空気を呼吸しないで水深40mから100mに潜る方法
原則としてヘリウムと空気の混合ガスであるトライミックスを使用する。
ヘリウムは高価であるから、ヘリウム・酸素のヘリオックスは使い切れない。また、ヘ リウムの問題点、熱伝導性、減圧時間が長くなる、などの問題もあり、トライミックスの 方がいい。
まず、潜水方法、潜水機の種類には サーフェスサプライ ホースによる送気と
スクーバ(自給気) の二つに大別される。今度のハイブリッドシステムは、基本的にはスクーバであり、その運用方法、システムについての提案である。
だから、ここでは、スクーバに 就いてだけ述べる。
スクーバは、
①単純なオープンサーキット
②CCRもしくはSCR
③ハイブリッド方式(運用の方法)である。
なお、ハイブリッドは、新たな須賀の提案であり、まだ、夢の中である。お笑いにすぎ ないかもしれない。これから確かめてみるテーマだ。
まず、単純なオープンサーキットについて述べよう。
単純なオープンサーキットだから、ようするにタンクにトライミックスを充填する。自 動的に酸素分圧を調整してくれる、CCRではないから、酸素分圧の関係で、水深40m までと、40を越してからと、二種類以上のガスを呼吸しなければならない。40m以上 を仮にボトムミックスと呼ぶ。
2種類のガスタンクをそれぞれ別のレギュレーターを着けておき、途中でマウスピース をくわえ直し、切り替え、交換すれば良い。最も単純シンプルで、シンプルイズベストと すれば、最善の方法でもある。
ここで、その例として、1995年、60歳を記念して100m潜水を企画した時、毎日のように100mを潜っている、サンゴ採りダイバーの潜水を見学し、話を聞くために、フランス領 コルシカ島の アラン・ボゴシアンを訪ねた時の事を書こう。
アランの潜水は、僕の出会った潜水のなかで、最も強烈な印象をのこしているから、何回 も繰り返して書いている
神奈川大学の当時教授であった関邦博博士、著書は多数宇あるが、「ジャック・マイヨー ル:イルカと海に還る日、 水中居住学、潜水学」などが書架に並んでいる。親交があっ た。その関先生が宝石サンゴの研究をしていて、高知県、沖ノ島で宝石サンゴの生体を潜 水で採集しようとして、アランを日本に呼んだ。その時にアランと会った縁で、僕はコル シカ島を訪ねる。コルシカ島はナポレオンの生まれたところだが、フランスでも複雑な反
抗の歴史のある島で、反抗とはテロだから、常に安全な島ではないけれど、とても良いと ころで、また行きたいとおもうところだ。
アランのダイビング、そして、生活はダイバーなら誰でも憧れるだろう。46歳、たく ましい、しかし、外国人としてはそれほど大きくはない使いやすそうな身体で、余分な脂 肪はついていない。トライアスロンをやるそうだ。
彼の背負うタンクは3本束ねてあって、うち一本がトライミックスだ。ガスは家のバッ クヤードで調整して充てんしているようだ。
自分のボート、一人用の再圧タンクがはめ込まれているボートで、沖にでる。潜る場所は、ソナーとGPSで決めるのだが、この日は予めブイが入れてあるところに潜った。ブイは大型のペットボトルだ。ブイにつけている索は、細いトワインで、僕たちがよく使っているものと同じだ。その日、透明度は良くて、地中海のちょっとくすんだ、青い色だ。波もなく、流れも全くない。
アランは潜水の前、5分ぐらい瞑想する。水中でこれから起こることをイメージするのだ ろう。僕は彼より先に飛び込んで、8mほどのところで、潜ってくるアランを受けた。三 本のタンクを軽々と背負って、フィンをほとんど動かすことなくBCの空気を抜いただけで 、水平の姿勢で、索に沿って降りてきて、そのまま蒼黒い海底にすべるように降りて行っ た。「いいなあ」と僕は思った。
一緒に下へ潜ったわけではなく、僕は見送ると、すぐにボートに上がって、彼が浮上し てくるのを待つ。
海底での出来事は僕の想像だ。その日の潜水は、ゲストの僕が来ているからか、浅くすると言っていたから90mぐらいだろうか。 タンクは二本の空気と1本がトライミックスだ。深い水深で吸うのだから、10分ももたないはずだ。
最初からトライミックスを吸っていくのか、潜降途中で切り替える、そのどちらだった のか、そのことを彼に聞いていない。肝心のことなのに、
①潜降と、海底では、トライミックスを呼吸している。これはタンク一本だけだから持続時間は短い。水面から海底に降下する時間と、海底での時間、そして、50mまで浮上してくる時間、全部を加えてもだいたい15分ぐらいだ。50mまで浮上してくると、呼吸を減圧用ガスに切り替える。方針としては、できるだけヘリウムを吸わないことが、減圧停止時間を短くする結果になる。
それとも、② ヘリウムの節約のために、窒素酔いのぎりぎりまで、多分65mぐらい までは空気で沈んで行くかもしれない。毎日のような、深い潜水だから、体が窒素酔いを おぼえている。その日の体調で、早く窒素酔いを感じたら、40mでガスを切り替えるか 、あるいは、その時の潜水をやめるのかもしれない。
①か②か、何れにせよ、首にぶらさげている二つのマウスピースをくわえなおしだけの ことだ。
海底の溝のようなところに宝石サンゴは生えている。太い大きい立派なサンゴもあるの だろうが、それはきっと年に一度ぐらいで、その日採って来たのは深紅の小指ほどの枝を 刈り集めて、胸のところに掛けた篭に入れる。海底では、サンゴのポリぷは一面に開いて いるのだろうが、あるいは、閉じているが、宝石の価値があるのはその全部ではなくて、 探して採らなければならないのだろう。
ボートの上で待っていると、ブイが浮いた。これは水深50mぐらいで放出した円筒形のブイだが、今は普通に日本でもみんな使っているが、当時、1994年ごろはまだ僕の目に珍しかったので、感心した。ボートを近づけると、浮いてきたブイの細い索にそってやや太い12mmぐらいのロープに添わせたホースを下ろす。もちろんホースの先にはセカンドステージが付いていて、この空気を吸って浮上してくる。 ホースには有線通話の線が這わせてあって、このホースに呼吸を切り替えると、ただちに 通話が開始できる。減圧停止中に原因不明の事故で社員を失った経験があるぼくは、減圧 点まで来たら、ただちに通話を開始するこのようなシステムをつかっていれば事故は起こ らなかったのに、と思った。
あとでも、書くが、このように減圧用のガスを船上に用意して、ホースで送るのが、た とえ、CCRでも安全のためのキーなのだが、レクリエーショナルダイビングのテクニカ ルでは、やられていない、基本的に危険である。そのことも、ハイブリッドの目標でもあ る。
水深10mぐらいまで浮上すると、下からの指示でボートから別のロープが下ろされた 。このロープに採集したサンゴの籠を結びつけて上げる。深紅の細い枝のようなサンゴだ った。磨けばネクタイピンとかペンダント、などになるのかと思う太さだ。
下からの指示で僕に潜ってこいという。減圧停止も最終段階で、水深6m位だろうか、 タンクを脱いで、これもロープで引き揚げさせた。
僕に細いホースを渡して、これを袖に入れろという身振りをする。ホースを手で受ける と暖かいお湯がでている。これを袖に入れたり首筋から入れたりして暖をとるのだ。この 温水ホースもシンプルなもので、家庭用のガス湯沸かし器のようなものに、小さいポンプ が付いているだけだ。減圧停止の最終段だけ温まれば良いという考えだろう。
いよいよ浮上するときになると彼はウエットスーツを脱ぎだした。
原則としてヘリウムと空気の混合ガスであるトライミックスを使用する。
ヘリウムは高価であるから、ヘリウム・酸素のヘリオックスは使い切れない。また、ヘ リウムの問題点、熱伝導性、減圧時間が長くなる、などの問題もあり、トライミックスの 方がいい。
まず、潜水方法、潜水機の種類には サーフェスサプライ ホースによる送気と
スクーバ(自給気) の二つに大別される。今度のハイブリッドシステムは、基本的にはスクーバであり、その運用方法、システムについての提案である。
だから、ここでは、スクーバに 就いてだけ述べる。
スクーバは、
①単純なオープンサーキット
②CCRもしくはSCR
③ハイブリッド方式(運用の方法)である。
なお、ハイブリッドは、新たな須賀の提案であり、まだ、夢の中である。お笑いにすぎ ないかもしれない。これから確かめてみるテーマだ。
まず、単純なオープンサーキットについて述べよう。
単純なオープンサーキットだから、ようするにタンクにトライミックスを充填する。自 動的に酸素分圧を調整してくれる、CCRではないから、酸素分圧の関係で、水深40m までと、40を越してからと、二種類以上のガスを呼吸しなければならない。40m以上 を仮にボトムミックスと呼ぶ。
2種類のガスタンクをそれぞれ別のレギュレーターを着けておき、途中でマウスピース をくわえ直し、切り替え、交換すれば良い。最も単純シンプルで、シンプルイズベストと すれば、最善の方法でもある。
ここで、その例として、1995年、60歳を記念して100m潜水を企画した時、毎日のように100mを潜っている、サンゴ採りダイバーの潜水を見学し、話を聞くために、フランス領 コルシカ島の アラン・ボゴシアンを訪ねた時の事を書こう。
アランの潜水は、僕の出会った潜水のなかで、最も強烈な印象をのこしているから、何回 も繰り返して書いている
神奈川大学の当時教授であった関邦博博士、著書は多数宇あるが、「ジャック・マイヨー ル:イルカと海に還る日、 水中居住学、潜水学」などが書架に並んでいる。親交があっ た。その関先生が宝石サンゴの研究をしていて、高知県、沖ノ島で宝石サンゴの生体を潜 水で採集しようとして、アランを日本に呼んだ。その時にアランと会った縁で、僕はコル シカ島を訪ねる。コルシカ島はナポレオンの生まれたところだが、フランスでも複雑な反
抗の歴史のある島で、反抗とはテロだから、常に安全な島ではないけれど、とても良いと ころで、また行きたいとおもうところだ。
アランのダイビング、そして、生活はダイバーなら誰でも憧れるだろう。46歳、たく ましい、しかし、外国人としてはそれほど大きくはない使いやすそうな身体で、余分な脂 肪はついていない。トライアスロンをやるそうだ。
彼の背負うタンクは3本束ねてあって、うち一本がトライミックスだ。ガスは家のバッ クヤードで調整して充てんしているようだ。
自分のボート、一人用の再圧タンクがはめ込まれているボートで、沖にでる。潜る場所は、ソナーとGPSで決めるのだが、この日は予めブイが入れてあるところに潜った。ブイは大型のペットボトルだ。ブイにつけている索は、細いトワインで、僕たちがよく使っているものと同じだ。その日、透明度は良くて、地中海のちょっとくすんだ、青い色だ。波もなく、流れも全くない。
アランは潜水の前、5分ぐらい瞑想する。水中でこれから起こることをイメージするのだ ろう。僕は彼より先に飛び込んで、8mほどのところで、潜ってくるアランを受けた。三 本のタンクを軽々と背負って、フィンをほとんど動かすことなくBCの空気を抜いただけで 、水平の姿勢で、索に沿って降りてきて、そのまま蒼黒い海底にすべるように降りて行っ た。「いいなあ」と僕は思った。
一緒に下へ潜ったわけではなく、僕は見送ると、すぐにボートに上がって、彼が浮上し てくるのを待つ。
海底での出来事は僕の想像だ。その日の潜水は、ゲストの僕が来ているからか、浅くすると言っていたから90mぐらいだろうか。 タンクは二本の空気と1本がトライミックスだ。深い水深で吸うのだから、10分ももたないはずだ。
最初からトライミックスを吸っていくのか、潜降途中で切り替える、そのどちらだった のか、そのことを彼に聞いていない。肝心のことなのに、
①潜降と、海底では、トライミックスを呼吸している。これはタンク一本だけだから持続時間は短い。水面から海底に降下する時間と、海底での時間、そして、50mまで浮上してくる時間、全部を加えてもだいたい15分ぐらいだ。50mまで浮上してくると、呼吸を減圧用ガスに切り替える。方針としては、できるだけヘリウムを吸わないことが、減圧停止時間を短くする結果になる。
それとも、② ヘリウムの節約のために、窒素酔いのぎりぎりまで、多分65mぐらい までは空気で沈んで行くかもしれない。毎日のような、深い潜水だから、体が窒素酔いを おぼえている。その日の体調で、早く窒素酔いを感じたら、40mでガスを切り替えるか 、あるいは、その時の潜水をやめるのかもしれない。
①か②か、何れにせよ、首にぶらさげている二つのマウスピースをくわえなおしだけの ことだ。
海底の溝のようなところに宝石サンゴは生えている。太い大きい立派なサンゴもあるの だろうが、それはきっと年に一度ぐらいで、その日採って来たのは深紅の小指ほどの枝を 刈り集めて、胸のところに掛けた篭に入れる。海底では、サンゴのポリぷは一面に開いて いるのだろうが、あるいは、閉じているが、宝石の価値があるのはその全部ではなくて、 探して採らなければならないのだろう。
ボートの上で待っていると、ブイが浮いた。これは水深50mぐらいで放出した円筒形のブイだが、今は普通に日本でもみんな使っているが、当時、1994年ごろはまだ僕の目に珍しかったので、感心した。ボートを近づけると、浮いてきたブイの細い索にそってやや太い12mmぐらいのロープに添わせたホースを下ろす。もちろんホースの先にはセカンドステージが付いていて、この空気を吸って浮上してくる。 ホースには有線通話の線が這わせてあって、このホースに呼吸を切り替えると、ただちに 通話が開始できる。減圧停止中に原因不明の事故で社員を失った経験があるぼくは、減圧 点まで来たら、ただちに通話を開始するこのようなシステムをつかっていれば事故は起こ らなかったのに、と思った。
あとでも、書くが、このように減圧用のガスを船上に用意して、ホースで送るのが、た とえ、CCRでも安全のためのキーなのだが、レクリエーショナルダイビングのテクニカ ルでは、やられていない、基本的に危険である。そのことも、ハイブリッドの目標でもあ る。
水深10mぐらいまで浮上すると、下からの指示でボートから別のロープが下ろされた 。このロープに採集したサンゴの籠を結びつけて上げる。深紅の細い枝のようなサンゴだ った。磨けばネクタイピンとかペンダント、などになるのかと思う太さだ。
下からの指示で僕に潜ってこいという。減圧停止も最終段階で、水深6m位だろうか、 タンクを脱いで、これもロープで引き揚げさせた。
僕に細いホースを渡して、これを袖に入れろという身振りをする。ホースを手で受ける と暖かいお湯がでている。これを袖に入れたり首筋から入れたりして暖をとるのだ。この 温水ホースもシンプルなもので、家庭用のガス湯沸かし器のようなものに、小さいポンプ が付いているだけだ。減圧停止の最終段だけ温まれば良いという考えだろう。
いよいよ浮上するときになると彼はウエットスーツを脱ぎだした。