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Channel: スガジロウのダイビング 「どこまでも潜る 」
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1018 三浦先輩

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三浦先輩のことを書いてきた。三浦定之助、三浦先生でもないし、お目にかかることもできなかったし、潜水の友という本、そして、「おさかな談義」という本に今目をとおしていて、むかし、「南の魚」という本を読んだ記憶がある。ただ書いたものをとおしてだけのだが、やはり、三浦先輩が今の自分にとって、呼び名としてしっくりする。
 ここで三浦先輩のことをまとめておこうと思う。おさかな談義の奥付によれば、
1887年 明治20年 生まれ、1909年 明治42年 農林省水産講習書漁撈科卒業
長崎県水産試験場技手、東京潜水工業 技師 静岡県伊東水産試験場場長
潜水技師として日本各地の漁場を調査  1961年 没 74歳
著書には、「潜水生活20年」「南海の魚」「おさかな談義」「海草」など、潜水の友は非売品でマニュアルだったから、リストアップされていない。潜水の友は、念の為にアマゾンでチェックしたが、でていない。以前、15000円ででていて、コピーを持っているので、買わなかった。
 ※引用の時、コピーをスマホに移して、スタンドに立ててみると便利、引用するような本はみんなコピーして使う。

 三浦先輩は人の噂話などを昔聞いたけど、剛毅な人だったのだと思う。
 そして水産人だ。水産人という言葉、今ではもう聞かれない。水産人とは、水産を通じて、国のため、国民のために尽くす人といういみだ。僕のあたりまでその教育を受けている。母校も今は東京海洋大学になり、良し悪しは別のこととして、まったくちがう大学になった。魚を獲ることはビジネスだが、明治から昭和10年にかけて、そして戦後も、食糧難、飢饉という言葉があった。今の人達は念頭にもないだろうが、食べるものが無くなるのだ。国民のために食料である魚を獲るのだ。魚が居なければ、魚を獲る手段kがなければ、国民の食糧にもならないし、ビジネスにもならない。捕鯨のことは、いつか書きたいとおもっているが、1950年代、鯨を捕ると、全国の小学生の給食にでるのだ。団塊の世代の最初の方のひとたちは、給食の鯨にノスタルジーがあるかもしれない。
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 そんな時代背景である。三浦先輩は、自分の潜水を水産に役立てるのだという信念があった。
現役時代は、ずいぶんと気の強い、怖い人だったようだ。スパルタ的にダイバーを育てたかもしれない。
潜水教育のプログラムを見ると、そんな感じがする。使う潜水機は山本式である。
 伊東の水産試験場辺で実習を行う。そして、最上級になると、常時50mを潜る。場合によっては90mまで空気で潜る。潜水の友で 驚くことは、窒素酔いの記述がないことだ。

 1。脳神経径に発生する場合。
2, 腰部以下半身不随
 3 目の充血
 4 排尿、排便の自由
 5 発汗の不均衡による不快
 6 手足先など局部に発生する場合。
 7 めまい

 7 目迷ひ
 「これは潜水病ではない。勿論、潜水中に時々発生する。がその原因は組織内の窒素ガス泡蓄積によるのではなく、過労から酸素の不足によって起こるのである。」
 窒素酔いのことは知らなかったのだろうか。もしかしたら、知らなかったから、90mも潜れたのか?
僕が90m潜った時も、あの意識消失は、酸素中毒(不足ではない)によるものだったのか窒素によるものだったのかわからない。窒素酔いは愉快になり、ハイになる。
 とにかく深海の陶酔のことは書かれていない。
 窒素酔いは、次のジェネレーションで発生する。

 そして、その講習の結果、教えた潜水夫は、次々と、潜水病に倒れる。それが1935年の「潜水の友」の時代だったようだ。そして三浦先輩も二回の潜水病罹病で、倒れる。
 その経験を基にしているのが、「潜水の友」であろう。文章を見ると、特攻隊までとは言わないが、戦場に兵士を送り出し、一緒に突撃するような心境だったのだとおもう。そして、国のため(食料のため、商売人であれば商売のため)に突撃するのは悪ではない。

 高齢になってからの潜水病の後遺症は辛かったと思う。多分、死んでしまっていた方が良かったとおもったにちがいない。日本の潜水の歴史の中で一つの壮烈な時代だった。僕が同じ時代に生きて、同じ教育を受けたとすれば、同じようなコースを辿ったものと思う。
 水産人として、自分が潜ることに賭けた悲劇と感じてしまう。

そして、第2次大戦をまたいで大串式、山本式の系譜は消失する。どうしてなのか?僕はその時代を生きていない。推測しかできないが、書いていきたい。

 日本の潜水の歴史を振り返るとき、器材の進化だけの歴史ではなくて、水圧との闘いの歴史として、潜水病のこと、窒素酔いのことを見ていかなければとおもう。

 ずいぶんと無駄なようなことを書いてきたかとも思うが、更にこの方向も書き続けて行きたい。やがてまとめれば、何かになると思う。


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