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Channel: スガジロウのダイビング 「どこまでも潜る 」
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0430 最新ダイビング用語事典訂正について

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 IANTD の代表を務められている、田中光嘉氏から、最新ダイビング用語事典について、主として酸素中毒、酸素分圧数値についてのご意見をいただいた。
 個人的なことであるが、田中氏とは、古い付き合いであり、仕事の上での協力関係もある。この本でもリブリーザーについての部分の執筆と監修をおねがいしている。ただ、お願いをした時期が編集プロジェクトの後期、終わりに近づいていた時期であり、全般についてみていただく時間が無く、ご意見を聞き議論をする時間が無かったことが残念であるが、それは後述するシンポジウムなどで、できればお話ししていただき議論して補正してゆきたい。
 最新ダイビング用語事典も完璧を目指して、電子原稿で3回、ゲラで3回の校正を行ったが、校正の度に大幅な変更と修正があったために、細部の字句の修正に不備があり、誤字、チェック漏れがいくつか生じた。大変に申し訳ないことであるが、正誤表の挟み込みによる修正と、ホームページ、メールなどによる修正で対応させていただく。
新しい知見による修正などについては、最新ダイビング用語事典を出発点とする問題提起として、日本水中科学協会がおこなうフォーラム、シンポジウムで発表、議論をしていただき、研究会報に収録させていただきたい。
 最新ダイビング用語事典は、ダイビングと海にかかわるほとんどすべてを網羅することを目指しているので、今回の酸素にかかわることだけでなく、多数の同様の指摘があるものと想像できる。できるだけ多くの指摘、問題提起があることを願うが、これらについても、シンポジウムでの議論、研究会報への収録で最終的には対処させていただきたい。
 ここでは、今回の田中光嘉氏のご指摘に対してよって行った修正、および、シンポジウムでの議論への展開について説明したい。
 
 田中氏の指摘
最新ダイビング用語事典17pで
「分圧1.46が低酸素と書いてありますが、明らかに高酸素の間違いです。ここでは酸素分圧が1.46以上で罹患すると書いてありますが、P56ではポールベール効果のところで1.3を超えると発症となっています。テクニカルダイバーなら酸素分圧が1.0以上で発症の可能性があることを教えられます。」原文のまま。
 ①低酸素という語のまちがい。
 ②1.46と1.3が矛盾している。
 ③1.3も、1.0ではないのか
 の3点で、
①の低酸素は、純酸素の誤記であり訂正する。
②の1.46、1.3について、
 現在一般に入手できる、一般ダイバー向けの書籍で、ダイバーが圧力下で呼吸してポール・ベール効果(急性酸素中毒)にならない数値について、確認した。ほとんどすべての書籍をあたったが、ここでは以下にいくつかを示す。
 ☆PADIのエンサイクロペディアでは、4-37で、「動いているダイバーにとっての許容量とみなされる最大酸素分圧は、1.4です。(減圧停止で休んでいる状態のテック・ダイバーの許容限度は1.6)。レクリエーションの深度限界内で、空気を吸っているのであれば、1.4に達することはありませんが、エンリッチドエアを使っているとその可能性がでてきます。」
 ☆潜水士テキストによれば、「脳酸素中毒に罹患し得る最小の酸素分圧はわずか1.3気圧であるとする厳密な学術報告もあるが、これはあまりにも厳格であるとして、潜水態様におうじて、1.4から1.6気圧前後に設定しているものが多い。すなわち、スクーバ潜水では痙攣発作によって、マウスピースが外れて溺死する可能性が高いことから低めの1.4気圧を、一方痙攣発作を起こしても直ちに致命的になるとは考えられないヘルメット潜水や全面マスク式潜水では、1.6気圧前後を上限の酸素分圧とするというものである。」
 ☆潜水医学入門 池田知純 1995 では、p55で、米国海軍のダイビングマニュアルの表を示して、酸素分圧と許容暴露時間について、1.3で無制限、1.6で30分としている。

 そこで、最新ダイビング用語事典 17pの「酸素」について、
 「分圧が1.46以上(低酸素を呼吸して4.6m以上に潜ることに相当)」を「分圧が1.3以上(純酸素を呼吸して水深3mに潜ることに相当)」に訂正する。これは、低酸素は純酸素の誤記であり校正漏れであることと、56pの表記である1.3とそろえることでもある。
 56pの1.3表記については、執筆をいただいている外川先生にも確認をとったが、1.3以下は、まだ定説ではなく、1.4としているところも多いことから、1.3のまま、もしも、1.3以下とするならば、潜水医学専門書で議論されるべきであり、最新ダイビング用語事典は医学専門書ではないので、現状の定説の中での最小値をとればよいとの意見であった。

元来通常の潜水で、空気を呼吸している状態で1.3になることも考えられにくいが、今後、リブリーザーがスポーツとして、一般にも行われる可能性があること、酸素分圧が高いナイトロックス潜水(別の指摘がある)が広く行われていることなどがあり、田中氏の提唱する酸素分圧1.0については、次回のシンポジウムで、ナイトロックス潜水についての課題と併せて、発表、検討するテーマとしたい。

ナイトロックスについての田中氏の指摘は、
「P95のNitroxの記述について、酸素分圧が高いために呼吸が楽で、疲れない。また視野狭窄も起こらないとありますが、楽というのは主観的なことではないでしょうか?確かにそうかもしれませんが、わからないと思います。また、窒素分圧から考えて窒素酔いが起こらない理由はないと思います。ですから、視野狭窄は起こる可能性があると思います。実際のところ、こういった症状が起こることを防ぐためにヘリウムが使われています。
さらに空気潜水の最大深度は窒素によって限界が決まり、酸素ではないと思います。ですから空気の潜水可能水深は安全面からも40msw以浅であるべきではないでしょうか?」
 さらに、実際に疲れないという意見に対して、
「。一般的に言われているのは多くの酸素が体内に溶け込むためと考える人もいますが、空気であっても、少し深く潜れば同じ分圧になることを考えると酸素ではなく、窒素が少ないから起こるのか?といった具体的な現象が科学的井解明されていないのではないかと言いたかったわけです。」
また、ナイトロックスで酸素分圧の最大許容値を1.0とすると、32%酸素で、許容深度はおよそ23mになる。これらの問題も含めて、シンポジウムでの発表と検討テーマとさせていただきたい。
 
 誤字については二つの指摘をいただいている。
☆「P145、P146に出てくるOUTではなくOTUですね。」
これは、OTU=(Oxgen Tolerance Unit) であり、誤字であり、訂正する。
 
☆「P51のM値に関してですが、Mの意味がこちらではMaximum allowable nitrogen value となっていますが、私がDr. R.W.Hamiltonからいただいた資料には、
Workman 1965, introduced the concept “ delta p” for gas pressures which was easier to handle than ratios and fitted the data better. He introduced “M values” (the M is for the Maximum tolerable gas tension (Partial Pressure).
となっていて、Mの略が違っています。Maximum allowable nitrogen valueがどこの英語文献に載っているか教えていただけますか?)
について、執筆者に確認したところ、「私は元々、Maximum allowable pressure valueという英語を使っています。どなたかが校正されたのではないでしょうか?」

ということで、M値の英語文を 
M value: Maximum allowable pressure value:Maximum tolerable gas tension
と訂正する。

もう一点 P106のフルフェースマスクについて、意見があります。
「フルフェースはマスク内のCO2濃度が上がりやすく、深いところで使用するには口鼻マスクがないと危険だということを書くべきで、深い水深ではフルフェースマスクを使うというのは誤解を招くと思います。」
 同じページの中に、口鼻マスクの説明があり、「口鼻マスクを使わないと炭酸ガスが蓄積してしまう。」という記述がある。構成上、語を分けて短い説明にしたいと考えたためにこのように分かれたものである。
フルフェースマスクの性能にもよるが、それぞれのマスクについて、何メートルぐらいから、口鼻マスクが必須になるか検討した結果の表示が必要であろう。というのは、フルフェースマスクが映画、テレビなどで、顔をしっかり出したいという用途に使われることがおおいのと、声の明瞭化も要求されることが多い。次回のシンポジウムでは、デマンドレギュレーターを付けたフルフェースマスクについての発表も予定しているので、これも検討したい。

まとめると、指摘をいただいて訂正する部分は
17p 酸素
「分圧が1.3以上(純酸素を呼吸て水深3mに潜ることに相当)のガスを呼吸すると酸素中毒になる可能性がある。」

p145,146
「OUT はOTU とする。」

P51のM値
M value: Maximum allowable pressure value:Maximum tolerable gas tension

田中氏には、幾つかのご指摘をいただいたことを感謝するとともに、12月、もしくは
来年1月に行われるシンポジウムで、例えば、「混合ガス潜水」について、適切なテーマで講演いただくことをお願いする。

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