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Channel: スガジロウのダイビング 「どこまでも潜る 」
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0821 潜水の歴史 10 ヘルメット潜水③

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竜宮城、観客席から視た。


 ダイビングの歴史を企画し、梗概をかいているときは、あんまり脱線せずにシンプルにまとめようとおもっていた。
 しかし、原稿を書くための参考書として、「人類20万年 遙かなる旅路:アリス・ロバーツ」 などを読むと、そして、大場先輩の器械潜水漁業史を読むと、余談にあふれていて、その余談がおもしろくて読み進んでいる。とりあえず、僕も余談を書いて進んで行こうと思い直した。余談が、おもしろくなければ、出版原稿の最終的な整理の時に、カットするか、書き直せば良い。


 1961年のよみうりランド竜宮城のことは余談を何度もかいている。第二部では、余談ではなく正式?に書くつもりでいるが、
 その竜宮城で、近藤令子プロデューサーが、ヘルメット式潜水を出演させたいといいだした。水中、潜水といえば、素人は、ヘルメット式潜水を思い浮かべる。浦島太郎が竜宮城への道すがら、ヘルメットダイバーに出会うのだ。令子プロデューサーのイメージ野中で、ヘルメットダイバーは、タイやヒラメの舞い踊り、とイーブンだろう。
 僕は無理だろうと言った。ヘルメット式潜水は歩く潜水機だ。竜宮城の水中舞台に海底は観客席からは、見えない。舞台すべてが無重力の水中で舞う。水中で空中というのもおかしいが、中空での舞いなのだ。ヘルメットは、キリップ(頭で押す排気バルブの操作で浮沈できるが、中性浮力でバランスを失えば、吹き上げ、墜落という恐ろしい結果がまっている。米国海軍では、ヘルメットに自由降下、浮上を許さない。ステージに乗って、つり下げ、つり上げる。
 ヘルメットで水中に浮いていて、バランスを失い、落下墜落状態になると、水圧の増加に、送気式の送気式が間に合わなくなる。そして、墜落深度が深ければひどいスクイーズになる。スクーバでドライスーツを着ている時にも、スーツスクイーズが起こるが、これは、身体をつねられる程度のものだ。ヘルメット潜水では、ヘルメットが固いから、ヘルメット部分が隠圧になり、身体中の血が、ヘルメットの中に集められ、顔が巨大化して、眼が飛び出してパンクする。恐ろしいことなのだ。
 そんな説明をしても、芸術家の令子さんは、聞かない、とにかく、東亜潜水機の三沢社長に相談してみるという。
 そして、三沢社長の商会でやってきたのが、御宿、岩和田の大野さんだった。
 僕より、少し年上だったが、現役のバリバリの器械根ダイバーで、当時、3隻だったか、6隻だったかの潜水船の一隻のダイバーだ。
 ヘルメットダイバーは中性浮力が危ない、などという常識は簡単に覆し、竜宮城への途上、浦島を襲ってくる、カリブ海の海賊と手にした銛で渡り合う。海賊を撃退して、勝利のロックを中性浮力で踊るのだ。浦島太郎が亀に乗って、竜宮城への道すがら、カリブの海賊が出てきて、ヘルメットダイバーと戦う。ハチャメチャな話だが、水中は夢の世界であり、なんでもありのミュージカルなのだ。
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    竜宮城 付帯裏 左側がエアーステーション、ダンサーはエアーステーションから浮き上がってくる。

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 今、つくづく思うのだが、そのころ、今のようにウエアラブルカメラで動画が撮れていたらどんなに良かったことか。この時の映像が手元にない。


 大野さんは、妹の海女さんも呼び寄せた。竜宮への道程で、海女さんもでてくるのだが、それまではダンサーの海女さんだったが、本職の海女がやってきた。
 妹さんは本当に素敵な美人だった。
 近藤令子プロデューサーは、もったいながって、乙姫様の舞いと演技を彼女に教えた。
 漁のシーズンが来て、大野兄妹が御宿に戻る前、海女さんの乙姫様が出演した。もちろん、海女としてではないから、観客は彼女を海女さんだとはおもわなかっただろう。


 それから月日が流れ、1980年代の終わりごろ、僕は、NHKの番組の撮影で、御宿から船をだしたことがあり、大野荘に宿泊した。大野荘は、大野兄妹のお家であり、御宿で一番の磯料理の宿になっている。ただ、乙姫様は、横浜の方に嫁に行かれ、若くして亡くなられたと風の便りに聞いていた。このことを確認することになってしまった。
 大野荘にはもう一度泊まった。御宿にある海洋生物研究所の仕事をしたときで、このときは、前に来て顔つなぎが出来ていたので、下にも置かないごちそうで、思い出話をたくさんした。


 今、大野荘はどうなっているかなーとネットで
調べた。アワビの宿として大繁盛の様子で、安心したが、もう一度行く機会があるだろうか。


 もう少し、ヘルメットダイバーと中性浮力の話をしよう。ステージ、台に乗って、上下、潜降、浮上するアメリカ式のヘルメットは、ウエイトが肩掛け式のウエイトベルトである。これを米国型としよう。日本のヘルメットは、英国式だ。シーベ・ゴールマンは、英国の会社だから、その型が元祖の型である。ヘルメットと潜水服を繋ぐ胸当て、ブレスト・プレート、日本式の呼び名はシコロ(武士の兜の胸当て部分の呼び名)に、前後に振り分けて、大きいウエイトが付けられている。米国式がこの英国式を廃してウエイトベルトにした理由は、知らない。なぜだろう。

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           映画「ダイバー」のヘルメットダイバー
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              アメリカ式
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               ウエイトベルト
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          イギリス式、胸にウエイトを吊り下げている。


 アメリカ映画の「ザ・ダイバー」:2000年に公開された20世紀フォックス作品、
 大好きな映画で、ファイルにして残し持っている。ロバート・デ・ニーロが、鬼軍曹になるヘルメットダイバーの映画で、米国海軍のヘルメットダイバーの作業の様子、養成所のことがよくわかる。もっとも、映画だから、最後は中性浮力で、ヘルメットが泳ぎ回る。
 この映画のオープニングだが、ダイバーを乗せたステージを吊り降ろそうとして、ウインチミスで、ダイバーを落っことしてしまう。なにやっているんだか、という映画だが、それを助けにいくロバート・デ・ニーロが、三角のデスコのマスクを使っていたり、なら、はじめから,マスクで行かんかい。と文句を付けたくなったりもするが、アメリカ海軍のヘルメット式ダイビングが見られて、おもしろい。

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