、採集作業がスムースに手早くできる。しかし、僕の今回のような失敗があると、やはり、自分で撮っておきたいとおもうだろう。
二階建てにしたカメラの結果を見ると、二階のGoProの動画からの静止画とキャノン一眼の写真と、この大きさ、つまり調査の報告書としての使用ではほとんど差がない。情報量としては、圧倒的に動画のGoProが多い。
二階建てGoProをマスクマウントで撮影したもの
上のGoProでの撮影
キャノン一眼
この比較ならば、ウエアラブルカメラの方が良い。
今後、スチルもライトでとることが、アマチュアでは中心になるだろうが、やはりプロはストロボを2灯以上、カニのハサミのように両側に広げ、瞬きをする速さで連続発光で撮るだろう。そうしないと、プロとしてのお金がもらえない。
アマチュアのスチルもオリンパスのTEC2など、良いカメラがでているが、プロの使うカメラとは、紙一重の差がある。GoProはさらに紙一重、下にある。
しかし、別にポスターを作るのでなければ、写真は画質ではなく、撮った絵の勝負なのだが、プロの衿持と使う側の要求がある。しかし、それも、時間の問題だろう。すでに、映画が、そしてCMがの動画がスチルカメラで撮られる時代である。逆にスチルをスチルカメラで撮らなければいけないことは全くない。
ところで最近、再びフイルムのスチルが脚光をあびるような傾向がある。シャープネスと派手な美しさでプロが勝負できなくなれば、そのほかの何かが求められる。
僕ももう一度フィルムで撮りたい。撮るかもしれない。6×4のスチルが埃をかぶっている。しかし、今のGoProの100倍の重さがあるカメラだ。やらないだろう。できないだろう。
脱線からもどると、リサーチダイビングのカメラとしては、もはや一眼は不要。ウエアラブルカメラだけで良いと結論した。
そして、次の撮影、お台場では、GOPROだけにした。ライトと組み合わせる関係で、ライトのステイにビニールテープでGoProを括り付けた。僕の水中撮影人生は、ビニールテープと瞬間接着剤に支えられている。などとよくいう。現場処理なのだ。午前中の撮影はこれでうまくできた。いいショットも撮った。昼休みに確認するとビニールテープが少し緩んでいる。くくりなおせば良いのだが、手に持っているものだから、落とせばわかるだろう。「まあ、いいや」と出発した。
エントリーする時、いつもフィンを履くのに苦労する。誰かにちょっと助けてもらえば良いのだが、すべて一人でやらなくてはという矜持がある。レクリエーショナルダイビングでは、きちんと助け合いバディチェックをするが、自分は先に装着して、メンバーの面倒を見るというプロの悲しい習性が身についている。腰まで水に入ってフィンをつけようとして転倒した。フィンをつけて、泳ぎ、撮影位置まで来て、カメラのスイッチを入れようとしてみると、カメラが無い。転倒した時に落としたのだ。透視度はお台場としては良いけれど1.5m、小さいカメラだ。ほぼ絶望。しかしあきらめずに元のコースを泳いで戻った。さっき転倒した位置の砂の上にあった。ほぼ奇跡だ。
左手にライトを持ち、右手にカメラで撮影し、イシガニが、反抗してくるショットをとった。
次の撮影、石巻の鮫浦湾では、石川さんのワンタッチで手にできるマスクマウントをつかい。左手にライトを持った。ライトはD環にクリップと短い細引きで結び、手放しても良いようにした。これで、きちんと撮る時にはマスクから外して右手でカメラ、左手でライト、移動中、手作業の時にはマスクに戻す。お台場で落とした苦い経験があるので、ときどきマスクに手をやって、カメラの所在を確認する。
貼り付いている海綿をはがして、携帯ジェットで吸い込んでいるところ。
これがリサーチダイビングでの撮影の最終スタイル(目下のところだが)だ。
今日からまた中尾先生と鹿児島の甑島に行くが、このスタイルで行く。一応デジカメシーアンドシーのリコーをカメラバックに入れているが使うことはないだろう。