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Channel: スガジロウのダイビング 「どこまでも潜る 」
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0608 別表第二-3

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別表第二 その3  混合ガス潜水の減圧表を考慮して、そして、純酸素減圧を考慮して、規則が改正されたと書いたが、別にこれまでも混合ガス潜水ができなかったわけではない。純酸素の減圧ができなかったわけではない。JAMSTECは、水深300mを目指す、ニューシートピアをやっていたし、海上自衛隊の潜水医学実験隊は、もっと深い飽和潜水の実験をしていた。
 1980年の僕たちの釜石湾口防波堤調査工事のときには、JAMSTECに協力してもらって、労働基準監督署に計画書、減圧表などを提出して混合ガス潜水を行った。別に禁止されることも無く、監督署の人が、一回現場に見に来て、説明を聞いただけだ。 他の混合ガス潜水も説明がなっとくの行くものであれば、許可になったはずだ。 だから、今度の改正は、「混合ガス潜水が特別の許可申請なく行うことができる」と言い直すことができる。 しかし、僕たちの釜石での潜水は、途中で金銭的理由でヘリウムの節約を図らなければならなくなり、空気潜水を取り混ぜた。別表第二に従っている形になっていれば、空気で潜水しても規則違反ではない。 今後はそんなことはできない。混合ガスで潜る計画で空気で潜り、事故が起これば、たいへんだ。

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  今度調べてみて意外だったのは、潜水士テキストの初版の別表第二は、水深は60mまでだった。1973年の改版で最大水深は80mをこえて90m以下になっている。(これは僕の持っているテキストだから、正確ではないかもしれない。)
 沿岸漁業の定置網潜水も60mを越える潜水を空気で潜ることがある。漁業と労働基準監督署の間も微妙だ。潜水士の試験に合格しなかった漁師も潜水はやめていない。ヘルメット式、マスク式の漁業潜水は、個人業主のこともあり、治外法権的なところもある。 違法であるか違法でないかは、別に労災をもらう意志がなければ、自己責任である。ただ、車いすの生活になったりすると悲惨なことになる。
 学問的にはどうあろうとも、アルゴリズムがどうであろうとも、空気で80mまで潜れないと困る生活者の世界がある。
 乱暴なことを言っているな、と思うけれど、医師の視点、役所の視点と、生活者の視点とは、真逆になることが多い。
 だからといって、自分の立場で、どうすることもできないが、漁業潜水については、どこかで考えなくてはならない問題だろう。 農水省のなかに、そのことを司る部署はない。 漁業においては、潜水そのものが、どんどん、必要性の比重を失っていくのが現状であり、ほっておけば消滅すると思われているかもしれない。
 たとえば、マスク式潜水による漁業は、これまで伊豆七島、伊豆半島、ほか各地で細々と続いていたが、そのマスク式の、旭式、金王式の製作会社はなくなり、部品供給が止まってしまった。潜水士テキストのなかからも、軽便式潜水の章が消えた。と言って、デマンドバルブ付きのフルフェイスマスクに換えることもできにくい。コンプレサーが違うからだ。ヘルメット式についても、ヘルメットを作る最後の職人、東亜の山沢君が、亡くなってしまって、もはや新品をつくることもできない。
高気圧作業安全衛生規則、及びそのテキストについて考えていることを述べてきた。述べているうちに意見が変わってきてしまったものもある。とにかく考えた。
 中間的に整理すると
(1)スクーバと下がり綱について、下がり綱は、スクーバでも有効であり、あった方が良いが、ヘルメット式の考え方をそのまま適用するのは無理だ。総合的な形をかんがえてほしい。運用の上、安全管理のうえからは、最重要な問題であり、たくさんの議論が必要である。このことだけでも、問題にして議論しようかと思っている。
(2)ダイブコンピューターについて、これも、テーブルで計画をたて、ダイブコンピューターで補正と記録をするのが、王道だとおもうけれど、時計と同様に使われるということが前提で、使い方について、もう少し触れておいた方が良いと思う。またダイブコンピューターメーカーの方も、この規則を視界にいれていない。今、ダイビング業界で売れているのはダイブコンピューターだけで、重器材はレンタルが中心になりつつある。潜水士など相手にせずに、十分にビジネスになっている。が、最初に述べたように、レジャー潜水のガイドダイバーもインストラクターも、この規則で規定されている。
 規則とテキストで水中時計は三ヶ月ごとの点検を義務づけている。もはや、水中時計という言葉は、ここだけにしか見ることはできない。昭和時代の水中時計の位置に今はダイブコンピューターが来ている。ダイブコンピューターが水中時計なのか?
(3)減圧表が規則の上で計算式に代わったことは、そうあるべきとは思っていたが、テキストの上では、現在使用されている減圧表とか計算式について、具体的な事例がほしい。
(4)レジャー潜水の規則の上での位置、ついてさらにこ述べて行きたい。一本の道が二つに分かれ、どんどん離れて行った歴史であり、それには自分も少なからずかかわっている。
 

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