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Channel: スガジロウのダイビング 「どこまでも潜る 」
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0709 豊潮丸航海ー6

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7月9日(火曜日)
備後瀬戸にはいり、佐柳島(さなぎ島)に潜る。


最大水深3.7m 潜水開始0914 潜水終了 0958 潜水時間44分

 ボートを止めると流れが0.5ノット程度ある。アンカーを打ち直して、岸の岩の近くに止める。アンカーの位置から巻尺を伸ばす予定。今日の水面での着装は、まあ、うまくできてさほど流されなかった。ボートのアンカーではなくて、岸側にある大きな岩の根元の小さな岩に括り付けた。
 2チームがまとまっていれば、この変更が伝えられたが、酒井先生のチームは、自分の判断で別になってしまっている。僕の独断での変更だから、心配だが、ラインの近くにいれば何とかなるだろう。打ち合わせのとおりに、せめて、アンカーの近くにいてくれればよかった。
 岩の元から、巻き尺はアンカー部分を通過して、30mほど延ばしたのだから、アンカーの近くにいてくれれば一緒になれた。

  アンカー近くで採集する中尾先生

  流れが速くなってきたので、ラインは30mで止める

 しかし透視度は3m以下、1ー2mで、これまでで一番悪い。巻尺を伸ばしているうちに流れが速くなり、とても50mは伸ばせない。ここも急深の斜面のはずだが、その斜面にまでも行けない。とにかく流れの中で採集をする。何点か採集しているうちに流れはますます速い。1.5ノットぐらいだろうが、位置によっては、2ノットかもしれない。海底の石をつかむのだが、体が持って行かれそうになる。潮流の中で、片手に大きなカメラを持ち、巻き尺を扱うのは難儀だ。GoProのマスクマウントだけで済めば助かるのだが。もうこれ以上は無理、カメラを手に引っ掛けて、苦労して巻尺を巻き戻しながらもどる。酒井先生たちが巻き尺を目印にしていると撤去は困るが。アンカーの根元でも、それから後も、姿を見ていない。彼らのことは、3人で解決する他ない。

 巻尺を結んでおいた大きな岩のところまで、もどり、岩に片手でつかまって上半身を水
面にだす。岩の裏側の方が潮の陰になるのだが、岩に上がる手がかりがない。残圧は10だが、これは残しておかなくてはならない。岩に上がって別になった3人を見張りたい。
 岩につかまって、上半身を岩の上に伸しあげて、迎えのボートを待つことにした。酒井チームが心配だが、石川さんがなんとかするだろう。中尾先生は、岩の裏側にいて、裏側の方が楽だと迎えに来てくれたが、こちらはこちらで、右手で岩につかまって、左手で大きいカメラと巻尺、左手がふさがっているので、右手を離す勇気がない。ゴムボートまでは7m足らずだが、泳ぎ渡る気持ちがない。巻尺と、そして重いカメラを持っている。やってやれないことは無いが、迎えのボートをこのま待てばすむことだ。水中では年寄りだとは思いたくないが、決して若くはない。



 酒井先生チームが、70mほど下のやや沖に浮いた。頭が三つ見える。全員無事。水深5m以下だから、浮上には危険はない。彼らは偉い、というか仕方がないのだろう。水面をさかのぼって泳ぎだした。僕たちの潮下にもう一つ岩がある。みていると、そこにたどり着いて、石川さんが岩の上に登った。そのまま、迎えを待てばよいのに、しばらくするうちに、3人は、潮を遡って、水面をボートに向かって泳ぎだした。なかなか進まない。流れは1.5ノット程度だろう。人間は2ノット出るはずだから、少しずつ進む。彼らは浮いたところから岩まで泳いだので、自信をつけたのだろうか。酒井教授が一着でゴムボートに着き、カメラを揚げ、ウエイトを揚げる。北大の経験3本君をエスコートするので、石川さんはやや遅れる。学生は手も使ってクロール的に泳ぎ、三人がゴムボートに着いて、石川さん、酒井教授がボートの上に乗った。岩の上で待っていても良いのだが、マッチョでタフだから、自力で元に戻ることにしたのだろう。
 僕が、フリッパー競泳で400m6分半だったのは64歳の時だ。今は10分を切れないだろう。自分を知ってしまっているので、無理をしなくなっている。
 やがて、迎えのゴムボートがこちらの岩に接近するが、それには乗らないで、ゴムボートまで泳いだ。たやすく5mを泳いで、石川さんのサポートで、ゴムボートにタンクを載せて上がった。


 石川さんはマスクマウントのGoProを着けている。再生すれば、彼らの動きのすべてがわかる。船に戻って見なおして、5分程度に編集した。3分にするのが自分で決めている原則だが、短くすると、苦労が感じられない。

  右手に見える3人は僕たちで、さかのぼっている。

 やはり水面でのスクーバ着装をしているうちに、かなり流されている。三人が一緒になり、後でさらに流されて浮上してから泳いだ距離を考えると、この時に水面を泳いで遡ってゴムボートにたどり着く方が楽だ。しかし、それをしないで、酒井先生は潜降を開始する。石川さんは、コンパスをたびたび見て、ボートの方向を確認しているようだ。先生は沖に向いている。それから先は少しの間水中を遡りながら採集している。

石川さんは、ボードに戻る方向とは違うと書いて、二人に見せようとするが、ボードを書くために目を離した瞬間に二人とはぐれてしまった。水深が浅いのだから、昔ならば、見失ったら直ちに浮上して、バディが一緒になるという打ち合わせが出来ていたのだが、今は、途中浮上、ヨーヨー潜水とか言って、水面には出ない。石川さんは古いダイバーだから、水面に浮上して二人を待つ。結果的にはこれが正しい。アクアホーンを持っているので、ブーブー鳴らすが、これを聞いたら浮上するという打ち合わせはしていない。二人は水中を探し回り、時間と空気をロスする。2分ぐらい経過して、やがて、二人は浮上するが、この間にさらに流されていて、ゴムボートから遥か離れて見える。海底の石につかまって流れを遡ろうと決めて、再び潜ってボートに向かう。今度はコンパスで方向を定めて、3人離れないで進む。流れを遡るので、かなりな労働だ。残圧が10になり、水面に浮上するが、まだまだ離れている。それから数分、水面を泳ぎ、岩にたどり着いて、岩に登り、5分ほど休んで回復して、ゴムボートに戻った。僕の岩は登れない岩だったが、石川さんの岩は上に上がれる。
岩の上でそのまま迎えを待てば良いのにと石川さんにいうと、恥ずかしいのでボートに戻ることにしたそうだ。
 ゴムボートに上がって、本船に帰る途中で今泳いだ浜辺を見たら流された先が砂浜になっていて、そこに上がって、迎えを待てば何のことも無かった。流されながら採集をして、浜に上がる計画もあった。ゴムボートは曳いて行けば良い。しかし、地形と潮が読めないとできない。潮が読めないし、地形もわからない。まだ、ゴムボートを曳いて行くシステムが出来ていない。石垣島には、海歩き(うみあっち)という漁の方法があり、送気式のフーカーコンプレッサーをサバニの上に載せ、ウミンチューは、水中を歩いて、バニを曳いて流されながら漁をする方法がある。中尾先生に話したが、とにかく今は、やはりゴムボートに戻る計画が最善だろうということになった。

 タンク経験3本君は冷静でタフで、あわてた風はない。酒井先生にぴったりとついて泳いでいる。この旅の経験で、レクリエーショナルダイビングでいえば、アドバンスとか、レスキューをはるかに上回る実地の経験を積んだ。
 しかし、だ。これで良いのだと思うと間違いが起きる。
 僕もこのようなリサーチダイビングの経験が長い。およそ40年の上だ。その経験をレクリエーショナルダイビングに持ち込み当てはめてはいけない。決していけない。と心に言い聞かせて、レクリエーショナルダイビングとつきあってきた。そのレクリエーショナルダイビングの眼で今の僕たちのダイビングを見ると、どうだろう?自分としては、リサーチダイビングの方が安全だと思っている。とにかく、どちらも離れないことを何よりも優先する。

豊潮丸は、大三島・宮浦港に入港した。
 15時の入港だったので、大山祇神社に参拝する。オオヤマズミと読むらしい。全国的に1万の神社支店をもつ総本山である。また歩くが、かなり歩くのには慣れてきた。良いことだ。樹齢、3000年、2600年の神木である大楠があり、宝物殿があり、昭和天皇が葉山で海の生物を研究した採集船・葉山丸がある。


 神木は、3000年という時間経過を思うと感動したが、歴史的に言うとその頃は?と考えて、誰がいたのか?よくわからない。2600年の方は説明が付けられていた。僕の78歳というのも、樹齢?みたいなものか。 
 宝物殿には源義経が奉納した鎧が国宝として飾られていたらしいが、鎧がたくさんあり、見過ごしてしまった。源の為朝が奉納した強弓もあった。嘘だとは思うが、これが為朝の弓かと感心もした。



 船が入港すると、夕食は船では作ってくれない。街に歩いて食べにでるか、バーベキューをやるか、甲板で鉄板焼きをやるか、になる。鉄板焼きになり、太陽が沈み、残照のなかで、肉をかなり食べた。胃腸が心配である。もちろん、酒盛りがある。泥酔するような子はいないし、この飲み会はかなり大事なことだとは思う。スノーケリングの広島大学、早稲田でも船の旅の経験に来ている子はいい。この船の旅で、酒を飲むことの教育効果も理解している。しかし、スクーバで潜る学生については、心配するが、スクーバだけを別にできる雰囲気ではない。一緒に盛り上がらなければならない。僕としては心配するだけだ。関東学生連盟の合宿では、潜水の前夜は飲むなと言っている。僕が一滴もアルコールの類を飲まないのも、人に飲むなというからだ。

後、ダイビングは二日ある。

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