大井中央埠頭公園
お台場と中央埠頭公園の位置関係 赤丸がお台場 黒丸が中央埠頭公園
グーグルアースは、本当に便利だ。中央埠頭公園は、京浜運河に面している。
この大井埠頭公園も5月に潜った城南島も初めて来た。こんな公園があったのだ。
大田区の人たちにとっては憩いの場で、休日にはたくさんの人が集まる。
ぼくは、定点にしつこく、継続的に潜るスタイルだから、お台場がオリンピックで潜れなくなるという事態になり、尾島さんががんばって、ここのダイビング許可をとりつけなければ、ここには来なかっただろう。
運河に面してポンツーンがあり、ポンツーンから飛びこむのも有りだが、上がる梯子がないから、その左手の岩場からエントリーする。現在、腰の筋肉痛の身として、上がり降りはつらく、尾島さんの介護をうけないとエントリーできない。
85歳は、陸上ではバリヤフリーの身だ。
図の赤い線が、潜った軌跡である。左手のちょっとした湾処になっている部分を潜る場所に想定していた。砂浜になっているので、エントリーエキジットが楽にできる。残念ながら、現在この浜は立ち入り禁止。回り込んで行くしかない。
戻ってきて、エントリーした岸のすぐ下の斜面にマハゼが多い。斜面にアカオビシマハゼの幼魚が居た。そして、斜面にイシガニが居て、石の下にかくれた。斜面の下2ー3mの海底、泥だがマハゼが多い。
何と言うこと。エントリーしたすぐ先、10mも行かない位置が魚のポイントだったのだ。
最近、尾島ママ(尾島雅子奥様)にウエアラブルカメラを仕込んでいる。彼女は素晴らしいリサーチ・ダイバーで、2017年の報告書では、魚類について書いている。生物を見つける能力は僕の倍ある。絵を描くセンスもある。カメラを毛嫌いしている。5月31日は、スチルを撮らせようとして失敗した。6月7日は動画にした、動画にしてラインBを撮らせた。まあまあ、良いショットもあったので、今日、そのメディアを持ってきて渡した。自分の撮ったものを見るのが一番わかりやすい。ライトに取り付けたカメラをこの日も持たせた。彼女が写真付きで、魚類について書いてくれれば、良い。他にも何人か、ウエアラブルカメラらを、自分のカメラとは別に持ってもらい、魚の数と時間を集計する。うまくいくかどうか?
メンバーの臼島さんが、フェイスブックに何だか得体のしれないホヤを撮って、「調査中」とタイトルを付けた。そうなのだ。調査中という意識、意図をもってもらうことが、僕らの活動の第一歩なのだ。やがて、それぞれが何かのテーマを持って調べてくれるようになるだろう。もちろん、そうならなくてもかまわない。ただ、そうなった方が面白いだろう。いい例が、このグループの中心である尾島さん、歯科医だが、環形動物の分類では大家だろう。きっと。
戻ってきて尾島ママの撮った映像を見た。エントリーした直後にアカオビシマハゼの群を撮っている。僕が戻ってきて、下から上を見上げて、良いと思った場所を上から見下ろして撮っている。こちらの方がいい。残念なことにライトをスポットにしてしまっているので、写真としてはNGだが、調査だから写真としての質は問わないと言ってある。しかし、せっかくだから、美しい方が良い。今度はライトを変えて渡そう。僕の使っている、LCDの多灯が、良いだろう。
★★★
以下
6月7日のお台場調査、東京都港湾局に出した。僕の速報(ラインC)と、尾島雅子の報告、ラインB付近を載せる。
自分の記録を残しておくためだけのものであるから、付録のようなものである。
お台場 覆砂区域モニタリング&生き物調査 速報としてまとめる。 日本水中科学協会 須賀次郎 調査の方法 100mの巻き尺を海底に引き、ラインに沿って移動撮影(動画)する。 他に調査メンバー(今回は尾島雅子)に撮影日時が画面に記録されるウエアラブルカメラを渡して、できる限り撮影位置がわかるようにして動画撮影する。 図の1ー1が従来の調査区域であり、23年間調査と継続している。今回から覆砂区域のモニタリングということで、図の1ー2に示すようにお台場海浜公園海底のほご全域に調査区域を拡大し、ラインA ラインBを計画した。 5月31日にラインAを6月7日にラインBの調査を行うように予定した。 5月31日にラインA調査をおこなったが、100mの範囲では、覆砂のイメージ、撒かれた砂が海底を覆い、底棲生物は覆われて見えない、という状況ではなかった。 覆砂について、その区域の詳細な図、および、どのような砂が撒かれたのかという事前情報は皆無だったので、おそらくはラインAは、覆砂域に届かなかったのであろうと考え、6月7日の調査では、新たにラインCを設定し、グループを二つに分けて、ラインBとラインC1の調査を行った。ただしラインの用意が1本だけであったことから、Bはラインを引かず、B付近をできるだけラインのように、基点と終点を想定して撮影調査をおこなった。 以下、調査の速報である。 なお、速報であることから、撮影結果を分析してスチルに抜き出す作業は行う時間がなく、ここでは、動画の説明のみとなる。 調査の行われた5月下旬から6月上旬は、例年赤潮が発生して、透視度は20ー50cmになる。このライン調査には少なくとも1mの透視度がほしい。全体像については、7月 8月 さらに冬季1月2月の調査を待つことになる。しかし、覆砂による生物への影響、硫化水素の発生状況などについては、直後、及び夏期の無酸素状態の調査が必須であり、今回の調査となった。 なおこの報告は速報であり、学術的な監修も受けていないので、勘違い、間違いも多々あろうかと考える。ただし、添付した動画資料は生の記録であり、その意味で正確である。 5月31日 ラインAについてこのライン調査手法をこのような悪条件(透視度20cm以下)で行ったことは無かったのでので、不満足なものであるが、以後のこのような条件での撮影調査手法改善の資料にはなる。 使用したカメラはAKASO brave で撮影した時間表示があ右下方に表示される。映像は3分間隔のセグメントに分けられる。以下 シーン①②③と表示する。 ① スタート 途中浅瀬にいたイサザの群が写っている。スタート地点は 大きな建屋の北端あたりである。図に示したラインの位置は正確ではない。 なお便宜的に、ラインAのスタート岸を、北東岸ラインCのスタート岸を 北西岸 ラインB付近を南岸と呼ぶことにする。 ②従来の人工砂浜の延長であり、砂の上にうっすらと泥が被さっている。特筆するのは32m点あたりに30cm以上のクロダイが寝ていた。マハゼらしい小魚が逃げる。 大型のツバクロエイの一部?が写っている。 ③43mあたりでホンビノスを掘り出した。 46mあたりから、コオニスピオ(環形動物:ゴカイの類)の棲管が散見される。カタユウレイボヤが付着した、ブロックなどが見られることから、覆砂域ではない。52m ④52mあたりから、貝殻混じりの礫になり、覆砂域ではない。 コオニスピオの棲管が密集する。62m ⑤ 74m このあたり、コオニスピオの密集があり、手で掬ってみると小粒の礫であり、覆砂ではないと判断したのだが、次にラインCで見ると、このような状況の部分が多かったので、これが覆砂の状況なのかもしれない。83m ⑥ 100m終点 以後のシーンは帰途であり、マハゼがいるかどうか撮影しながら戻っている。 6月7日 ラインC ラインCは、北西岸のほぼ中間、杭に浮輪が吊ってある位置を基点にしている。 ① 16m点 から 22m 表面に薄く泥が覆っていて下は小礫 スピオが生えているというのが覆砂の常態であるとすれば、このあたりも覆砂である。 大きな石が埋まっていた。礫からスピオが生えている。覆砂か。 このあたりが覆砂だとすると、牡蠣の群生も埋まってしまっていることになる。25m ② 黒いヘドロが表にでている部分があった。 カタユウレイボヤが表にでていた。覆砂と思われる堅く締まった小礫の上を手を滑らせて行く。ところどころにヘドロの黒いような縞がある。掬ってみると礫である。小礫もヘドロ化する? 44m ③56m堅くしまった砂の上に泥が乗っている。スピオが生えている。 ④ 平坦な覆砂 20cm大の石にスピオが付いている75m ⑤スピオ群生 82m 小礫を掬ってみる。87m ⑥96m 平坦、少し透視度がよくて1mほど見える。終点 終点の周辺を周回してみる スピオ群生 水面にでる。 ⑦省略 以後⑧から⑪と北東岸に向かう。 ここまで、これだけ見たことで何も言えないが、この覆砂によってお台場水中、海底の生態系に大きな変化が起こったことはまちがいない。 覆砂のどの部分が何時枕められたのか。また砂の粒度などの資料がないが、例えば2ー3月に投入されたとして、お台場全域の海底がコオニスピオに覆われたことになる。その早さは、驚異的に思われる。また、5月になれば、必ず見られた硫黄細菌のマットがほとんど見られない。硫黄細菌がスピオのとって代わられた。これがどのように変化変転していくのか、またこの変化が魚、カニなどにどのような影響があるのか。硫化水素が消えたとすれば、好転だがどうであろうか。7月8月の無酸素の時にどうなるのか。 まだ一部分をみただけである。次回の6月28日にには、北西岸の磯場に連続していた牡蠣の群生がどのように変わったか、また牡蠣の殻を隠れ場にしていた小さいハゼやギンポがどのように住処を換えたか見ていきたい。 なお、ラインBについて尾島雅子が撮影している。これについて、同様のコメントを書いてもらうよていにしている。
以下は尾島雅子の報告、写真があったならば良いのに、とだれでも思うにちがいない。目下練習中である。 日時 令和2年6月7日
10時40分~
場所 1 南側ビデオ架台〜遊歩道桟橋
2 遊歩道桟橋ラインB
海況 快晴、風なし、気温29度、水温18.5度
大潮、最干潮11時59分、赤潮発生
1 南側ビデオ架台〜遊歩道桟橋
ビデオ架台周辺は覆砂無く、底質は軟泥。透明度0.3m位。
ビデオ架台から桟橋方向に進むと覆砂した海底に白っぽい砂が確認出来る。水深3m位で、透明度は底の方が良く0.5〜1m位。粗めのガラス質の砂は礫混じりでザラザラしており、締まった感触がした。軽石のようなゴロタ石が混じる。所々小さな起伏があるが、ほぼ平坦。覆砂地を超えると軟泥となり、水深3.5m〜透明度は0.5m位。
ビデオ架台周辺では軟泥と覆砂が混じった場所があり、ホンビノスがまとまって生息していた。覆砂になるとホンビノスは減り、表面一帯はコオニスピオ( 環形動物 )で覆われていた。個体数は少ないが、サルボウも生息。アカニシ、トゲアメフラシは砂底、泥底共に観察され、産卵も確認。
魚類は数としては多くはないが、砂地に生息するハゼ類が数種見られた。他にイサザアミの群れが海底付近に入っており、これを狙ってクロダイ、ボラもいた。水面にはカタクチイワシ、サッパ幼魚もいたようだ。例年であればイシガレイ、コチ等の稚魚が砂底でみられるが、養浜工事や赤潮の発生が続いているせいか、みられなかった。
カニ類、付着性生物類は大きな沈木や切り出し岩等に確認。
覆砂地より先の軟泥底では、ウミサボテン( 刺胞動物 )、アカエイを確認。
2 遊歩道桟橋ラインB
底質は軟泥。覆砂無し。
軟泥は手で払うと舞い上がる。数cm下は黒い軟泥となり、手を入れると0.3m位は沈み込む。バクテリアマット無し。表面の軟泥は、付近( 水上バス桟橋、鳥島)の浚渫等も関係していると思われる。透明度0.5m。
泥底にはハゼ類を確認するが、数は少ない。水深3m位で泥底から刺胞動物らしき生物を確認。初めてみるものなので、科目など不明。
アサリの定着に関しては、もう少し目の細かい砂の方が好まれると思うが、経過を見ないと分からない。元々、お台場ではアサリ成貝は殆ど見ず、近年ではサルボウも減少。昨年夏にハマグリもいたが、稀。ホンビノスは一時多産したが、現在は減少傾向。アサリは浅場の砂地に、ホンビノスは稚貝の時水深1.5m〜成貝は3m位の軟泥まじり砂地に生息するので、覆砂で変化があるかモニタリングが必要と思われる。
いずれも、赤潮青潮による影響が最も大きく、酸欠に強いホンビノスでさえ9月にかなりの数が瀕死状態となる。
海底の硫黄細菌バクテリアマットは、例年6月下旬頃から確認される。原因として5月からの赤潮プランクトンが沈降、それをバクテリアが繁殖して処理する過程であるため。また、お台場海浜公園では流入した海水は南東側から回り込んで北側に溜まる傾向がある。その為調査日は、前日の雨による隅田川等からの流入も考えられ、午前中はやや低めの水温で透明度が良かった。一方、北側石垣付近ラインCでは、一日中赤潮により透明度は0.3~0.5m位であった。
覆砂に使われた神津島の砂はガラス質を含む多孔性の流紋岩らしいので、浄化作用も併せてどのような変化があるかモニタリングする意義があると思う。また、覆砂に大量発生したコオニスピオは粗めの砂地が好きなのである。因みに、水中スクリーン実験の時は、付着性のヒガタスピオが大量発生し、スクリーンの目を塞ぐほどであった。元々希少種で砂泥底に生息する生物にとっては覆砂は脅威であるが、今後東京港内に干潟を備えた生息場所を複数の条件で整備していけば、補填出来るのではないかと思う。
確認した生物データは多留氏、尾島智仁氏と合わせて後日送ります。ビデオ撮影したものは須賀氏が管理しています。
以上、報告まで。
長くなりました。お疲れ様。
日本水中科学協会
尾島雅子