ヒューリスティックス
☆最悪の事故が起こるまで人は何をしていたのか ジェームスRチャイルズ 高橋健次訳
草思社文庫
前に、といっても2017年発行の本だから、3年前、読み終えた本、栞を入れて、マーカーで何カ所か印がつけられている。
「リサーチ・ダイビング」の内容ともかかわるので、書き写した。
①
ほとんどの人間は、統計に基づくのではなく、自分が実際に経験したことによって自分の確率を決めている。これを心理学者は、「ヒューリスティックス」の適応と呼んでいる。ヒューリスティックスとは、世界の営みに関して、われわれが受け入れる一般法則であり、それは自分自身が目撃した種々のものごとや、親族・友人といった信頼できる情報源から聞いた雑多な情報から導き出される。ヒューリスティックスは、あらゆる情報のなかで最も信用できるものーー自分の目で見た事実と、信頼する相手からの証言にもとづいているように見えるので、だれもがそうした信念に大きな価値を認めている。とはいえ、各人のヒューリスティックスは、時間とともに変化する。新しい情報が加わって、元の情報が押し出されたり、かっては鮮明だった記憶が薄れたりするからだ。
②
ひとつの専門分野で長期間はたらくことができる人たちは、直感にきわめて近いものを発達させることができる。クラインはこの技量を「現場主義的意思決定」となづけている。そうした人間は、非常事態が起こると、その場の事実を記憶の中のモデルにあてはめることによって、まずまずの作戦をすばやく考え付くことができる。現状がモデルにあてはまらない場合も、そうした人たちは、未経験の地に自分が立っていることを自覚しながら、本来のやり方とは、別のところで当意即妙の案を見つけ出す。
一方 ヒューリスティックスについてウィキペディアで見ると、
ヒューリスティクス(英: heuristics, 独: Heuristik[注釈 1])または発見的(手法)[1] [2]:7 [3]:272とは、必ず正しい答えを導けるわけではないが、ある程度のレベルで正解に近い解を得ることができる方法である。発見的手法では、答えの精度が保証されない代わりに、解答に至るまでの時間が短いという特徴がある。
主に計算機科学と心理学の分野で使用される言葉であり、どちらの分野での用法も根本的な意味は同じであるが、指示対象が異なる。すなわち、計算機科学ではプログラミングの方法を指すが、心理学では人間の思考方法を指すものとして使われる。なお、論理学では仮説形成法と呼ばれている。
ちょっと視点がちがうようだ。
自分の考えをいうと、人は、ダイビング事故で起こるようなとっさの事態では、論理的に考えて判断を下す時間がない。経験から得た判断、直感で行動する。それは、個人のものなのだが、知識として獲得できる部分もある。
知識と経験の相関は、個人差も大きく、一概に結論できることではないが、車の両輪と言ってよいだろう。