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Channel: スガジロウのダイビング 「どこまでも潜る 」
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1118 房総の潜水器漁業

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日本人は、歴史が好きなのだけれど、歴史を主なテーマに据えて出版しようとしたり、講演会をやったりしようとすると、そしてそれが日々の生存に直接関わりないブロックだったりすると、これで良いのかなと迷いが出てくる。大学の4年先輩の大場俊雄兄は、千葉県の水産試験場でアワビの人工採苗手法の確率に功績のあった研究者(最終職歴は、千葉県水産試験場長)だったが、千葉県のヘルメット潜水の歴史がもう一つのライフワークで、その本を出版された。そのとき、「こんな本を出して、良いのかな。漁業の直接的な役に立つわけのものでもないし?」と僕に相談を持ちかけられた。同窓会誌に長らく発表されていたものをまとめたものだったのだが、ほとんど世間的な反響がなかったし、直接生産に役立つ研究でもない。そして、ヘルメット式は当時から斜陽で、僕のスクーバやフーカーが取って代わろうとしていた。 当時、僕も歴史よりも、今が大事、月末の支払いに追われていた1990年代のはじめだったので、「とても大事なことだと思いますよ。先輩が本にしなければ、消えてしまうものです。」半ば社交辞令だった。しかし、この本はおもしろく、続編ともいうべき、「      」も出た。自分が歴史を中心にしたシンポジウムをやり、最新ダイビング用語事典Ⅱを年表を柱にしようとしたとき、大場先輩と同じ心配、心労がある。 僕の場合、事故の歴史をふりかえって見るなど、安全のため、つまり役立つ部分も入れているが、そして、物事の基本的な理解が歴史によって進み、それが安全につながるという重要な実学的部分もあるのだが、やはり、これでよいのかという部分もある。 とにかく、「房総の潜水器漁業史 崙書房 1993」は、日本の近代潜水器の発祥がわかるとともに、沿岸漁業史もよくわかる。スクーバ、マスク式の発祥について、この本のように、大場先輩ほどに入念に調べる期を逸してしまっている。しかし、これがスタートなのだと、自分を鼓舞する。
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 房総の潜水器漁業史によれば、日本で初めて潜水器が使われたのは、1858年、安政5年 長崎県での岸壁築造工事で使われた泳気鐘(ダイビングベル)で、本格的なヘルメット式は1866年 慶応2年、横浜港での船底修理で、この時に横浜港の世話役だった増田万吉が潜水術を修得して器械潜水業を始めた。これが日本の潜水業の祖であり、これを千葉県白浜の根本村の森清吉郎が導入、増田と組んで潜水器によるアワビ採りを始めた。これが1877年 明治10年で、物語の始まりである。 ここでも、そして、これから作ろうとしている年表でもこの本に述べられていることの詳細を書くことができないが、この二冊の本はぜひぜひ、読むことを薦める。潜水器漁業とはどんなものなのか、そして沿岸漁業とは、さらに漁業者のこと、がよくわかる。 そしていま、伝統的なヘルメット式潜水器漁業は消えてゆこうとしている。

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