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Channel: スガジロウのダイビング 「どこまでも潜る 」
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1219 シンポジウム③ サーフェスコンタクト

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  サーフェスコンタクト

ダイビングは冒険だ。夢を追わなくては、ダイビングは海の中の夢、海の夢そのものだ。
とか言いながら、そして、ダイビングの目標は、深さだ。深く潜ることが冒険だ。だから、フリーダイビングだって、美鈴がスターになるし、深く潜れば偉い。などと言いながらなにかといえば安全のことを言ったり書いたりしている。
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       サーフェス サプライ  送気式

ずっと考え、追い続けて来たのは、ダイビングの運用であった。そして、今唱えるのは、サーフェスコンタクト。この言葉、ダイビングの用語として、あるのかどうか?日本水中科学協会の用語事典にもPADIのエンサイクロペディアにもない。命綱のことを書いていたら、思い浮かんだ。送気式=サーフェスサプライ テクニカルダイビング=スクーバ、そのサーフェスから、サプライ「送気」してもらわないで、常に連絡をとっている。すなわち、コンタクトを失わない。だからサーフェスコンタクトだ。最初は、命綱=サーフェスコンタクトと考えていたのだが、もっと広い範囲でつかえるのではないかと思うようになった。最大に広く考えれば、帰り途を確保しておくことまで、必ず帰れるのがコンタクトだと言っても良い。ちょっと広げすぎか。

命綱はもっとも直接的であり効果の高いサーフェスコンタクトである。現在、毎年発生するダイビングによる死亡事故の90%は、死亡にいたらなかっただろうと、思う。すぐ、何も考えずに、90%などという数字をデタラメに使う。悪い癖だ。日本語はべんりだ。ほとんどと置き換えよう。命綱を付けていたら、殆どの死亡事故は、死亡には至っていないのではないか。このところ、明らかな減圧症で死んだひとのことを聞かない。だいたいあ溺死だ。命綱をつけていれば、溺死はほぼ、逃れられる。
ところで、命綱を着ければ、スクーバとはいえない。言ってはいけないのだ。セルフコンティンド、水面から切り離さなくてはスクーバではない。だから、直接的なコンタクトがあったら、スクーバではない。有索潜水になる。そして、多分、冒険とも言えなくなる。

命綱でなくても、 自分の経験では、アンカーロープにも命を助けてもらっている。アンカーロープは少なくとも水深の2倍の長さが必要であるから、ダイバーの頭上にあれば、つかまって浮上する事が出来る。
ただし、アンカーは、船に引きずられて、移動するから、これだけを頼りにすると事故が起きる。アンカーを潜降索にしたために4人が事故を起こした件の裁判に関わったことがある。これは、かなり深いところから立ち上がっている根の頂上にアンカーを打って、アンカーから潜降させた。ところが、アンカーが根から外れて、50mの水深に落ちてしまった。20mの根の頂上だろうと思って潜降したら、50mに落ちてしまった。4人が潜水して、2人が急浮上した。その二人が流されたので、船は、アンカーを上げて、助けに行ってしまった。二人は下に取り残された。そして、水面で拾った一人が危篤状態になったので、船は港に急行してしまった。残された二人が行方不明になり、結局は骨で揚がった。
アンカーとダイバーの間に別のコンタクト、たとえば巻き尺を使うとか、ガイドラインの9リールを使う必要がある。
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     巻き尺をのばす。

 調査をするときには、位置を決め、その位置のGPSの値をとっておく。その位置を示すブイと潜降索をおろす。これが、命綱を使わない場合に一番勧められるサーフェスコンタクトである。

 レクリエーショナルダイビングのポイントには、ブイが設置されている。ボートをこのブイにつなぎ、潜降索にそって潜降し、同じ索にもどって浮上する。
 ただ、問題は、この索に戻れないことであり、各ダイビングポイントには、この索にもどるラインが張り巡らされているが、毎日、そのポイントに潜っているわけではない僕は、どのラインのどの方向が潜降索にもどれるのかわからなくなってしまうことである。
 サーフェスコンタクトを広義に解釈すると、帰り道の確保である。
 もっと広義に解釈すると、安全管理の物理的な道具であり支柱である。
 僕は、最近、高齢になってからだけれど、サーフェスマーカーブイを打ち上げて、浮上減圧するような潜水はしない。必ず潜降索に戻るか、ビーチへエクジットする。そんなことを言ったら、面白いポイントに行けないではないかハンマーにも会えない。昔、与那国で、ハンマーを追って、水深50mへ二回、無減圧の範囲だったが潜って、擬似減圧症になった。60代のころだったが、ハンマーとか、対象物があると、夢中になってしまう。危ない。だから、70歳で卒業した。ただ、50mに潜るだけ、60mに潜るだけ、もしかして80m潜るだけで、サーフェスコンタクトがあれば、悪くても減圧症だ。わかっていて、十二分に減圧停止時間をとり、浮上速度をゆっくりにすれば、激症の減圧症にはならない。12時間以内に再圧治療を開始すれば、すぐに治る。減圧停止は一番偉い先生が計算して暮れた時間の1.5倍にする。浮上速度は、出来る限りでゆっくりにする。そのためにはサーフェスコンタクトが必要、必須だと思っている。

 命綱で繋がれることは、鵜飼いのようなもので、ダイバーは積極的にこれを嫌う。なんとか繋がれないように願う。
 1980年代、テレビ番組で、水中レポートを始めた。
ジャック・イブ・クストーはアクアラングを作り、それを映画で紹介した時、その後で展開されるすべての水中活動を展開してしまった。ジャック・イブ・クストーが偉大なのは、アクアラングというスクーバを開発したことよりも、この展開したことである。と僕は思っている。そのジャック・イブ・クストーの展開のレパートリーの中に、この水中レポートは無かった。このことは胸を張っていえるのだが、その水中レポートは、有線通話器を使って行われた。すなわちサーフェスコンタクトである。100mの長さの有線通話ケーブルの範囲で、世界中の水中の事物90%までは撮影できた。そして、このコンタクトのおかげで、少なくとも2回は危機一髪を乗り越えている。
 実は、有線通話による水中レポートで与那国のハンマーを追って、ダウンカレントに吸い込まれ、ケーブルのおかげで助かっている。ケーブルが無くても大丈夫だったかもしれないが、NHKの南方カメラマン、商売敵で親友だったが、神子元でケーブルを使わないで、ダウンカレントに引きこまれて、亡くなった。良い死に方だと僕は羨んだが、一緒に潜っていたガイドは、未だに行方不明だ。

 その少し前、僕の経営するスガマリンメカニックは、別名をスガマリンサーカスと言われ、不死身だと思われた。不死身は有線通話というサーフェスコンタクトがある撮影チームのことであり、リサーチチームは、サーフェスコンタクトを無視した。この思い上がりが、若い社員を一人失わせることになった。事故の原因は突然死だが、命綱、もしくは有線通話があれば、死なないで済んだ。事故を起こした船上の片隅に、僕の用意した有線通話ケーブルは、ぽつんと取り残されていた。
 このことが、僕のバランス感覚を失わせることになり、繋がれることが死ぬよりいやなレクリエーショナルダイビングにまで有線通話によるコンタクトを強いるケーブルダイビングシステムを考えだし、それを普及する会社を設立して財産を失った。
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       ケーブルダイビングシステム

 レクリエーショナルダイビングは、命、安全、よりも魚のように自由に泳ぐことを優先するのだ。
 以来、自ら糸の切れた凧状態になっているレクリエーショナルダイバーは、勝手に、自由で幸せに潜ればいい。決して引き止めはしない。ダイビングは冒険だ。自分が若いころ散々やってきたことを、年寄りになって引き止めたりとやかくいうのは、いけない。
自己責任が原則だと唱えるようになった。

 次には自己責任の話をしよう。

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