雑誌「海の世界」を軸にして、1970年代のダイビングについて書こうとしているのだが、そもそも、「海の世界」とは、今、ネットで調べても何も出てこない。 運輸省、今では国土交通省の外郭の公益法人である海事広報協会が出していた雑誌だ。今、海事広報協会のホームページを見ても、海の世界は、出てこない。今、この協会が出している雑誌は、一般向けの「ラ・メール」と船員向けの「海上の友」だ。もちろん、ダイビングは出てこない。そのくせ、海事広報協会のホームページにはダイビング講習のことが出ていたりする。「海の世界」は、そのうちにネットで調べると、僕のブログに当たるのだろう。 「海の世界」は、昭和30年、1955年の創刊である。1955というと、僕が東京水産大学に入学した時だった。水産大学は久里浜にあり、東京の僕は、横須賀線で通っても良かったのだが、鎌倉に下宿した。その年の秋、僕は鎌倉の雪ノ下にいた。同級生の城君と、木村君、三人の共同、今で言えばルームシェアだ。その通学の駅から雪ノ下までの途中の本屋で「海の世界」の多分、創刊号を買った。鎌倉駅前には大きな本屋があるのだが、なぜか、雪ノ下に歩いて行く途中の小さい本屋で買ったと覚えている。 その「海の世界」は残念なことに今持っていない。 持っているのは、1963年の11月号、僕と舘石さんの90m潜水が載っている。 だからここまで持っていたのだ。
記事をみると、「人体実験の新しい試み」とある。そのころ、実験的なダイビングは「人体実験」だったのだ。しかし、考えてみると、2017年の今でも、通常の範囲を超えたダイビングは「人体実験」以外の何物でもないのかもしれない。 海上自衛隊の、潜水医学実験隊、そして70年代の海底居住も人体実験だったのだ。 テクニカルダイビングなどというものも、そして、僕が80歳、80m潜水などと言っているのも、「人体実験」に他ならないだろう。 「人体実験」としてのダイビングの意味、考えてみた、今も昔も「人体実験」の意味は、できるかどうか、人体で試してみる。人体実験と冒険とのかかわり、意義、また考えることが増えてしまった。 1963年の「海の世界」は、潜水の記事は、僕たちの潜水以外は掲載されていない。もしかすると「海の世界」のダイビングの記事は、これが嚆矢だったのかもしれない。 そして、何時のころから、ダイビングについての記事が次第に増えてきて、これから扱おうとする「海の世界」になる、その推移も見たいのだが、今、手にしているのは1972年以降のものだ。他にもあるか探してみよう。 なお、「マリンダイビング」の創刊は1969年で、僕はそれを持っていたのだが、潜水部の後輩の田村君がマリンダイビングに就職するとかで、そのお祝いにあげてしまった。田村君は、マリンダイビングをすぐにやめてしまって、今は千葉県の水産センターにいる。 その時には、こんなことを書くとは思っていなかったのだ。 ともあれ、1970年代のことをまず書きたいので、1972年の1月号からスタートする。 平成13年度2001年、レジャー・スポーツダイビング産業協会の発表した「ダイビングの実態に関する動向調査」によれば、2001年のエントリーレベルCカード認定数(累計)は、1126845、およそ112万枚である。そのCカードの数が、折れ線グラフの原点である1984年には13000、である。70年代、Cカードというものは存在していなかった。 C-カードが生まれる、その推移については、別に論じていかなくてはならないが、1980年あたりを境にして、1970年代はダイビングの別の文化があった。 このブログの前回、1980年以前は今のCカード文化の前、有史前のようなものと書いたが、このスキャン作業をはじめて見ると1980年以前は、別のダイビング文化があったのだと思う。 1980年代以降、C-カード文化とそれは別のものなのだ。とすれば、別の文化を調べ、知ることで、現在のダイビング、そして近未来のダイビングを論じて行くことができるのではないか。 その別文化の頂点であった1970年代のことを知るには、その資料を整理すること、つまり、その時期に発行されたダイビングに関連する文献として、雑誌がある。 とはいえ、その全部をスキャン、ファイリングをすることは、(本当はやるべきだろうが)現時点での僕の時間では無理。今の自分の立ち位置から選択してスキャンし、そのポイントを述べて行く。つまり、僕の主観というフィルターを通したものにならざるをえない。 スキャン、ファイリングの後で、オリジナルは保管しておく、ということにして、ここでは自分の位置からの解説を述べ、1950年にはじまり、1960年から1970年代に頂点に達して、1980年代に現在の文化に移って行く、ダイビング、を雑誌を軸にしてみて行きたい。それにしても、たいへんな作業だな。 1970年代のダイビング文化とは。 ブログは試行錯誤の記録。読者が僕といっしょに試行錯誤してもらえれば、それでいい。というのが僕の基本姿勢だ。
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