3月のお台場は、雨で、お台場の場合、尾島さんのテントがあるだけで、基本的に吹きさらし、寒かった。家で風呂に入ってでてからしばらくして悪寒がした。風邪で、以後一ヶ月 風邪が続いている。 4月23日は快晴で、スカイブルーの空だ。透視度も、もしかしたらこれまでの最高ではないだろうか。 もうそろそろ、冬眠?から醒めた魚たちが動き出す時期だ。期待は大きかった。 風邪はともかくとして、天気がよければ、機嫌がよくなり、気合いも入る。気合いが入っても、7キロのベストを着けて6キロのベルトを巻き、10キロのタンクを背負うとずっしりと重い。 前回までは1。4キロのレッグウエイト(足首に巻くウエイト)を着けていたのだが、今回からマンティスドライフィンを使うことにした。これはドライスーツ専用のフィンで、前に愛用していたのだが、フロッグキックで蹴る時にフィンが重いとバランスが悪いのではと使わなくなっていた。 エントリー、エクジットの時に、手伝ってもらわないで一人でフィンの着脱がけっこう苦行なのだが、それもやりやすい。 とにかく、タンクを背負って歩き、フィンを履き、水に入るまでが苦行で、水に全身を浸けるとほっと一息つぐ。しかし、これはお台場という波も流れもなく、背の立つ水深に体を横にしているという独特の場だからで、一般の海では、飛び込んだとたんに波で体がひっくり返されたり、流れで流されたりするところでは、10mぐらいまで潜らないと安定しない。潜水が危険だとか、危ない、同じことか、といわれるのはこういう部分のことで、これは個人のフィジカルと密接に関連する。死亡事故はこのような状況の時に、本人の苦しさだけに関連して起こってしまう。すると、他人のガイドダイバーとかインストラクターから見れば原因不明になる。それぞれの苦しさについては、Cカード講習でも、指導者講習でもどうすることもできない。 よく、病人になるとはっきり見えてくる部分があり、思いやりが深くなると言うが、年取って、フィジカルに不満足にならないと見えてこないダイビングの危険なのだと思う。 ああ、またダイビングそのもののこと、内なる自分のことについて書いている。 これからは外のこと、お台場の水中のこと、生き物のことを中心に書いて行こうと思ったのに。
エントリーして腹這いになり体を落ち着けると、驚いたことに、人工砂浜を背にして右手にある転石がはっきりと見える。お台場にしては、すごい透明度だ。 転石を右手に見て、まばらな牡蠣殻の広がり、生きている牡蠣が多くても牡蠣殻と呼ぼう。その上を泳いで行く。 魚もカニも目に入らない。隠れているのだろう。そのまま25mぐらい泳いでいく。終点が90mだからゆっくり泳ぐ。次第に牡蠣殻が密になってくる。生きている牡蠣が多い。
70mぐらい進んだ右手の転石の景色がすばらしい。転石が転がっていて、水が澄んでいて、水深が40センチくらい、別に何もいない。それだけですばらしい景色だと思ってしまうのだ。景色というのは周囲の状況と併せて景色になっている。透視度の低い景色の中で、部分的に透明感があれば、良い景色になる。今日は全体に透明だが、やはり透明は良い。 頭を上げて水面に顔を出すと、大きな榎木の木が見える。このごろ腹筋が弱くなって、腹這い姿勢で頭を出すのが難儀になってきている。 水深2mぐらいに降りて、そのまままっすぐ行くと、前方に杭の列が見えてくる。杭の列の右端はさいころのようなコンクリで、一辺がが50cmぐらいの立方体が斜めに置かれている。別に置いたわけではないのだが、そこにある。この立方体になにか布のようなゴミが引っかかっていて、その布の陰、立方体の下の陰、立方体の周囲の石の陰に、4月になれば、つまり、今頃になるとメバルの稚魚が出てくるのだが、見えない。 仔魚:孵化してから、すべての鰭の鰭条が定数に達していないもの、つまり生まれたての魚だ。稚魚;鰭条も定数に達していて鱗も出始めているが、模様が成魚と異なるもの未成魚;模様も完成し、体型も成魚に近いが性的に成熟していないもの成魚:性的に成熟しているもの幼魚:稚魚以上、未成魚未満
※「東京湾の魚類」よりこれは定義なのだが、僕は稚魚と言う言葉をよく使う。定義の上では、稚魚よりも幼魚にちかいのだが、つい稚魚と書いてしまう。稚と言う言葉、字が好きなのだと思う。 メバルは表層を引く稚魚ネットで12月から4月に仔魚が出現する。 体長1.5から5cmほどの稚魚は、人工護岸、近くや岩礁域、アマモ場などの中層に群をなしているが、成長するにつれて移出する。 東京湾の魚類 河野博監修は、とても良い本で東京水産大学の魚類学教室出身の人たちが中心になってまとめていて、お台場グループの尾島さん、多留さんなどもちょっと書いている。僕が魚類学教室とかかわっていたのは、遙か遠い昔なので河野さんと直接知己ではないが、魚類図鑑でもあるし、東京湾全体の魚環境をコラムを並べたように書いていて、すべてがわかる。読むことをおすすめする。こういう本を作りたいな、とおもう。 話をもとにもどして 杭の列には、ハゼの類も、メバルも何も見えない。はて、透視度は良いし、水温も17度ー18度と暖かくなったのに、魚もカニも居ない。生き物がすくなくなったのかな。 撮るものがないので、杭の列にカメラを寄せかけて、バック泳ぎで、自分の姿を自撮りする。ドライフィンはなかなか調子が良い。
彼女は一回だけの潜水で、植物を採集して終了だという。彼女の使った10リットルタンクを使うことにした。残圧は100ある。十分だ。 昼食、近くのコンビニで冷やし中華を買ったが、まずかったので半分でやめた。昼食後、のんびり過ごして、14時から潜水することにした。15時に、僕があがって、終了となる予定。 まず、これは左手に広がる人工砂浜の砂の上を波打ち際の砂浜を左手に進む。カレイの稚魚がいないかとさがす。薬指の爪ほどの稚魚がいる?いなかった?わからないほど小さい何かが微小な砂煙をあげた。もちろん撮影はできない。 外来種のことについて調べている。調べていると言って、本を読むだけなのだが。 最近の外来種の右総代のようなものに、ホンビノス貝がある。
砂地で、この貝がざくざくと、左手で砂を掻くと手触りがあって一回に3個ぐらいとれる。この貝のことについて別に書こうと思っているのでそのための撮影をしようと考えたのだ。が、思ったようにざくざくとはとれない。とれることはとれるのだが、少なくなったのではないかと疑った。風呂田先生が調べているが、今回はおやすみ。 ターンして、波打ち際に近い転石地帯の、そう、ちょうど公衆便所の前あたりだ。公衆便所、ランドマークとしてはおもしろくないけれど、仕方がない。公衆便所と波打ち際の中間あたりで、適当な大きさの転石の前で、牡蠣を割った。ここは、たちまち、数分もかからないでハゼが出現した。最初の奴がくわえてしまうと後のハゼはあぶれてしまう。それでも、一旦でてくるとうろうろしている。もっと大きい牡蠣を割ればよかったかと思うが、5ー6尾は集まって来た。アゴハゼとチチブ、そしてアカオビシマハゼがお台場のハゼの常連、定番だ。5ー10cmのハゼの類だ。
トサカギンポが出たので、熱心にカメラで追う。なんと言うこと無いが、ギンポはアイドルなのだ。
気持ちの良いダイビングができた。