今、ちょっとだけど、片岡義男ブームになっている。
以前、いつでもあったブックオフで、コーナーが成立していない。アマゾンの古書で1円の出品がない。その代わりと言うわけではないのでしょうが、キンドルで、短編集の短編が分割されて売られているものがある。 僕は、かつて、ずいぶん沢山、文庫本をもっていたのだが、断捨離、売り払ってしまった。 ただ、2冊残してあった。片岡義男はワンパターンだから、2冊も残しておけば充分なのでは、と思ったのだった。 残したのは「頬寄せてホノルル」「8フィートの週末」 彼の昔の本はハワイを舞台にしたものが多かった。そして、もうひとつ、出てくる女性が画一的である。いい女でない女性は出てこない。強くて、優しく、自立している。もちろん美人。これは、1970年代このかた、現在も男性が思い描く女性の平均的な理想像だと思われ、そういう女性が出てくる。 「頬寄せてホノルル」は、①ラハイナの赤い薔薇 ②冬の貿易風③アロハシャツは嘆いた④双眼鏡の彼方に⑤ヒロ発11時58分 五つの短編集である。タイトルを見ると、明日ハワイに行きたくなる。 ある時、ふと片岡義男が読みたくなってキンドルを見た。「冬の貿易風」270円だった。買って読んで、大変満足した。片岡義男の文体でかくとこうなる。実はこの文体は好きでも嫌いでもない。 もう少し読みたくなって、書架で「頬よせてホノルルを出したら、「冬の貿易風」が入っていた。これで、彼の短編集がキンドルでばら売りされていることがわかった。アロハシャツもヒロ発もキンドルでバラうりされていた。 ヒロ発もなかなかいい。と僕がここで書くと、だれもが270円でキンドルで見られる。いいビジネススタイルだなと思う。 「波乗りの島」最近108円で買った。波乗りの島は1974年角川の「野生時代」の創刊号に掲載された。僕が片岡義男を読んだ始めであった。以後、同じような作品のほとんどを読むようになる。 波乗りの島は、「白い波の荒野」「アロハオエ」「アイランドスタイル」「シュガートレイ」「ベイルアウト」五つの短編集で、「白い波の荒野」は、しっかりキンドルになっていた。なお、僕の買った108円は、アマゾンでは1600円になっていた。 ここで、サーフィンのことを少し。 僕はサーフィンは全くやらない。スノーボードもやらない。スキーは大学の授業であきらめた。つまり、バランスをとるようなスポーツはダメなのだ。 波乗りの島 は、サーフィンの映画撮影をしている若者、チャンピオンクラスのサーファーのグループ、プロダクションの話だ。僕はまだ、1974年には撮影のチームは作っていなかったけれど、ハウジングを作るビジネスはしていた。なのにどうして「白い波の荒野」の撮影に疑問を持たなかったのだろう。疑問にも思わなかったのか。小説だからと何も考えなかったのか。それともすべて、忘れてしまっていたのか。 そして今、この小説のような撮影が充分可能になった今、この小説を読み直して驚いたのだ。なぜ疑問に思わなかったのだ?と。 「白い波の荒野」、その始まりは、大きな波を乗りこなすシーンの撮影である。本当に奇跡とさえいえるシーンである。そのシーンをヘルメットに付けたカメラで撮っている。しかも、前向きが一台、後ろ向きが一台、二台のカメラで撮っている。 カメラは16mmのフィルムである。しかも長い時間撮れる長尺のカメラである。 そんなものが頭に2台付けられるわけのものではない。 この撮影はGOPROができて可能になった。そしてGOPROはサーファーが開発した。2000年代のサーファーが1974年の片岡義男の小説を読んで、開発したか、そんなことはあり得ない。だから、1974年の「白い波の荒野」は、こんなシーンを撮影をしたいというサーファーの夢?それとも近未来小説か。 チューブの中を撮影したいのがサーファーの夢ならば、GOPRO開発も小説になるだろう。「波乗りの島」の主人公たちのプロダクション程度のスケールが、GOPROのスタートだったのであろう。
16ミリフィルム短尺カメラ(3分間廻る)
ここで一つ、サーフィンのチューブの話をしよう。スガ・マリン・メカニックが、まだ牡丹に来たばかりで、7階に居た時だから、1970年代か。ソニーの子会社だったかの若いプロデューサーが訪ねてきた。ハワイでサーフチューブの中の音を録音したいという。デンスケ、小さい録音機を抱いてチューブの中を滑りそのときの音を採りたい。録音機のハウジングを作りたいが重いのはダメだ、という。僕は即座に解決したがもったいを付けて、録音機の寸法を聞き、見積もりをした。いくらだったか忘れたが、そのころ、僕の頭の中の単価は、10万だったから、20万ぐらいだったかと思う。そのころ僕が売っていたブロニカマリンと同じだ。 ダイバーだったら、誰でも思いつくアイデアだろう。録音機をネオプレーンでつくった箱に入れる。袋でも良い。入り口をドライスーツの水返しのように1mmの薄い生地で作り、ドライスーツのようにゴムひもでくくる。要するに録音機にドライスーツを着せれば良いだけなのだ。 コードの部分も筒を作って凧糸で締め付けるだけ。 チューブの録音は成功して、ディスクが発売された。チューブの中の音、聞いてみたけど大した音ではなくて、爽やかといえば、爽やかだったけれど、言葉で言い表せないほど、どうでも良い。忘れてしまった。サーファーには、感動的な音なのかもしれない。 「8フィートの週末」 佐藤秀明の写真集もかねている。 なかなか良くて、どちらかと言えばこの写真で、僕はこの本を残した。小説の方はワンパターンだ。 今、キンドルで「時差のない二つの島」を読んでいる。270円の短いものだけど、読み終えていない。読み終える必要がないので、止まってしまう。結末もどうでも良い。 でも、「頬寄せてホノルル」は、キンドルに入れておいても良いかな。 僕のハワイのこと、前に書いたけどもう一度書こうかな。「ハワイアンダイバー」「ホノルルシャークハント」時間があればだけど、ない。☆★☆