スノーケルが付いたフルフェイスマスクが今年の夏、売りだされた。
この手のマスクは、1950年代の後半に売りだされて、いくつかのトラブルがあり、市場から消えた。それと、ほぼ同じコンセプトで、新しく作られたものだ。
1960年台にNGになった理由の一つは呼吸死腔が大きいことであった。呼吸死腔とは人体の肺に直結していて、ガス交換に関係のない空所で、呼吸に役立たない死腔である。広く解釈すれば、気管もガスの通り道に過ぎないので死腔である。スノーケルも死腔である。
ダイバーが吐き出した息がマスク、あるいはスノーケルの中に残っていて、この残っている空気を吸い込まないかぎり、新しい空気が入ってこない。長い長いスノーケルで、内容積が、一回の呼吸量と同じほどあるならば、新しい空気は殆ど来なくなり死んでしまう。長いホースで呼吸する送気式潜水は、ポンプで空気を送り込むから呼吸できる。潜水の原理だ。
スノーケルは細くて内容咳の小さいものの方が、個人的には好きだ。
もちろん、ある程度の容積はあって仕方が無いのだが、どのくらいまでならば許容されるのかとか、海女の磯笛のように、吐き出す空気に圧をかけると呼吸が楽なのか、とかそういうスノーケル回りの生理学的な問題を、スキンダイビング・セーフティの共著者である、藤本浩一に解説してもらうことをシンポジウムの大きな演題の一つに決めている。
そんなこともあって、この新型スノーケルマスクには興味をもった。
デマンドバルブ付きのフルフェイスマスクぃが、現在の作業潜水の潜水器の主力になっていることもあって、フルフェイスマスクのことについて、水中科学協会のワークショップの次のテーマにしようかとも話し合っている。
とにかく、買って使ってみて、良いか悪いか、どのくらいつかえるのか、試してみよう。自分の呼吸で確認しよう、辰巳プールの練習会にきてくれるエキスパートのスキンダイバー、フリーダイバー、そして、浦安海豚倶楽部のみんなにも使ってみてもらって、意見を聞いてみようということで、購入した。
アマゾンで買って9000円弱だった。
今度のフルフェイスマスクは、口と鼻だけを覆うマスクを使って、できるだけ死腔を小さくする工夫は見られる。
海豚倶楽部のでは、興味を示したものの、みんなこれはダメとちょっと潜っただけで、投げ出した。
スキンダイビングに使えないことは最初からわかっている。スノーケリング用、水面呼吸用のマスクなのだ。
そのことを念頭に置いて、辰巳の練習会で何人かにテストしてもらった。中心になってくれたのは、水中科学協会会員で水中でのフラダンスを研究していて、ドルフィンスイミングの達人でもある、自ら撮影もする斉藤真由美さんだ。喜んで引き受けてくれて、自分でも多くの動画をとってフェイスブックで発表した。
彼女は、水深5mに潜って20mぐらいは泳いだ。他に2-3名試してもらって、短い時間ならば使える。危ないかどうかわからないが面白いということだった。
まだ、結論を出せるほどのテストをしてないないが、辰巳では、みんなエキスパートだから、面白がってつかえる。水中パーティグッズにはなる。でも、このマスクで海で潜ろうと言う人はいない。プールでの物珍しい遊びのグッズである。世界中で、このレベルでの使用をした人は多いだろうから、充分に商売にはなったはずだ。しかし、継続的な販売が可能かといえば、ノーだろう。その意味では、コレクションとして、速く買っておかないと消えてしまうから、買ったことは正解だろう。
自分で使って泳いでみて、このマスクを使って子どもたちが安全にスノーケリングができるだろうか?というとノーである。スノーケリングがフローティングジャケットを着て、水面で泳ぐことを厳格に守れば死亡事故は起こらないだろうが、子どもたちが海で、これで潜ったら危ない。
その理由
①フルフェイスマスクへの水の浸水が多い。
スノーケルの先端が水没しても水が入ってこないメカニズムは良く出来ていて、その部分が売りなのだろうが、フルフェイスマスクの出来が良くなくて水が入ってくる。
フルフェイスマスクは、完璧でなければならない。出来は、普通のマスク程度に水が入ってくる。テストしたダイバーの三分の二が、口鼻インナーマスクの顎の部分に浸水している。この水抜きが重力によるだけなので、抜けにくい。何時も溜まっている。頭を下にしてヘッドファーストをやると、この水が全部鼻から入ってくる。
②子どもたちは、そして大人でも水に慣れていない人は、何かが起こると、水面に顔を出して、マウスピースを口から離して外の空気を吸おうとする。これが溺れなので、マウスピースを口から離さないように指導するのだが、このマスクでは、何かがあったときすぐに外の空気が吸えない。そしてインナーマスクの中には抜けきっていない水が入っている。たちまちパニックになる。
③何かがあった時、大声で助けを呼べない。声が中にこもってしまう。
多分ちょっとやっただけで、これは使えないと捨ててしまえば事故にはならない。しかし、練習を続けて、少し岸から離れることができるようになったら、本当に危険になる。
④マスクの内側の曇がひどい。これはフルフェイスマスクの宿命なので、プロのマスクは空気を吹き付けて曇りをとるフラッシングができるようになっている。これは空気の無駄なので、曇り止め液が大量に必要になる。プロのマスクよりももっと曇りがひどい。
⑤最後にようやく呼吸死腔の問題だが、自分は、5分ぐらいで辛くなった。これについては、もっと試用が必要であるが、10分、20分と続けて呼吸は難しいだろう。苦しくなった時に、スノーケルのようにすぐに口から離して外の空気を吸うことができない。口鼻のインナーマスクを使っても、そのマスクとそれに繋がるスノーケルは死腔だし、インナーマスクの上にはマスクの中に空気を出す弁が付いているから、マスクの中全部に呼気が回る。
なお、まだテストが終わったわけではない。直ぐに縁につかまることのできる、プールでならば、我慢できないこともない。多分数十人のダイバーが面白がって使ってみて、なにか良い解決法を探して、道具にすることができるかもしれないし。スキンダイビングのエキスパートならば、なんとかするだろう。しかし、其のエキスパートは、自分が購入するようなことはしない。無知な子供か素人が購入する。まさか、ダイビングショップが責任を持って売るようなことは無いだろうが。
この手のマスクは、1950年代の後半に売りだされて、いくつかのトラブルがあり、市場から消えた。それと、ほぼ同じコンセプトで、新しく作られたものだ。
1960年台にNGになった理由の一つは呼吸死腔が大きいことであった。呼吸死腔とは人体の肺に直結していて、ガス交換に関係のない空所で、呼吸に役立たない死腔である。広く解釈すれば、気管もガスの通り道に過ぎないので死腔である。スノーケルも死腔である。
ダイバーが吐き出した息がマスク、あるいはスノーケルの中に残っていて、この残っている空気を吸い込まないかぎり、新しい空気が入ってこない。長い長いスノーケルで、内容積が、一回の呼吸量と同じほどあるならば、新しい空気は殆ど来なくなり死んでしまう。長いホースで呼吸する送気式潜水は、ポンプで空気を送り込むから呼吸できる。潜水の原理だ。
スノーケルは細くて内容咳の小さいものの方が、個人的には好きだ。
もちろん、ある程度の容積はあって仕方が無いのだが、どのくらいまでならば許容されるのかとか、海女の磯笛のように、吐き出す空気に圧をかけると呼吸が楽なのか、とかそういうスノーケル回りの生理学的な問題を、スキンダイビング・セーフティの共著者である、藤本浩一に解説してもらうことをシンポジウムの大きな演題の一つに決めている。
そんなこともあって、この新型スノーケルマスクには興味をもった。
デマンドバルブ付きのフルフェイスマスクぃが、現在の作業潜水の潜水器の主力になっていることもあって、フルフェイスマスクのことについて、水中科学協会のワークショップの次のテーマにしようかとも話し合っている。
とにかく、買って使ってみて、良いか悪いか、どのくらいつかえるのか、試してみよう。自分の呼吸で確認しよう、辰巳プールの練習会にきてくれるエキスパートのスキンダイバー、フリーダイバー、そして、浦安海豚倶楽部のみんなにも使ってみてもらって、意見を聞いてみようということで、購入した。
アマゾンで買って9000円弱だった。
今度のフルフェイスマスクは、口と鼻だけを覆うマスクを使って、できるだけ死腔を小さくする工夫は見られる。
海豚倶楽部のでは、興味を示したものの、みんなこれはダメとちょっと潜っただけで、投げ出した。
スキンダイビングに使えないことは最初からわかっている。スノーケリング用、水面呼吸用のマスクなのだ。
そのことを念頭に置いて、辰巳の練習会で何人かにテストしてもらった。中心になってくれたのは、水中科学協会会員で水中でのフラダンスを研究していて、ドルフィンスイミングの達人でもある、自ら撮影もする斉藤真由美さんだ。喜んで引き受けてくれて、自分でも多くの動画をとってフェイスブックで発表した。
彼女は、水深5mに潜って20mぐらいは泳いだ。他に2-3名試してもらって、短い時間ならば使える。危ないかどうかわからないが面白いということだった。
まだ、結論を出せるほどのテストをしてないないが、辰巳では、みんなエキスパートだから、面白がってつかえる。水中パーティグッズにはなる。でも、このマスクで海で潜ろうと言う人はいない。プールでの物珍しい遊びのグッズである。世界中で、このレベルでの使用をした人は多いだろうから、充分に商売にはなったはずだ。しかし、継続的な販売が可能かといえば、ノーだろう。その意味では、コレクションとして、速く買っておかないと消えてしまうから、買ったことは正解だろう。
自分で使って泳いでみて、このマスクを使って子どもたちが安全にスノーケリングができるだろうか?というとノーである。スノーケリングがフローティングジャケットを着て、水面で泳ぐことを厳格に守れば死亡事故は起こらないだろうが、子どもたちが海で、これで潜ったら危ない。
その理由
①フルフェイスマスクへの水の浸水が多い。
スノーケルの先端が水没しても水が入ってこないメカニズムは良く出来ていて、その部分が売りなのだろうが、フルフェイスマスクの出来が良くなくて水が入ってくる。
フルフェイスマスクは、完璧でなければならない。出来は、普通のマスク程度に水が入ってくる。テストしたダイバーの三分の二が、口鼻インナーマスクの顎の部分に浸水している。この水抜きが重力によるだけなので、抜けにくい。何時も溜まっている。頭を下にしてヘッドファーストをやると、この水が全部鼻から入ってくる。
②子どもたちは、そして大人でも水に慣れていない人は、何かが起こると、水面に顔を出して、マウスピースを口から離して外の空気を吸おうとする。これが溺れなので、マウスピースを口から離さないように指導するのだが、このマスクでは、何かがあったときすぐに外の空気が吸えない。そしてインナーマスクの中には抜けきっていない水が入っている。たちまちパニックになる。
③何かがあった時、大声で助けを呼べない。声が中にこもってしまう。
多分ちょっとやっただけで、これは使えないと捨ててしまえば事故にはならない。しかし、練習を続けて、少し岸から離れることができるようになったら、本当に危険になる。
④マスクの内側の曇がひどい。これはフルフェイスマスクの宿命なので、プロのマスクは空気を吹き付けて曇りをとるフラッシングができるようになっている。これは空気の無駄なので、曇り止め液が大量に必要になる。プロのマスクよりももっと曇りがひどい。
⑤最後にようやく呼吸死腔の問題だが、自分は、5分ぐらいで辛くなった。これについては、もっと試用が必要であるが、10分、20分と続けて呼吸は難しいだろう。苦しくなった時に、スノーケルのようにすぐに口から離して外の空気を吸うことができない。口鼻のインナーマスクを使っても、そのマスクとそれに繋がるスノーケルは死腔だし、インナーマスクの上にはマスクの中に空気を出す弁が付いているから、マスクの中全部に呼気が回る。
なお、まだテストが終わったわけではない。直ぐに縁につかまることのできる、プールでならば、我慢できないこともない。多分数十人のダイバーが面白がって使ってみて、なにか良い解決法を探して、道具にすることができるかもしれないし。スキンダイビングのエキスパートならば、なんとかするだろう。しかし、其のエキスパートは、自分が購入するようなことはしない。無知な子供か素人が購入する。まさか、ダイビングショップが責任を持って売るようなことは無いだろうが。