旭式マスクは、空気消費節減のために逆デマンドともいうべき空気嚢を取り付けたために空気を絶対に逃がさないようにマスクを顔にぴったりと張り付ける。マスクが顔に張り付きやすい人とそうでない人がいる。貼り付きやすい顔を軽便面、ケイベンヅラと呼んだりしたが、漏れやすい人は困る。漏れると空気の消費量が多くなるのだ。 しかしながら、自転車空気入れの兄貴分の手押しポンプが必須なのは、漁船のペラのロープ外しだけかも知れない。それも、ポンプを押す人が居なければ始まらない。 コンプレッサーがあれば、空気をそれほど節約しなくても良い。最初から盛大に洩らしてしまっても良い。排気弁も省略してしまって、魚の鰓のように空気を逃がしてしまう鰓マスクというのができた。
マスクが顔に合うか合わないかは、スキンダイビングでもスクーバダイビングでも同じ永遠のテーマである。それをネグッてしまったのが、海王式で、その権利を買って販売していたのが金王式、渋谷の金王町に店があったので、金王潜水だった。 金王式 マスク
金王式 盛大にフリフローしている
金王式と旭式が、マスクの世界を二分した。旭式の方が歴史もあり、優勢だったが、マスクを使っている現地へ行くと、金王式もよく見られた。 その勢力分布を調べたところで何になるわけでもないので、調べもしなかったのだが。 マスク式にせよ、ヘルメット式にせよ、どこでどんな風に使われているのかについて、調べるのは容易ではない。 沿岸漁業にせよ、作業潜水にせよ日常の仕事になっているところでは、潜水器は、完全に道具化している。道具化しなければ、仕事にならない。 逆に仕事化、道具化からフィードバックする事によって潜水器が進歩する。 1980年代のニュースステーションの水中レポートとダイブウエイズのフルフェースマスクがその関係だった。現在、世界で、映画、テレビの世界ではこのフルフェースマスクが圧倒的に売れているのはそのおかげなのだ。 2015年昨年の日本水中科学協会のシンポジウムで僕とダイブウエイズ社長であり、マスク設計者の武田さんが対談した。 ダイブウエイズのフルフェースマスクは重量級である。混合ガス潜水を含めて、何でもすべての要求に対応できる。それはそれで、とても良いことなのだが、ただフルフェースマスクで空気が送られてくるだけ、デマンドレギュレーターが取り付けてあるだけという軽量級が欲しかった。何度も進言したのだが、設計技術者特有の頑固さから、武田さんは取り上げなかった。その間隙で、これも親しい友人のゼロが、鬼怒川のマンテイスをベースにして、マンティスフルフェースマスクを作ってしまった。このマスクと同じようなマスクとしては、日本アクアラングが、アトランテイスをベースにしてフルフェースマスク化したものがある。この二つが現今では、日本の作業ダイバーの主流マスクになっている。 旭式、金王式は、軽量級フルフェースマスクなのだ。ダイブウエイズよりもさらに重量級のフルフェースマスクとして、カービーのバンドマスクとか、デスコとかアクアダインの軽量ヘルメットとかがあり、そうなるとダイブウエイズのマスクは中量級で、混合ガス潜水ができるマスクとしては軽量になるのだが、とにかく旭式、金王式は、軽量級である。軽量級でデマンドレギュレーターを着けたものがマンティスフルフェースマスク、デマンドのないのが旭式と考えても良い。 コンプレッサーの送気容量があり、水深が20m未満、10m前後までならば、デマンドレギュレーターは不要なのだ。道具はシンプルな方が良い。デマンドレギュレーターが無くても良いならば、無いほうが良いのだ。 沖縄のモズク漁(養殖の採集も含めて)、伊豆七島のテングサ漁、追い込み網漁などは、デマンドの無いフルフェースマスク、旭式を使っている。空気量が充分ならば呼吸嚢も必要ないのだ。特に鰓式で無くても洩らして、フリーフローで潜れば良い。デマンドレギュレーターを着けても、労働が激しい時にはフリーフローの方が楽だ。それに、フリーフローは整備の必要がない。 付け加えれば、道具として優れているのはメンテナンスフリーなのだ。 旭も金王も製造はとっくに止めてしまっている。しかし、細々ながら需要があり、その需要は無くてはならない需要なのだ。 ヘルメット潜水器の軽便化から、軽量級のマスクに至る面潜のたどった道の概略をのべた。なお、軽便マスク式のことを面潜とよび、マスクのことは面と呼んだりする。
マスクが顔に合うか合わないかは、スキンダイビングでもスクーバダイビングでも同じ永遠のテーマである。それをネグッてしまったのが、海王式で、その権利を買って販売していたのが金王式、渋谷の金王町に店があったので、金王潜水だった。
金王式と旭式が、マスクの世界を二分した。旭式の方が歴史もあり、優勢だったが、マスクを使っている現地へ行くと、金王式もよく見られた。 その勢力分布を調べたところで何になるわけでもないので、調べもしなかったのだが。 マスク式にせよ、ヘルメット式にせよ、どこでどんな風に使われているのかについて、調べるのは容易ではない。 沿岸漁業にせよ、作業潜水にせよ日常の仕事になっているところでは、潜水器は、完全に道具化している。道具化しなければ、仕事にならない。 逆に仕事化、道具化からフィードバックする事によって潜水器が進歩する。 1980年代のニュースステーションの水中レポートとダイブウエイズのフルフェースマスクがその関係だった。現在、世界で、映画、テレビの世界ではこのフルフェースマスクが圧倒的に売れているのはそのおかげなのだ。