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Channel: スガジロウのダイビング 「どこまでも潜る 」
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1107 命綱 ④ 窒素酔い。

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 窒素酔いとはなんだ。

 窒素酔いについて、まず、高気圧作業安全衛生規則の説明である潜水士テキストを見て 、それを基本にして自分の体験と、そして、どのようにしたら良いのかを考えて行こう。 によれば、
 潜水しテキストによれば、
「潜水深度がふかくなると、空気や、窒素酸素混合ガス潜水では、アルコール飲用時と類 似した症状を呈する。いわゆる窒素酔いの影響が大きくなる。
窒素酔いは症状発現が早く、潜水直後に発現し、潜水深度が浅くなれば軽減する。自信が 増加して、注意力が低下するためスクーバでは、呼吸ガスボンベの圧力低下に気づかず、 エア切れに、陥ることがある。深い潜水ほど窒素酔いは重く、その場合のエア切れは致命 的になることもある。
 注意すべきは、潜水経験を積むと、窒素酔いにかかりにくくなるという錯覚に陥るこお とである。医学的な研究では複数回の潜水によって、」窒素酔いに慣れたという客観的な 証拠は認められていない。深い潜水の経験があるからといって、過信するこおとはきけん である。
 高圧則では、窒素酔いによる危険性を避けるために窒素分圧限界を水深40m以下とす るように定めているが、窒素酔いの程度には個人差が大きいので、制限深度より浅くても 注意が必要である。
 また、飲酒や疲労、大きな作業量、不安なども、窒素酔いの作用を強くするので、注意 がひつようである。」
 誤解を避けるため書いておくが規則に反対するものではない。ただ、作業現場的にはこ の規則によって、規則に従うかぎりは、40m以上の潜水は空気ではできなくなった。そ れは、事実上このままでは40m以上に潜れないことを意味する。

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   後ろに投石が見える。


 まず自分の体験だが、1980年の釜石湾港防波堤調査工事の話をしたので、その続きから 。この工事は60mから、最深で70m弱で、上からガット船で、石を投入する、その石 がどのように積み上げられていくかを測定する調査だった。積み上がった山の上の方は、 50m程度になる。55m程度から上は、ヘリウム酸素を使わないで、空気で潜水した。 これは、ヘリウムが高価であるのとともに、空気の方が減圧時間が短くてすみ、体温のロ スを防げるためだ。
 今回の改正で、こんなことはできなくなった。40m以上だからすべて混合ガスである 。これは、この程度の水深の仕事のコストを大幅に高くする。
 この測量工事は水糸を張り巡らせたりして、かなり細かい作業だったが、空気で別に問 題になるような窒素酔いにかかったダイバーはいなかった。それに、テキストで慣れない と書いてあるが、慣れる。窒素酔いはメンタルな部分がかなりあるので、克服出来る。酔 いは軽減されなかったとしても、その酔いに慣れることができる。錯覚であっても、作業 ができれば良いわけだ。
 工事が終わりに近くなった頃、工事の船が、大きなアンカーを落としてしまって、それ を引き揚げるために鋼索を取り付けて来る作業があった。契約している作業とは別なので 、別料金がいただける。水深は55mほどだったから、空気で潜水した。僕と鶴町の二人 で潜った。アンカーから10mほど離れたところに鋼索が降ろされたので、二人で鋼索を 担いで、アンカーまで持ってきて、取り付けた、その間、5分ほどだったが、激しい労働だ った。二人共意識ははっきりしていたが、アンカーのそばにへたり込んでしまった。フル フェースで電話が通じている、予定した潜水時間は20分だった。作業が終了したのだから 上がれば良いのに、そのままにしている。上からは、10分経過、とか15分経過とか時間を 知らせてくる。そのたびに了解、と答えるのだが上がる意志がない。少しでも早く浮上し ようという思考ができないのだ。船上の指揮者も、こちらからは工事終了の報告をしてい るのだから、上がれという指示を出せばよいのに何も言ってこない。そのまま時間通りに 浮上したが、激しい労働のために、窒素酔になっていた。
 工事が終わる頃、隣の現場で別の工事会社で死亡事故がおこった。物理探査のために爆 薬を仕掛けに潜ったダイバーだった。水深は60m、空気のスクーバで一人でのの潜水だ った。60mにスクーバは危ない。まさしく過信だろう。
 これも、エキストラで僕が引き受けた。大阪のダイバーで僕が一番信頼していた上村く んと呼び戻して、二人で潜った。僕たちはホースでフルフェイスマスクで、空気で潜った 。作業は、すぐに、数分もかからないで終わった。透明度がよく、60mの水深から水面 がはっきりと見える。勿論、船も見える。気持ちが良くて、浮上したくない。もう少しこ
の光景を見ていよう。窒素酔いのもう一つの症状、深海能陶酔だったのだと思う。これは 、自分の意志で、すぐに上がったが、この透水を味わった、感じたことは、ダイバーとし て、幸せだった。

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