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Channel: スガジロウのダイビング 「どこまでも潜る 」
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0823 海洋高校講演レジュメ下書き

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 8月の末に、茨城海洋高校で行われている、海洋高校の先生たちの指導者講習に、一コマだけ話しを頼まれている。修了式的な講演のように思う。しかし、それだからこそ、きちんとレジュメを作って、筋道の通った話にしなければならない。
 そこで、例によって、ブログで考えて、レジュメを作って行こう。

タイトルは
「ダイビングの安全についてのアプローチ」

 ☆前提
①ダイビングは、人間が生存を続けられない環境への侵入だから、危険である。
②事故とは、人間の死亡原因の、ベストファイブには入っているはずだ。(手元に資料がないが)日常的なことであって、水中で仕事をするダイバーが水中事故で生命を落とすことは、当然のことであり、珍しいことではない。

事故を防ぐ、ただひとつの確実性のある手段は、船上、もしくは岸辺、と生命維持のアンビリカルで結合しておくことである。アンビリカルとは生命維持のための連結であり、空気、通信、保温などの手段を供給する有線手段である。
わかりやすく言えば送気式潜水器に通信線などを束ねたものである。
そして、この線が切断されても、空気供給が絶たれないように浮上脱出用の空気供給装置を別に持っている。

1980年代のテレビ番組の撮影は、ほとんどが、ケーブルで映像信号を船上に送っていた。
これによって、相当に危ないことでも、難なく安全に切り抜ける事ができた。
それを一般のダイビングにも応用普及させようとして、ケーブルダイビングシステムという命綱兼用の有線通話システムを作って売りだしたが、紐付きダイビングはスクーバダイバーは嫌う。生命よりも自由に泳ぎまわることがだいじなのだ。自分としても、命がけでも自由に泳ぎたいと思ってしまう。ある条件の下でしかケーブルシステムは使えない。

  初心者を多人数連れて行く体験ダイビング

ケーブルのような連携があっても事故が起こるが、それは不慮の事故であって、想定外ということができる。
この連携がないスキンダイビング、スクーバダイビングの事故は、想定できる事故であり、不慮の事故ではない。

  物理的な連携は、自分の潜水では常に追求してきたし、現在も追求しつつあるが、それは、一般のスキン、スクーバダイビングでは、除外されている。生命よりも自由に泳ぐことが大事なのだ。だから、スキンダイビングもスクーバダイビングも安全第一では決してない。安全第二としてうえで、どうしたら生き延びられるか。
 想定される事故について、防止手段として、何が考えられるか。

 事故防止のために頼るものは、一つはフィジカルな能力であり、一つはメンタルな能力である。
フィジカルについては、ここでは触れないが、一言で片付けてしまえば、正しいトレーニングの継続である。トレーニングの量と質によって、自分の活動範囲を定める。
ここではメンタルな部分について述べる。

☆ ダイビングとはメンタルな活動である。
 フィジカルなトレーニングについても、メンタルによって制御されるから、ほとんどすべてがメンタルが中心になるといってもいい。

 ダイビング事故のほとんどすべては、運用の失敗、欠落によって起こる。運用とは、やり方であり、5W1Hで表現できる。

では、如何にして、運用の失敗、欠落を起こさないようにするか。

 事故の防止について、言語化、図式化できる形式知と、身体、五感によって獲得する暗黙知に分けて考える。
 形式知は、マニュアル、スペックなどで獲得する理論的な知識であり、暗黙知は、経験によってたくわえられ、想像で呼び起こされるイメージである。
 言うまでもなく、形式知と暗黙知は入れ混ざり合って不可分になってはいるが、大きく2つにわけて、そのどちらも重要であると考える。どちらかだけでは事故は防げないと思うべきである。

自分について振り返れば、いくつかの入門書を書き、マニュアル、テキストを書いた。これらは形式知である。暗黙知について、イメージコントロールなどについては触れてきたが、明確に分けて考え表現してきたことは無かった。

 2010年、安全な水中活動を目指して、日本水中科学協会を設立した。具体的な指導活動を行う余地は、ダイビング界にはすでにない。文化としての安全の追求を活動の中心に置いて、科学的な調査活動の追求、本を次々と制作刊行して行くことを活動の中心に置いている。

 2010年は、安全のためのマニュアル策定シンポジウムを開催して、小冊子を作った。これは自己責任を中心理念としてのマニュアル策定を志したものだった。

 2012年には最新ダイビング用語事典を編纂した。これは広義のマニュアル、テキストであり、その完成を目指した。
2014年には、潜水士の受験対策本を制作した。日本の潜水では、潜水士の資格は高気圧作業安全衛生規則は、重要なポイントを占めている。

さらに1014年のシンポジウムでは、関東学生潜水連盟を中心とした、学生のダイビング活動について、マニュアルを集めた。いま、高校の潜水教育を考えるにあたって、各大学の練習方法、マニュアルは必ず参考になると思う。

2015年、スキンダイビング・セーフティで、初めて、ダイビングの安全についての総括をして形式知、暗黙知のことと、ローカルルールの重視を書いている。ローカルルールの重視とは、ダイビングの安全に最も深く関わっている運用についての決まりの徹底、文書化であり、これによって、形式知についての徹底が行われる。

 例えば現今では、スノーケリング事故が相次いだと問題にされているが、これは、スノーケリングベストを着けていれば、防げたとかんがえられる。スノーケリングベストを着用することと決めているのは、ローカルルールである。なぜ、ローカルルールがまもられないかを考えなくてはいけない。

 ローカルルールは文書化されるとマニュアルになる。
 これで、輪が閉じられた。安全のためのマニュアルとは、ローカルルールを系統だって集めたもの、まもられなければ、事故が発生した場合に、まもらなかった者の責任になる。

 次には、暗黙知による予想、推定と判断である。
 よく、ヒヤリ・ハットという。ヒヤリ・ハットとは、ダイバーの頭のなかで感じることであり、身体で感じたら、つまり、目に見えてしまったら、すでに事故である。とすると、ヒヤリハットを感じるのはダイバーそれぞれの感性である。
 ダイバーは恐怖心、想像力を大事にしなければいけないと教えている。恐怖心の鋭い人は、微妙なことでも、感じるし、鈍い人は、事故が起こるまで、感じることがない。ハインリッヒの法則は統計であり、個々のケースではない。
次に大事なことは恐怖心の制御と、処理解決である。パニックで、論理的に考える意識を失ってしまうと危ない。生物が死をおそれる感覚は、大事だが、判断力を失ってはいけない。論理的に因果関係を考えなくてはならない。しかし、考えている時間がない場合もある。原因と結果について、どれだけのイメージをもっているか、の勝負になる。

まとめると、
「ダイビングのセーフティとは、フィジカルなトレーニングが常にあり、その結果、状況を常に知っていて、その状況に応じて、形式知に照らし合わせて、暗黙知で判断して行く。」
そして、昔から言っていることなのだが、ダイビング事故の原因は、「病気、下手くそ、思いあがり」であり、病気、下手くそはフィジカルの状況であり、思いあがりは、判断の論理的なプロセスを省略してしまうことである。

さて、これは、下書きであり、これからPPをつくり、発表の準備をしなければならない。


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