11月28日、今度、改正される高気圧作業安全衛生規則の説明会ともいうべき「潜水作業の安全対策せみなー」中央労働災害防止協会主催 に行ってきた。今日29日の安全潜水の会は、予定を入れるのを失念してしまい、欠席、12月のシンポジウムの勧誘があるから、行かなければいけなかったのだが、他のメンバーが行っているし、チラシも渡してあるのだから、上手くやってくれるだろう。 潜水士の方は、北海道の工藤和由君に誘われて、会費を12000円も先払した。わざわざ北海道から出てくる工藤君とも久しぶりに会える。工藤君と共著で、潜水士試験の受験本を書いている。規則が改正になれば、受験本も書き直すか増補しなければ、いけない。そのことのリサーチも重要だ。
まず、演題の1
「高気圧作業安全衛生規則の改正について」
労働基準局、安全衛生部、労働衛生課 中央産業安全専門官、戸田剛 氏
改正の概要
①減圧の方法、改正前は空気を呼吸して減圧する。空気以外は使っては行かないことになっていた。そして、減圧表も規則で定めたものを使用することになっていた。改正後は、空気以外、酸素も呼吸できることになり、所定の計算式、もしくはより安全な計算式で事業者が設定するか、一般に公表されているものを使用できることになった。
減圧をするときに酸素を呼吸させることは、もう遥か昔から世界で行われていることであり、日本でも、特にある現場に限って特別に申請すれば、例えば海底居住計画、飽和潜水等、では許可になっていた。僕のスガ・マリンメカニックなどでは、20年ほど前、魚礁の調査で深い潜水が続いたときには、もぐりで、3mで純酸素を呼吸したこともある。それが認められるわけだから、当然である。
減圧表については、日進月歩してきた、潜水医学の世界であり、減圧理論も一つだけではなくいくつかあるのに、規則で表を定めてしまう事は、適切ではないと、潜水医学関係者も、現場のダイバーも思っていた。レクリエーショナルダイビングでは、もう30年も昔、石黒理事長の時代から、DCIEMと言うカナダの減圧表を全日本潜水連盟では使っていて、そのスレートの使用許可をカナダから受けており(有料だった)そのスレートをカナダに逆輸出していたこともある。今度の改正では、ダイブコンピューターなどに多く使われている、スイスのビュールマンの計算式が規則に書き込まれていて、この計算式から事業者が各自の潜水について計算するか、あるいは公表されている減圧表を選んで使って良い。その条件としては、このビュールマンよりも安全率が高ければ良いということになった。事業者が自分で計算するという事は、拡大解釈すればダイブコンピューターを着けて潜っていれば、毎度計算しているわけだからよしということなのだろう。また、テーブルとしてはDCIEMが推薦されている。
これに伴って、規則の減圧表は撤廃された。
潜水士の国家試験について予想するならば、減圧表関係の問題が無くなり、半飽和組織の窒素分圧の計算、M値(許容過飽和分圧計算]などが出されて、考え方によってはより難しくなる。計算式は見てだけで蕁麻疹が出る、僕のような人種にとっては、かなり、一時的にではあるが苦労になるだろう。良いことだと思う。
②呼吸ガスについて、
これまでは空気だけであったが、混合ガス、ナイトロックス、トライミックス、ヘリオックスが規則に組み込まれて来て、空気潜水と混合ガス潜水を分けて考える、つまり両者認めるわけで、之等も、レクリエーショナルダイビングでは当然の事であり、すでに普及している方法と知識を追認するかたちである。
混合ガスを認めることにより、これまで空気潜水が、表の上では90mまでみとめられていたものが、40mが最大水深になり、それ以上はヘリウムが混合されたガスを用いることになる。
これに伴い、呼吸用ガスの分圧の制限が規則に書き加えられた。酸素、窒素、二酸化炭素などの分圧である。
大きな変更点はこれだけだが、次に改訂される潜水士テキストで、これらの一般人にはわかりにくいことをどのように説明してくれるのだろうか、という事が、問題、ポイントである。
演題の2
「新しい減圧浮上安全基準の考え方」
東京慈恵会医科大学、・日本潜水協会
池田知純
この人の書いた、潜水医学入門、潜水の世界、は、お医者さんの書いた本としてはわかりやすく、引用文献も明確であり、最新ダイビング用語事典を作る時など、大いに参考になった。
減圧理論とかM値の考え方などを説明されたが、新しいテキストの潜水医学のセクションは池田さんがかくとおもわえるのだが、テキストに書いたことから試験問題がつくられるという配慮はほとんどされない人なので、どうなるか心配ではある。
演題の3
「空気潜水はどう変わるのか?」
株式会社潜水技術センター 望月徹
この人が潜水士テキストのオペレーションの部分をこれまで担当してきている。新しいテキストでも担当するであろうから、この発表からテキストをある程度類推できるかもしれない。
この人の特色は、もちろん理論的には詳しいし、現場も自分がかかわったことについては詳しい。しかし、自分の視点以外については良くわからない。これは誰でも同じだが、せめて、何人かの人がディスカッションしてテキストを書いてくれれば良いのだが、これまでのテキストでは、まったくそういう様子は見られなかった。
今回は、やたらにナイトロックスを使用した送気潜水について詳しく話していた。そのくせ、送気源、どのようにしてナイトロックスを作るか、現場での対応については述べていなかった。受験問題としては等価空気深度などをテキストに書くであろうから、そのあたりが出てくるとおもう。
演題の4
「混合ガス潜水法に必要な基礎知識」
防衛医科大学校脳神経外科 和田孝次郎
この人だけが現役のお医者さんだ。話は分かりやすかった。テキスト作成にどういう風にかかわるのか、興味がある。
この規則改定は平成27年4月1日だから、4月の国家試験は、改正後のテキストから出題される。そこで逆算すれば、年が変わり、1月頃に発売されなければ、準備に間に合わない。JAUSでは、新しいテキストについてのフォーラムをやりたいと思っている。工藤君とも、その話をしたが、やはり、4月と7月、2回の試験を経なければ、論じられない。4月の試験は受けに行かなくては。何人か学生を連れて受けに行こう。学生ではないけれど、受験研究家であるらしい、鈴木あやの さんをコンサルタントにお願いしようかと考えている。
まず、演題の1
「高気圧作業安全衛生規則の改正について」
労働基準局、安全衛生部、労働衛生課 中央産業安全専門官、戸田剛 氏
改正の概要
①減圧の方法、改正前は空気を呼吸して減圧する。空気以外は使っては行かないことになっていた。そして、減圧表も規則で定めたものを使用することになっていた。改正後は、空気以外、酸素も呼吸できることになり、所定の計算式、もしくはより安全な計算式で事業者が設定するか、一般に公表されているものを使用できることになった。
減圧をするときに酸素を呼吸させることは、もう遥か昔から世界で行われていることであり、日本でも、特にある現場に限って特別に申請すれば、例えば海底居住計画、飽和潜水等、では許可になっていた。僕のスガ・マリンメカニックなどでは、20年ほど前、魚礁の調査で深い潜水が続いたときには、もぐりで、3mで純酸素を呼吸したこともある。それが認められるわけだから、当然である。
減圧表については、日進月歩してきた、潜水医学の世界であり、減圧理論も一つだけではなくいくつかあるのに、規則で表を定めてしまう事は、適切ではないと、潜水医学関係者も、現場のダイバーも思っていた。レクリエーショナルダイビングでは、もう30年も昔、石黒理事長の時代から、DCIEMと言うカナダの減圧表を全日本潜水連盟では使っていて、そのスレートの使用許可をカナダから受けており(有料だった)そのスレートをカナダに逆輸出していたこともある。今度の改正では、ダイブコンピューターなどに多く使われている、スイスのビュールマンの計算式が規則に書き込まれていて、この計算式から事業者が各自の潜水について計算するか、あるいは公表されている減圧表を選んで使って良い。その条件としては、このビュールマンよりも安全率が高ければ良いということになった。事業者が自分で計算するという事は、拡大解釈すればダイブコンピューターを着けて潜っていれば、毎度計算しているわけだからよしということなのだろう。また、テーブルとしてはDCIEMが推薦されている。
これに伴って、規則の減圧表は撤廃された。
潜水士の国家試験について予想するならば、減圧表関係の問題が無くなり、半飽和組織の窒素分圧の計算、M値(許容過飽和分圧計算]などが出されて、考え方によってはより難しくなる。計算式は見てだけで蕁麻疹が出る、僕のような人種にとっては、かなり、一時的にではあるが苦労になるだろう。良いことだと思う。
②呼吸ガスについて、
これまでは空気だけであったが、混合ガス、ナイトロックス、トライミックス、ヘリオックスが規則に組み込まれて来て、空気潜水と混合ガス潜水を分けて考える、つまり両者認めるわけで、之等も、レクリエーショナルダイビングでは当然の事であり、すでに普及している方法と知識を追認するかたちである。
混合ガスを認めることにより、これまで空気潜水が、表の上では90mまでみとめられていたものが、40mが最大水深になり、それ以上はヘリウムが混合されたガスを用いることになる。
これに伴い、呼吸用ガスの分圧の制限が規則に書き加えられた。酸素、窒素、二酸化炭素などの分圧である。
大きな変更点はこれだけだが、次に改訂される潜水士テキストで、これらの一般人にはわかりにくいことをどのように説明してくれるのだろうか、という事が、問題、ポイントである。
演題の2
「新しい減圧浮上安全基準の考え方」
東京慈恵会医科大学、・日本潜水協会
池田知純
この人の書いた、潜水医学入門、潜水の世界、は、お医者さんの書いた本としてはわかりやすく、引用文献も明確であり、最新ダイビング用語事典を作る時など、大いに参考になった。
減圧理論とかM値の考え方などを説明されたが、新しいテキストの潜水医学のセクションは池田さんがかくとおもわえるのだが、テキストに書いたことから試験問題がつくられるという配慮はほとんどされない人なので、どうなるか心配ではある。
演題の3
「空気潜水はどう変わるのか?」
株式会社潜水技術センター 望月徹
この人が潜水士テキストのオペレーションの部分をこれまで担当してきている。新しいテキストでも担当するであろうから、この発表からテキストをある程度類推できるかもしれない。
この人の特色は、もちろん理論的には詳しいし、現場も自分がかかわったことについては詳しい。しかし、自分の視点以外については良くわからない。これは誰でも同じだが、せめて、何人かの人がディスカッションしてテキストを書いてくれれば良いのだが、これまでのテキストでは、まったくそういう様子は見られなかった。
今回は、やたらにナイトロックスを使用した送気潜水について詳しく話していた。そのくせ、送気源、どのようにしてナイトロックスを作るか、現場での対応については述べていなかった。受験問題としては等価空気深度などをテキストに書くであろうから、そのあたりが出てくるとおもう。
演題の4
「混合ガス潜水法に必要な基礎知識」
防衛医科大学校脳神経外科 和田孝次郎
この人だけが現役のお医者さんだ。話は分かりやすかった。テキスト作成にどういう風にかかわるのか、興味がある。
この規則改定は平成27年4月1日だから、4月の国家試験は、改正後のテキストから出題される。そこで逆算すれば、年が変わり、1月頃に発売されなければ、準備に間に合わない。JAUSでは、新しいテキストについてのフォーラムをやりたいと思っている。工藤君とも、その話をしたが、やはり、4月と7月、2回の試験を経なければ、論じられない。4月の試験は受けに行かなくては。何人か学生を連れて受けに行こう。学生ではないけれど、受験研究家であるらしい、鈴木あやの さんをコンサルタントにお願いしようかと考えている。