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Channel: スガジロウのダイビング 「どこまでも潜る 」
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0112 ヘルメット式と種市高等学校

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2月2日のシンポジウム、岩手県種市高等学校の先生においでいただいて、話をしてもらう。岩手県種市高校はヘルメット式潜水機をアッピールポイントにしている。「南部もぐりの伝統を守る」テレビ番組「あまちゃん」にも出てきて、南部もぐりのちょっとしたブームである。そして、人々は「南部もぐり」というと、それはヘルメット式潜水機であり、ヘルメット式潜水機で潜るヘルメットダイバーの代名詞のように思っているだろう。
ヘルメット式潜水機は斜陽を通り越して、いまは落日寸前であり。かつてヘルメット式潜水の独壇場であった、港湾工事の作業潜水も、潜水士の用語でいえば応需弁をつけた全面マスク型送気式潜水機、俗称で言えばフーカー潜水機が主力である。潜水作業船は、ヘルメット式の装備で、フーカーで潜れる。工事潜水のフーカーは背中に4リットルのタンクを背負っているから、コンプレッサーが止まり、空気の供給が停止しても、背中のタンクの空気をスクーバと同じようにして呼吸して、ホースは切り離して、浮上脱出することが出来る。つまり二通りの空気供給方式を持っている。軽量であり、一人で装備の装着が出来、一人で船の上に上がってくることができる。ヘルメット式潜水機は重く、アシスタントである綱もちに手伝ってもらわなければ装備を着ることも脱ぐこともできない。空気の消費量でもヘルメット式の方が多い。コスト的に何一つヘルメット式が優れている部分は無い。

4リットルタンク付のフーカー

   一番簡単なフルフェイスマスクを使ったフーカー潜水器


 ヘルメット式が今後、滅びゆく潜水機であることは間違いない。それを売り物にして行くという事は、どういうことだ。どこに目標があるのだろう。シンポジウムでの僕の質問点である。

 しかし、若い高校生が、訓練を受けている姿を見ると、溌剌としている。何かが変わるのではないかと思う。僕が東亜潜水機にいたころとは、装備が変わっている。そして、こんな風に、中性浮力で浮くことは、潜水士テキストではいけないとされている。水に入ったり出たりすることについては、難儀であり鈍重だが、ヘルメット式は水中では決してのろくは無い。素早く動くこともできる。水中に中世浮力で浮くこともできる。ただし、潜水士の規則では、ヘルメット式はバランスを失うと、水面まで吹き上げられる。態勢を立て直すことが出来ずに、潜水服が風船のように膨らんで、水面に飛び出す。墜落は、浮力を失うと石のように海底に落下する。だから、水面への上り下り、は潜降索というロープを伝わって、行わなければならない。その点を学校ではどういう解釈をしているのだろう。もしかしたら、新しい方式の潜水服を使って、新しいテクニックで潜水しているのかもしれない。
一方で、先日東亜の佐野社長にきいたところでは、僕のほぼ同期のヘルメットつくりの職人、山沢君が死んでしまって作る人が無くて困っているという。もはや、美術工芸品のようなヘルメットは作れないのだ。
どういうことで種市高校の潜水教育はヘルメット式をやっているのだろう。

      新品のヘルメット

      金属製ハードハット

僕の解釈はこうだ。間違っているかもしれないが。ヘルメット式潜水の習得は難しい。スクーバのC-カードのようなわけには行かない。少なくとも一年はかかるだろう。その難しい潜水機を使うこなすことができれば、それと平行してスクーバとスキンダイビングをやっていれば、すべての潜水機を難なく使いこなすことができる。そして、転べば風船になって吹き上げられてしまうヘルメット式でバランスをとることを覚えれば、これも度の潜水にもあてはめられる。そして、できる人が少ない技術を身に着けていることは、誇りになる。教育効果は大きい。

そして、美術工芸品の金属製のヘルメットが作れなくなり、大量生産型のヘルメットを作ったとする。このヘルメットは、ハードハットと呼んで、全面マスク式の作業用としての高度なものだ。これもヘルメット式を覚えていれば難なく使いこなせる。
だから、次の世代の潜水機になっても、またその次の世代の潜水機になったとしても、ヘルメット式の教育をしていれば、通用する。
そんなヘルメット式だが、今は徒弟制度の時代ではない。ヘルメット式をもしも習い覚えようとするならば、日本では、種市高校の施設でなければできない。
そして、ヘルメット式潜水の練習は楽しいだろう。そして、就職率も絶対に良いはずだ。楽しく練習できて、3年間、そして海の仕事に付けるのならば、人生やり直すならば僕でもこの学校にはいりたい。これは、僕の考えであり、本当のところはわからない。2月2日のシンポジウムで質問し答えてもらうか、あるいは、同じ答えをすでに用意している、僕の考えが当たっているかもしれない。


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