「沿岸漁業とスポーツ」半分も書かないうちに、海に行くスケジュールになり、西川名、お台場、宿毛と転戦して、カメラ、撮影を話題にしたら、止まらなくなった。ついでにもう少し。 ハウジングの水没についてハウジング、(ブリンプ、水密ケース、プロテクター)そして、カメラ自体が耐圧、水密になっているもの、これらは、基本的に水没する。設計によっては、時間の問題だとおもっている。
それは、注意に注意を重ねていれば、水没は防げるだろう。しかし、注意に注意を重ねて、生き続けるということは不可能である。潜水するときの注意優先順位は、人によって違うだろうが、僕の場合、まず海況、そして、バディ、ユニットの状態、次に潜水機材、これは、場合によっては撮影機材が優先するときもある。優先順位では3番ないし4番であり、4番になったときに水没が発生する。プロの場合はたいていアシスタントがいるから、アシスタントが見て、自分がcheckする。あるいはその逆、もしくは、アシスタント、自分、アシスタントの順になるから、checkが、二重、三重になり、水没の可能性は低くなる。状況によっては(僕の場合?)水没90%までアシスタントの責任に決めていたから、(どちらかを責任者にしなければいけないので)水没はかなり防げていた。それでもニコノス5型を毎年、一台は水没させていた。スチルカメラは自分の管理だったからだ。6掛けで新品にしてくれる。
自分が作った(作らせていた)円筒形のハウジングは、ほとんど水没させたことがない。一回だけありえない水没があったが、内容積に余裕があるので、カメラ本体には影響はなかった。必ず水没と書いたけれど、それは、心のショックを少なくするための覚悟であり、設計によって、水没はパーフェクトに近く、絶対ではないけれど防げるのだ。 一般にカメラの防水はオーリングをつかう。小さなカメラ、たとえばGOPROなどは、Xリングの原理を使っている。XとOとを巧みに使うことで、現在の水中ハウジングの防水が達成されている。オーリングは円筒形シールを使えば、ほぼ確実に防水できる。円筒シールをダブルにすれば、ほぼ完全になる。ぼくが作らせていた円筒形のハウジングは、すべて生き残って粗大ごみになった。 構造上、円筒ダブルシールができない形もある。そのときは、水没するものと覚悟して、そのつもりで用心して使う。つまり、海況の次、潜水機材の前にcheckして、潜水機材をcheckし、最後にカメラをcheckする。さらに、水に入ったら、潜降する前にカメラを見て、気泡などがでていることがないか調べる。 そんなことは、毎度はとてもやっていられないので、水没が起こる。 水没しやすいシチュエーションは、潜水直前のあわただしいcheckであるという二律背反があるので、留意する。たとえば、オーリングにゴミが付いていないかと蓋を開いてみれば、そのときにゴミが付く可能性がある。あわただしく蓋を閉めれば危ない。 意外な落とし穴は、潜水を終了して、塩抜きのために水槽、あるいはバケツに入れておいて、水没させた経験が二回ある。水に入れておく時間はできるだけ少なくした方が良い。錆びるまで内機(カメラ)が現役で居られることは、デジタルになって以来あり得にくい。だから、長持ちさせる必要はないのだ。 次に、手に持って飛び込んだ衝撃での水没もあるので、水面で手渡してもらった方が良い。 長い間にほとんどの水没のパターンを体験した。それでも、大きい円筒形のハウジング、ドンガラが生き残っていて、事務所の一角を占領している。これも困ったものだ。
大きなハウジングの水没はショックが大きい。自分の作ったブロニカマリンは、ダブルオーリングにしていなかったので、忘れもしない、真鶴の岩海岸で、水中ブルトーザの撮影をしているときに水没させた。これは、自分が作ったハウジングだから、誰も恨まないが、sea&seaとか、フィッシュアイ、村上商事のことは、かなり恨んでいる。恨んだからといって、報復はできない。自分が悪いのだと泣き寝入りをする。修理代が高いと、二重に恨むことになる。ハウジングを作っていた時代、僕もきっと随分恨まれたことだろう。 もちろん、ライトの水没、ストロボの水没も、これに準ずる。そういうことなのだ。 カメラが水没する確率の統計資料など無いが、人が死ぬ確率から0を二つ減らしたくらい。僕の、でたらめ計算によるダイバーの死亡確率が16000回に一度だから、160回に1回の確率だろう。念のために付け加えるが、確率とは、160回使ったら必ず水没するものではなくて、その都度の確率だ。円筒形ダブルシールでは、確率は1600回に1回ぐらいだろう。自分をふりかえって、ダイビング生活50年として、死亡事故の確率は0。5回、死んだかも知れないけれど生き残っている。カメラの水没は10回をはるかに越えているから、160回に一回よりももっと高いかもしれない。
保険もハイアマチュアが一回ぐらいの水没ならば、効くけれど、プロはなかなか保険が効かない。昔、自分が保険屋から、断られ、プロの水中カメラマン(誰だかは言わない)の紹介で保険屋に連絡したが、紹介者の名前をいったとたんに断られた。
なを、この水没論は個人的なものであり定説ではない。統計資料のない確率などナンセンスだが、水没が起こったとき、あるいは、自分が死んだとき、自分を慰める資料になれば嬉しい。