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Channel: スガジロウのダイビング 「どこまでも潜る 」
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0922 お台場物語 (4)

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 2005年3月 羊蹄丸ポンツーンで見つけたモクズガニ
また話が前後するが、生物の調査なので生物の話を挟んで進める。
 東京都水産試験場のこと。 1990年代、水産大学の仲の良い同級生仲村君が、東京都水産試験場 場長になる。中枢に、顔見知りの後輩が多い時代。前に述べた電通映画のプロデューサー神領さんが、衛星チャンネルというタイトルの衛星放送のドキュメンタリー番組をはじめた。衛星放送は当時は視る人も少なかった。殆ど誰も視ていない実験的な放送だったが、自由に作れるということもあって、ドキュメンタリーの質は高かった。僕は、その衛星チャンネルで水中撮影で24本の番組を作った。24本というと、自分の知っている、自分の活動範囲のほぼすべてであった。アラスカのキングサーモン、トラック島の沈潜、シャーク、もちろん東京湾も撮ったが、「東京の川」シリーズを撮った。多摩川、江戸川、荒川、神田川.これら、東京関連の多くで、東京都水産試験場の協力をえた。多摩川では、鮎の遡上、産卵、を撮った。協力してもらったのが都水試の小泉正行さんだった。その小泉さんが、2000年代、お台場調査のの担当になり、お台場にアマモを移植して増やそうと試みた。お台場が緑の海草、アマモの草原になるのだ。 残念ながらアマモはお台場では根付かなかった。濁りのために日照が不足してしまうのだ。
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       お台場に植え付けられたアマモ
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 そのアマモをやっているとき、小泉さんはシャンハイガニを捕まえてしまう。2003年のことだ。シャンハイガニとは、中国モクズガニ、上海名物の美味しいカニだ。かなり大型のカニだから、船の船底に貼り付いてくるのは、不可能。どうも、対岸の魚河岸から脱そうしたらしい。新聞では、ある研究者は在来種のモクズガニに影響がでると危惧した。 僕の外来種についての考え方は、「いいじゃない。美味しいものが殖えるならば。」それに、在来種のモクズガニなんて、このあたりで、見かけたことなんてない。その空き家で、美味しいシャンハイガニが殖えるならば、上等では?(モズクガニではなくてモクズガニ:注意 僕もよくまちがう) しかし、とにかく話題になった。シャンハイガニを探せ、そのテレビ番組のディレクターは、今フェイスブックのお友だちの、田川さんだ。 番組だから、何か探さないと成立しない。探しに探して、なんと羊蹄丸の近くで、モクズガニを探し出してしまった。漁師的には、隅田川河口でも、モクズガニは撮れることが珍しくはない、ということだが、僕は、視たことがなかった。なお、モクズガニは、四万十川などで、漁獲されていて商売になっている。おいしいカニなのだが、なんと僕は食べたことがない。  さて、話を鮎に戻そう。鮎は姿形が清々しいので、清流の魚と思われるが、決して清流ではない多摩川でも殖えていた。多摩川では産卵するのは中流域の泉多摩川付近だ。残念なことに僕は産卵シーンを撮れなかったが、このあたりで産卵し、稚魚はながれを下って、海で、春桜の咲く頃に遡上する。お台場でも、鮎の稚魚がいるので、僕も懸命に探したけれど、細くて小さく、速いので視られていない。地引き網で採集するととれる。なので、ここにはアユの稚魚の写真はない、 なお、お台場では、地引き網で採れる魚と、僕らが視る、撮影できている魚とは、種類が違う。僕らが視るのは岩礁、浅場の魚であり、地曳きで採れるのは、主に砂地の魚なのだ。 鮎は要領の良い魚で、秋から冬、お台場など江戸前の水が悪くないときに、その海で暮らし。無酸素になる夏は、川を遡上して産卵する。
 次は、二枚貝の話だ。二枚貝は、何か条件が整うと、爆発的に殖える。お台場の人工砂浜でアサリが殖えたのは2002年から2003年頃だ。その頃、潜って、手を砂の仲に突っ込んでかきだすと5個ぐらいのアサリが手に入る。黙っていたのだけれど、潮干狩りに来る人もいて、アサリが、大漁なことが、次第に口コミで知れ渡り、潮干狩りは2004年にピークをむかえた。あまりに採れるので、商売人が採りにくるようになった。小泉さんはこのアサリの資源量も推定して、潮干狩りは続けられる予測をしていたけれど、2008年頃には、採れなくなった。
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      お台場で潮干狩り
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       ついに商売人も来た
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        潮干狩り場のような制限がなく、無制限だったから、いなくなった。


 二枚貝の外来種のスターは、ホンビノスだ。ホンビノウがあるのだから、ウソビノスとか、ビノスガイモドキ、があるのかというと、無くて、ホンビノスだけだ。
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        ホンビノスと大きなアサリ

 ホンビノスは1998年に千葉で最初に見つかったことになっている。ホンビノスを僕が最初に撮影したのは2003年だった。大きな個体立ったから、育つのに数年かかるから、千葉と同じ時期にお台場まで北のだろう。ホンビノスは、ビノスガイ、ビノスとは、ビーナス、ヴィーナスクラム、クラムチャウダーになる貝で、米国東海岸のどこだっけ、マサチューセッツ?が本場だとか。
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 僕らが、クラムヤチャウダーを作って食べたのは、2007年のことで、羊蹄丸サイドで、風呂田先生が先頭にたって、ガスコンロなどを持ってきた。こういうことが好きな人なのだ。 クラムチャウダーは、美味しかった。僕らは幸せだった。 ホンビノスも外来種なので、当初、学者間では在来種を圧迫するなどという意見もあったが、蛤の生産が商売にならなくなった船橋三番あたりの救世主となり、クラムチャウダーを売り物にするレストランも殖え、最近では、クラムチャウダー選手権などが、行われたりしている。
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 僕らも、ホンビノスの網焼きも試みたが、今では東京千葉近郊では、焼き蛤は、特別になり、庶民は焼きホンビノスを一個300円とかで、喜んでたべている。 もしも、チチュウカイミドリガニが、イシガニを絶滅させて、爆発的に殖え、資源量が保持されたあらば、シャンハイガニならぬ、チチュウカイガニが、名産になったかもしれないが、お台場のカニ世界は、イシガニ世である。そのイシガニも、多くはなく、危ないものだが、イシガニが消えたら、その空席はなにが占めるのか? お台場とは、そんな環境なのだ。
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         イシガニ 2015年

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