出版予定の「リサーチ・ダイビング」の下書きです。
序論
リサーチ・ダイビングとサイエンス・ダイビング
この本のタイトル、「リサーチ・ダイビング」にしようか「サイエンス・ダイビング」にしようか迷った。
サイエンス・ダイビングの方が響きが良い。それに、この本で扱うのもサイエンス、科学に関連することが多い。
しかし、リサーチ・ダイビングの方が間口が広い。沈船の探検もあるし、宝探しもある。サイエンス・ダイビングとは、サイエンスのためのリサーチ・ダイビングである。タイトルは、リサーチ・ダイビングとする。
リサーチ・ダイビングとは、
人は何のために、どうして水に潜ろうとするのだろう。
①食料を求めて(search)
②未知なるものへの探求の本能
この他にいろいろ挙げることができるが、その根を手繰ると上の①②にたどり着く。例えば、ダイビングは楽しい。なぜ楽しいのかそのなぜを手繰ると②に行きつく。陸棲の人間にとって、水中は危険であるが、その危険を克服することに喜びがある。なぜ、喜ぶのか、探求の本能が満たされるからであろう。
そして、1943年クストーのアクアラング開発の目標は探求(リサーチ)であった。1953年にそのアクアラングが日本に持ち込まれたのもリサーチの道具としてであった。
※アクアラングという言葉は商品名であり。スクーバが汎用の言葉である。この本でも、以下、スクーバと呼ぶ。黎明期、始まりがアクアラングと呼んでいたので、ここだけ、アクアラングと呼んだ・
今、スクーバダイバーの90%は、カメラを持って水に入る。そのカメラで写す撮影の目的は、自己表現であり、記録である。水中で記録することは、リサーチに他ならない。
被写体にしたい生物がどこにいるのか、どんな様子でいるのか、調べて、見つけなければ撮影できない。すなわち、撮影のためのダイビングは、広義のリサーチ・ダイビングである。
言うまでもなく、図鑑制作のための撮影はリサーチ・ダイビングである。
撮影は、あまりにも現代のスクーバダイビングの全分野を覆ってしまっているために、ことさらにリサーチ・ダイビングと言わなくなってしまったともいえる。
さて、リサーチ・ダイビングに含まれるサイエンス・ダイビングとは?
①プロの研究者であってもアマチュアの研究者であって良い。自分が科学研究者であり、研究の為に潜る。
②自分が研究者でなくても、研究者の役に立つ記録、あるいは採集をおこなう。
③研究者といわれるほどの者ではないが、海の生き物、海のいろいろな事象を調べたい。
④「言葉として格好が良いから使う」言葉で口に出すことで、なにか、科学の目で水中を見ようという気になる。そう、科学の目で記録、撮影を行えばそれはサイエンス・ダイビングなのである。
※ 現在1200字 序論は、400字ぐらいにまとめる。
ウツボとイセエビ
キーワード
各論の前に、総論的にキーワードを置くことにした。
①フォーメーション formation 隊形 編隊
水中における、仲間(チーム)の各ダイバーの位置関係とその動きの法則をいう。
誰が何処にいるかを互いに知っていれば事故は未然に防げる。ほとんどのボールゲームには、名付けられたフォーメーションがある。
バディシステムは、フォーメーションの一つである。バディシステムをパターンで分けていくと、フォーメーションとしてわかりやすくなる。
②サーフェスコンタクト surface contact
これは、ここでの造語、提言であるかもしれない。どこかで、小耳に挟んだのかもしれない。サーフェス、つまり水面の上、ボートとか岸のベースとどのような連携をしているかである。
スクーバダイビングは、糸の切れた凧のようなものであるから、ほとんどの場合、サーフェスコンタクトは希薄になる。そして、ほとんどの事故は、サーフェスコンタクトの不在、不十分で発生する。
③ローカル ルール local rule
その場所の、そのチームの安全に関する取り決めである。指示書を用意してのブリーフィングで周知することが望ましい。
※ 目標を設定したことによる危険の増大、義務感、達成意欲は、適切にコントロールされていないと危険である。
④ウエアラブルカメラ
2010年頃から普及してきた手のひらサイズのカメラで、マスクに取り付けたり、棒の先に取り付けたりしてできて、調査記録のスタイルを一変させた。
⑤定点・継続
サイエンスでは、同じことが再現できるか否かが問われるが、自然環境調査の基本は、定点の継続調査である。コンセプトの一つ。
⑥リサーチ research
調査研究 業務としての調査 下見
⑦エキスペディション expedition
遠征、探検 日常の調査ではなくて、特別な意味合いを持つ非日常である。
⑧エキスプロレーション exploration 同じく探検
⑨冒険(adventure)と探検
個人によって意見、考え方の差があるが、探検とは、調査・記録が主目的であり、したがって、調査結果、資料を持ち帰ることが、条件となる。冒険は不可能に挑戦する、結果が読めない行動も含められる。冒険は遊びの概念としてつかわれることもある。冒険は必ずしも報告が求められない。
探検と冒険がオーバーラップすることも多い。
※書き進むことで、フィードバックして、付け加え、書き直しも多々出てくる。その意味では「まとめ」ともいえる。