今、シュノーケリングの事故が多発とかで、問題になっているが、問題にされているシュノーケリング事故のほとんどは海水浴であり、危険と相対する活動であるダイビングとは異なるものだ。
どうも、ダイビング関係者は、シュノーケリング事故をダイビングの世界の出来事と思いがち、思いたいのかもしれない。
ともあれ、ここでは、シュノーケリング事故の大部分は海水浴中のできごとと捉えて考える。
考えがあってのことか、あるいは慣習なのか、海の安全を司る、海上保安部は、シューノーケリング事故をダイビング事故とはカウントしていないようだ。個人的には、シュノーケリング事故をダイビング側に引き込まない方がすっきりすると考えている。
意図して、海水浴の分野に切り込んで行こうというのであれば、それなりの覚悟と準備、そしてシステムが必要だろう。
ひところ、ずいぶんとスノーケリングに熱中した。シンポジウムも企画し、開催したし、提案もした。その時は、ダイビングの側としてのスノーケリングだった。
まだ、船の科学館が全盛時代で、流れるプールは、毎夏、毎日多い日で3000人、少ない日で都心で唯一の海水浴場?として賑わっていた。そこでのスノーケリング体験講習会を企画した。100着のフローティングジャケットを買ってもらった。女性職員2名に、スノーケリング指導ができるように、浦安運動公園での講習の助手をしてもらって、仕込んだ。
諸般の事情があり、実習は、日中に申し込みを受けて、実施は17時から18時とした。夏の18時はまだ充分に昼間だ。
1日100人は無理だとしても、80人ぐらいの日もあるだろう。少なくとも、10人は来てくれるのではないだろうか。なにしろ1500-3000人の人が来るのだから。
2004年、8月1日 撮影、船の科学館流れるプール
緑は、たちまちフローティングベストを脱いだ。もちろん、怒られた。
今ならば、これを読んでいて、それは無理だと分かる人が多いと思う。でも、登り坂の時だったから、無理だとは思わなかった。海水浴をする人の多くがフローティングジャケットを着ければ、海水浴客の事故は激減する。これこそ、僕の使命であり、当時常務理事をつとめていた、社会スポーツセンターの使命だと思った。
真夏の一ヶ月で延べ人数が120人程度だった。延べというのは、リピーターもかなりいたからだ。そのリピーターの一人が、今も一緒に海に行く、大学生に貼った村上緑ちゃんだった。当時、小学校3年制。その緑ちゃんは、たちまち、フローティングジャケットを脱ぎ捨てて遊びはじめた。積極果敢な子、つまりスノーケリングをやろうとするような子は、フローティングジャケットなど性に合わないのだ。
社会スポーツセンターでは、日本スノーケリング協会を作り、つくば大学の吉田先生の書いたテキストができた。テキストも船の科学館で売ろうとしたが、1冊1000円で、緑ちゃんのお父さんが買ってくれただけだった。
体育の方の言葉で、レディネス、が出来ていなければ、むりなのだ。フローティングジャケットは、未だ、海水浴には受け入れられない、スノーケリングをやりたいと思うような子は、スキンダイビングがやりたい。と、その時に思った。
それから、10年の月日が流れて、海水浴にスノーケリングが拡大した。
今、海水浴場で、スノーケルとマスクを付けている人がどのくらいの割合をしめているのだろうか、そして、その中でフローティングベストを着けているのは、どのくらい。相当いい加減でも良いから、%を知りたい。僕のホームである慶良間の古座間味では、スノーケルを持っている人が、70%は、越えているだろう。ジャケットは、20%だろうか。湘南はどうなのだろう。千葉は?茨城は?
誰か、調べた数字があるかな。とても重要なことなので、海洋大学の千足先生に頼んで、学生の卒論にしてもらおうか。今度あったらお願いしてみよう。
海水浴の安全については、10年前に結論をだしている。
だれでも考えることで、海水浴はすべてフローティングベストを着けて、海水浴場の枠の中で行う。枠の外でのスノーケリングは、必ず、リーダー(グループの責任を持つ人)が居て、必要があれば、ガイドに手伝ってもらって、ベストを着けるかどうかは、その時の状況に応じてとする。
海水浴としてシュノーケリングは、僕達のダイビングとはまるで違うものだ。たとえば、海水浴でシュノーケリングをする人たちは、ダイビング雑誌などは買って読むことはない。ましてや、スキンダイビング・セーフティなど手に取ることなどないだろう。安全ということについて、危険のイメージは持っていない。まあ、スキンダイバーでもスクーバダイバーでもそんな人はたくさんいる。辰巳のスキンダイビング練習会に来る人も、僕達のスキンダイビング・セーフティを待ち構えて買ってくれる人と、嫌な顔をする人がいる。とても我田引水だが、嫌な顔をする人は、要注意だと思う。
60年前、水産大学でダイビングを始めた時、ダイビングとは、知的な活動なのだと教えられた。スキンダイビングでも、もちろんフリーダイビングでもスクーバダイビングでも、フィジカルであると同時にメンタルな活動だととらえる人は、余程の馬鹿(自分)でも、生き延びられる。行動するときに考えることがまず大事で安全につながる。