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Channel: スガジロウのダイビング 「どこまでも潜る 」
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大瀬崎 その2 5月4日

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 人生を12のコンパートメントに分けて考えている。区切りだから、セグメントでもよいのだけれど、ダイバーだからコンパートメントとしよう。 0-5歳、5-10歳、10-15歳、15-20歳、20-25歳、そこから先は10歳刻みで、25-35歳、35歳ー45歳、45歳ー55歳、55歳ー65歳、そこからまた5歳刻みになって、65歳ー70歳、70歳ー75歳、75-80歳だ。 80から先のことはわからない。12のコンパートメント一つずつ、別の人間のように思える。
その詳しいことはまた別の機会として、僕は75-80コンパートメントに居る。
75ー80は、水中ではまだ、バリバリでやれるが陸上では、準身体障害者に近い。そのように思わないと危ない。
 大瀬崎、二日目 5月4日の一本目は、マンボウを見に行こうと小久保教授が言い出した。マンボウなんて見られるはずがない。マンボウは大洋をさすらってクラゲを食べている魚だ。と思っている。決して根付きの魚ではない。たまたま、そのあたりに泳ぎよって来ただけだ。マンボウが多い年は、そのあたりにくる確率が高いだろう。なんだか気に入って、しばらく浮いている奴だっているかもしれない。しかし、それはバイチャンスであり、論理的にはマンボウはいない。

        こんなところに、マンボウはいない。

 理論天文学者の小久保教授にそのくらいのことがわからないのか?と言おうと思ったが、老いては弟子に従え、と行くことにした。理屈をこねたが、本当は、エントリー、エクジットが苦労なので行きたくないのだ。まだ、僕が70歳という若さで、CCRのインスピレーションをあきらめたのは、30キロ、ベイルアウトタンクを含めて36キロを背負って大瀬崎の先端で岸からのエントリー、エキジットが無理とわかったからだった。大瀬ばかりではなく、フィリッピンに訓練に行ったら、足を踏み外して墜落したら確実に大けが、もしかすれば即死する階段を上り下りさせられた。僕もかなり乱暴な潜水人生を送ってきたのだが、ここまで乱暴ではない。ダイバーは、減圧症などでは死なないが、手すりの無い階段から岩場に墜落すれば死ぬ。
 外海は波があるだけ先端よりも厳しいが、しかし、10リットルのタンク、ドライスーツ、12キロのウエイトならば、なんとかなるだろう。

 タンクは、水中に浮かべてくれたので、水中で背負う。ボートダイビングで、僕は水面水中脱着の達人だ。しかし、持ってきたBC.は、ショルダーベルトが10cmほど短い。左手が通らないのだ。古い、アポロのプレステージを持ってくればよかった。と思っても後の祭りだ。黒田に手伝ってもらって、水面でBC.と格闘してようやく背負った。今後は、古いBC.をつかうようにしよう。と深く反省した。

 水中は、しばらく、砂地を行くと水深25mぐらいで、段差のような根になっていて、ムチヤギが群生している。ハナダイもいる。マンボウがいるとすれば、頭上25mの水面だ。小久保教授は、もうしわけのように、時々、水面を見上げている。たしか、石川さんがまぐれでジンベイを見たのもこの辺だったはずだから、そういうものが回ってくる場所ではある。しかし、可能性はゼロに等しい。
 それに、もしも、水面近くにマンボウの影が見えたら、全員で浮上するのか。気泡を放出しながら浮上するダイバーをマンボウは待っていてくれるのか、それとも気泡に寄ってくるのか。僕の感では逃げると思うが、
 もちろん、マンボウなんて、いるはずもないから、いらぬ心配だ。心配はエキジットだ。

 先行する小久保は、器用にフィンを脱いでごろた石の上に上がる。黒沢さんもフィンを脱いで上がる。僕はあんなに器用にフィンは脱げない。ドライを着てタンクを背負い、12キロをつけて彼らのように立って脱ぐことはできない。体を横にして脱げば、フィンを脱いだ状態で波にころがされて、溺れる。フィンを流してしまうかもしれない。

    ここを這い上がる。



 這い上がることにした。波打ち際は、かなり波があり、打ち上げられて引き波にもどされないように、体をずりあげる。小久保が素早く、僕のフィンを脱がしてくれたので、何とか立ち上がる。少しよろけたが、彼の手につかまって、石の上を歩く。初心者どうしならば、つかまり、助け合えるのだが、人につかまるのは恥だと思っている。コンクリートの歩道まで来て、タンクを脱ぎおろす。上まで上がってから、ウエイトを置いて取りに戻ろうと、考えたのだが、石川さんが持って上がってきてくれた。

     左が僕、右が小久保君

 要するに、仲間の世話になるのが嫌なのだ。
 小久保と僕の20年余の一緒のダイビングで、こういう世話になることはなかった。
 しかし、80から先のコンパートメントでは、誰かの手を借りることを、スタンダードのエキジットにしなければならないだろう。
 終わってみれば、こんな形で、誰かに助けてもらえれば、リブリーザーも出来たかな、と思ったりする。

 なお、撮影は、バーの先に付けたGoProを先に受け取ってもらったものが岩場に立てかけられて、偶然のように撮れたものだった。

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