人工魚礁 前回はドリーム魚礁についてまず話した。少しおさらいすると、ドリーム魚礁は、2m角のコンクリートブロック165個を3段にきちんと積み上げた整列魚礁(そんな名称はないので仮に)で、横に5列、縦に10列、50が3段だから150だが、実際には真ん中の3列だけが3段で両側は2段である。165の計算が合わないが、どこかにある。 波左間海中公園(人工魚礁ランド)の荒川オーナーに聞いたところでは、この整列は荒川さん自身が実行したものだという。 現況については前々回のブログをみてください。
さて、ここから人工魚礁とは何だ。どういうものなのか、いつごろ始まって今の状況は、書いて行くのだが、まず、人工魚礁とは何だ。 日本水中科学協会で2012年に作った最新ダイビング用語事典から引用する。 魚礁 Fish reef,Fishing reef, Fish shelter 魚が多く集まり、漁場として利用される場所を言い、自然の地形によるものを天然礁、人工的に造成されたものを人工魚礁と言う。ダイバーが海底地形を楽しむドロップオフ、アーチ、ホールなどは多くの魚が集まっている天然礁である。 どうして魚が集まるのか?およそ生き物というものは、何かより所があって、理由があってそこにいる。人間は、家が必要であり、原始の昔には洞窟に住まいした。洞窟がなければ穴を掘り、何かで覆ってそこに入った。 魚も同様で、隠れ場所、寝る場所、何かが必要なのだ。大洋を泳ぎ続けて生活するマグロなどはどうかというと、これもより所があればそこに留まる。より所にたいする執着はそれほど強くないのであろうが、それでも、流木、ジンベイザメ、ほんのちょっとした何かに寄りつく。浮き魚礁、パヤオというのがある。回遊性の魚を引きとめ、集める魚礁である。そして、魚を集める伝統的な方法に漬けというのがある。
シイラ漬けというのは高知県沿岸に盛んな漁法(九州でも盛んだが)で、長い竹で細長い筏のようなものを作り、アンカーで止め浮かしておく。竹5ー6本。長さは竹の長さ、小ささな筏だ、この筏の下にシイラが集まる。シイラは引き釣り、トローリングにもよくかかる回遊性の魚だ。ここで回遊魚というのは、磯についている磯魚に対応する言葉で、何時も泳ぎ回っている魚という意味である。もちろん、広く回遊する魚も入る。 一軒の漁師さんは、だいたいこの漬けを20ー30ぐらい持っている。 毎日、この漬けを見て回り、もし魚が充分に居ることが見て取れたら、巾着のような網、小さな巾着網を筏の近くに張る。 長い竹竿の先に、はたきのようなひらひらを着けたものを筏の下のシイラの前でひらひらさせると、シイラはなんだなんだ?と集まってくる。そのひらひらで、シイラを網の中に誘導してきて、後は巾着をしぼって獲ってしまう。 沖縄にも漬け、沖縄ではパヤオと呼ぶのだが、フィリピンでも同じような漁をして、これもパヤオである。フィリピン語科、沖縄語か、どちらの言葉かわからない。この漁を始めたのはどうしても、沖縄の方が先だと思うのだが、名前はパヤオ、沖縄語ではなさそうだ。沖縄には、このパヤオが、150とか、もっとあるのかもしれないが、沖縄の漁師さん、ウミンチューは、このパヤオの周辺で釣りをする。
パヤオは、個人で入れるのもあると言いうが、統制がとれなくなってしまうので、組合単位で入れたり、大がかりに国家的な事業、人工魚礁事業であるが、として入れるのもある。人工魚礁事業の場合には大きな灯標で、台風などでとばされる事がないように、太い鎖で海底にアンカーを入れて留めている。沖合遙かに入れているので、深さ数百メートルのものもある。
大きなパヤオには名前が付いていて、沖縄では、ニライ1号から たしか14号まであったはずである。ニライとは、海の彼方にある理想郷、ニライカナイからとった名前だ。実は僕は65歳の時に、この大型ニライパヤオの撮影をしていた。今から17年前だから、少し状況が変わっているかもしれないが。 思い入れがあるので、別に独立して、一つ、パヤオ編を書くつもりだったのだが筆が滑ってしまったので、ここでパヤオについて少しばかり書くことにする。 ここで、言いたいこと、書きたいことは魚はどんな魚でも、どこでも、何か、芯に集まるということである。 大型のニライパヤオに潜ると、流れがあるので容易ではないのだが、とにかく潜ると、まず、パヤオ近くに、ツンブリが、必ずのようにふらふらしている。ツンブリは、虹色の美しい魚で、おいしいらしい(食べたことはない)らしいが、あまり市場性のない魚だ。しかし、僕が撮影したいのは、マグロ、たぶんキハダマグロである。漁師さんによれば、キハダは、80ー100mの深みに集まっていて、夜にならないと浮いてこない。釣るためには、餌で浮かせて釣るのだと言う。夜まで待つわけには行かないが、とにかく待とう。ベストを尽くす他ない。 チャーターした船の代金は8万だったと思う。三日分ぐらいしか予算は無い。三日目だったか、水面近くで見張っていると、ざわざわ、というかシャーシャーというか、音が湧いてきた。下を見ると真っ黒に群れた魚が下から沸き上がってくる。もちろんシャッターを押し続ける。そのころはまだフィルムだから、そんなに数は撮れない。それに必ず何枚かは残しておかないと、本当に撮りたいものが出てきたときに、フイルムアウトになる。デジタルになってからは、ほぼ無制限にとれる。沸き上がってきた魚は、30cmほどもある大型のムロアジで、マグロに追われて浮いてきたのだろう。ならば、マグロが下にいる。50mほどまで急降下したが、マグロは見えなかった。しかし、予算も尽きたし、これで、沖縄のパヤオはあきらめることにした。 しかし、マグロはあきらめ切れない。マグロを追って、土佐の高知の、黒潮牧場と名付けられた大型パヤオに行くのだが、ここでは、そこまで、脱線するわけには行かない。魚礁とはなに?に戻らなければ。 黒潮牧場での冒険、危機一髪はまた別の機会に書こう。 土佐の黒潮牧場で、漁師さんに聞いたのだが、パヤオ周辺には半径500mぐらいにカツオ、マグロが集まり、半径1000mぐらいで、鮫がくるのだという。 回遊魚も魚礁に集まる。それでは、磯魚は、磯に集まるから磯魚であり、磯とは魚礁のことだから、これは当然なのだが、その集まり方は。 人工魚礁の研究では、集まり方をⅠ型からⅣ型まで四つに分けている。 まずⅠ型は、身体の一部がとにかく磯に魚礁に接していなければ生きて行かれない魚、魚が魚礁に集まる性質を魚礁性などと言いうが、魚礁性がもっとも強い魚、すなわち磯魚である。 アイナメ カサゴ、キジハタ、マハタ、オコゼ、マダコ など Ⅱ型 身体は魚礁に接することは少ないが、ごく近くに居る種類、これも磯魚と言える。 マダイ、クロダイ、イシダイ、メバル、イサキ、カワハギ、ウマヅラハギ、メジナなど。 Ⅲ型 主として、魚礁から離れた表層、中層に位置する種 マアジ、マサバ、ブリ、ヒラマサ、カンパチ、クロマグロ、カツオ、シイラなど いわゆる回遊魚、先に述べた浮き魚礁に集まる魚でもある。 Ⅳ型 主として魚礁周辺の海底に位置する種 ヒラメ、カレイ。アマダイ、シロギス。カジカ など これで、ほとんどの魚が何らかの形で魚礁に集まるものだとわかったと思う。 魚は磯魚の回遊魚に分けられ、回遊魚も磯に、人工魚礁に集まる。集まり方、磯との距離に差がある。なお、魚が魚礁に集まることを蝟集と言う。蝟集 イシュウ 群がり寄ること。一般にはなじみの薄い言葉であるが、沿岸漁業整備開発事業の用語として、魚が群れ集まる表現として定着している。例えば、蝟集状況などと言って、魚の集まり状況を表すようにしている。