M値のことを考えて、頭の回転が鈍くなっているため今ひとつ理解できなかった。
写真は浮上のイメージカット
振り出しに戻って、減圧表の沿革を書いていて、感覚としてわかった。
潜水を始めた1950年代、ホールデンの2分の1の法則と言われていた浮上方法を教えられた。減圧が絶対圧で2分の1ならば、気泡化が起こらないで浮上できるということで、例えば30mでの絶対圧は400kPaからの浮上は、水深10m、200kPaまでは浮上できる。また、水深10mまでならば、大気圧との差が、2分の1にならないから、減圧症にはならない、と、おしえられた。今では、それは数字がちがうということがわかった。
その後の研究の結果、その2分の1という数字に代わるものがM値であり、M値を越さない様に浮上するということになった。だから、M値は浮上するときに越しては行けない数字、2分の1に代わる数字だ。
高圧則で採用したビュールマンのZH-L16 理論式では、組織を16通りに分けてそのそれぞれについて、M値、越してはいけない数字を計算する。16の組織の、どの組織もM値を越えないように浮上するスケジュールが、減圧表である。
このビュールマンの理論式も1960年代、の理論であり、すでにクラシックだが、まずまず世界的に定評があるということ、高圧則で採用したのだろう。
一般ダイバーは、ここまでで、十分なのだが、受験本を書く、すなわち潜水士の勉強をするとので、もう少し掘り下げる。
まず、人間、ダイバーが次第に深く潜って行くと、身体にかかる水圧(環境圧)が増加する。呼吸する気体の圧力も環境圧と等しいからこれも増加する。呼吸するカス圧が高くなると、血流に溶け込むガスの圧も高くなる。
気体(肺の中の空気)と液体(血液)が接すると、酸素が血液に溶けこんでいく、同時に不活性ガスの窒素も溶けこんでいく。酸素は消費されるが、窒素は残る。気体の圧に比例して、液体の中にガスが溶けこんで行く。これをヘンリーの法則というのだが、溶けこむ窒素は、水深の増加に比例して、増加する。
ここから先が文系人間には理解し難い。僕も危ない。比例してガスの量が増えると言ってもそのガスの量の単位は何で表現されるのか?重さ、キログラムだろうか、長さ、cmだろうか、長さとか重さは人間が見たり、持ち上げたりすることで感覚的に受け止めることができるのだが、溶け込むガスの量は、長さ(大きさ)ではない。気体に大きさはない。重さはある。気体の重さ、すなわち圧力である。圧力は見ることができない。
そして、身体の中に溶け込むガスの圧力を物理的に感じることができないが、その変化による生理学的な影響、変化は感じることができる。ダイバーならば、窒素酔いがその変化に当たる。
身体の中に溶け込む気体の量は、圧力で測られ、示される。ダイバーに対する生理的な影響として、まず考えるのは、空気の80%を占めている窒素である。空気中の窒素の量は、窒素だけの圧力、分圧で表される。大気圧、1気圧の中での窒素はその80%だから、0.8気圧である。これがドルトンの分圧の法則であり、ダイバーが知らなくてはならない、数少ない法則の一つである。ボイルの圧力の法則、ヘンリーの溶解の法則、そしてドルトンの分圧の法則、何れも圧力に関係する法則である。潜るということは、圧力との対決だから、この三つは知らないとC-カードもあげられない。潜水士にもなれない。
今、日本で公的に使われている圧力単位は、パスカルで、大気圧、一気圧:
1atm. は、100kPa(キロパスカル)である。僕はパスカルに抵抗していたが、そろそろ、無駄な抵抗になってきた。
身体に溶け込んだ窒素の量は不活性ガス分圧で、示される。水深40mに潜ったとすると、身体にかかる圧力(絶対圧)は、5気圧であり、500kPaである。その内で、窒素、不活性ガス分圧は、80%だから、400kPaである。今度の規則改正で窒素の分圧、400kPaを越えて潜ってはいけないことになった。空気を呼吸して40m以上潜ってはいけないのだ。では、どうするかというと、無害で、軽いヘリウムという不活性ガスを混合させて、窒素400kPaを維持する。60m潜ると、全圧は700kPa、酸素を20%として、140kPa、窒素は400kPaで留めるから、残りの160kPaをヘリウムにしなければならない。なお、酸素も酸素中毒を起こすので、160kPaを超えてはいけないということもあり、、これも高圧則で定められている。酸素20%では、その8倍、70mで限界に達するから、70m以上もぐるのであれば、例えば、酸素10%にすると、80kPa。窒素を400kPa、ヘリウムが320kPaの混合ガスで潜る。
三種混合だからトライミクスで呼吸する事になる。このくらいまでは暗算でできることが潜水士としては要求される。僕でもできる?電卓を持ってこないと心配ではあるが。
とりあえず、40m潜ることにして、上記の計算で、呼吸するガスの窒素分圧は400kPaである。普通に暮らしている大気圧と、40mでのガス圧を比べてみる。大気圧での窒素分圧は80kPa、酸素が20kPaで、合計は100kPaである。
40mの窒素分圧が400:大気圧で80である。
しかし、潜った瞬間に体の中に溶け込む窒素が400になるわけではなくて、80から時間経過とともに次第に400に近づいて行く。体の中に溶けている窒素が400kPaになると、もうそれ以上は溶けこんで行かない。これを飽和という。
高圧則で採用している理論式、ビュールマン教授の理論では、この溶け込み方、および浮上の時の溶け出し方について、指数関数的としている。指数関数的とは、例えば飽和の半分まで溶けこむに要する時間、すなわち半飽和までが例えば、10分とすると、10分経過で50%溶け込む。次の10分で残りの50%が溶け込んで100%になる。そうは行かないというのが指数関数的ということで、次の10分では残りの50%の半分25%が溶け込んで、75%が溶け込んでいる事になる。その次の10分では25%の半分だから12.5%、87.5%が溶け込んだことになる。半分の半分をくりかえすと無限の時間がかかるから、とりあえず、6回の繰り返しで、ほぼ100%が溶け込むことにしている。10分で半分だったから、10分の6回繰り返して、60分で飽和に達することになる。つまり、10分の半飽和組織は60分で飽和する。
身体の中の組織は一様ではない。血液、皮膚、筋肉、内蔵、脳、脊椎、骨、等様々である。
それをビュールマン教授の理論では、飽和の半分、半飽和時間を5分から635分までの16通りにわける。これはあくまでも計算のための分類であり、肝臓は何分、胃は何分という指定はない。概して言えば、血流の多いガスの入れ替わりの速い、筋肉などは短く、脊椎など身体の芯で脂肪分が多く血流に少ない部分は長くなる。
例えば半飽和時間が最短の5分の組織では、5分の6回、30分で飽和に達することになる。この組織の呼び名としては、半飽和時間5分の組織、略して5分の半飽和組織という事になる。これを英語でコンパートメントと呼んだり、組織モデルとよんだりしているが、潜水士のテキストでは、半飽和組織という。635分半飽和組織は、635×6=3810分、63,5時間で飽和する。完全に溶け出すのも63時間かかることになる。
ここまではM値の前提条件である。ここまでは、僕でも分かったし、説明もできた。
しつこいけれど、ここまでせつめいしてきてしまったので、行き着くところまで行かなくては、気分が悪いので、つづく。
写真は浮上のイメージカット
振り出しに戻って、減圧表の沿革を書いていて、感覚としてわかった。
潜水を始めた1950年代、ホールデンの2分の1の法則と言われていた浮上方法を教えられた。減圧が絶対圧で2分の1ならば、気泡化が起こらないで浮上できるということで、例えば30mでの絶対圧は400kPaからの浮上は、水深10m、200kPaまでは浮上できる。また、水深10mまでならば、大気圧との差が、2分の1にならないから、減圧症にはならない、と、おしえられた。今では、それは数字がちがうということがわかった。
その後の研究の結果、その2分の1という数字に代わるものがM値であり、M値を越さない様に浮上するということになった。だから、M値は浮上するときに越しては行けない数字、2分の1に代わる数字だ。
高圧則で採用したビュールマンのZH-L16 理論式では、組織を16通りに分けてそのそれぞれについて、M値、越してはいけない数字を計算する。16の組織の、どの組織もM値を越えないように浮上するスケジュールが、減圧表である。
このビュールマンの理論式も1960年代、の理論であり、すでにクラシックだが、まずまず世界的に定評があるということ、高圧則で採用したのだろう。
一般ダイバーは、ここまでで、十分なのだが、受験本を書く、すなわち潜水士の勉強をするとので、もう少し掘り下げる。
まず、人間、ダイバーが次第に深く潜って行くと、身体にかかる水圧(環境圧)が増加する。呼吸する気体の圧力も環境圧と等しいからこれも増加する。呼吸するカス圧が高くなると、血流に溶け込むガスの圧も高くなる。
気体(肺の中の空気)と液体(血液)が接すると、酸素が血液に溶けこんでいく、同時に不活性ガスの窒素も溶けこんでいく。酸素は消費されるが、窒素は残る。気体の圧に比例して、液体の中にガスが溶けこんで行く。これをヘンリーの法則というのだが、溶けこむ窒素は、水深の増加に比例して、増加する。
ここから先が文系人間には理解し難い。僕も危ない。比例してガスの量が増えると言ってもそのガスの量の単位は何で表現されるのか?重さ、キログラムだろうか、長さ、cmだろうか、長さとか重さは人間が見たり、持ち上げたりすることで感覚的に受け止めることができるのだが、溶け込むガスの量は、長さ(大きさ)ではない。気体に大きさはない。重さはある。気体の重さ、すなわち圧力である。圧力は見ることができない。
そして、身体の中に溶け込むガスの圧力を物理的に感じることができないが、その変化による生理学的な影響、変化は感じることができる。ダイバーならば、窒素酔いがその変化に当たる。
身体の中に溶け込む気体の量は、圧力で測られ、示される。ダイバーに対する生理的な影響として、まず考えるのは、空気の80%を占めている窒素である。空気中の窒素の量は、窒素だけの圧力、分圧で表される。大気圧、1気圧の中での窒素はその80%だから、0.8気圧である。これがドルトンの分圧の法則であり、ダイバーが知らなくてはならない、数少ない法則の一つである。ボイルの圧力の法則、ヘンリーの溶解の法則、そしてドルトンの分圧の法則、何れも圧力に関係する法則である。潜るということは、圧力との対決だから、この三つは知らないとC-カードもあげられない。潜水士にもなれない。
今、日本で公的に使われている圧力単位は、パスカルで、大気圧、一気圧:
1atm. は、100kPa(キロパスカル)である。僕はパスカルに抵抗していたが、そろそろ、無駄な抵抗になってきた。
身体に溶け込んだ窒素の量は不活性ガス分圧で、示される。水深40mに潜ったとすると、身体にかかる圧力(絶対圧)は、5気圧であり、500kPaである。その内で、窒素、不活性ガス分圧は、80%だから、400kPaである。今度の規則改正で窒素の分圧、400kPaを越えて潜ってはいけないことになった。空気を呼吸して40m以上潜ってはいけないのだ。では、どうするかというと、無害で、軽いヘリウムという不活性ガスを混合させて、窒素400kPaを維持する。60m潜ると、全圧は700kPa、酸素を20%として、140kPa、窒素は400kPaで留めるから、残りの160kPaをヘリウムにしなければならない。なお、酸素も酸素中毒を起こすので、160kPaを超えてはいけないということもあり、、これも高圧則で定められている。酸素20%では、その8倍、70mで限界に達するから、70m以上もぐるのであれば、例えば、酸素10%にすると、80kPa。窒素を400kPa、ヘリウムが320kPaの混合ガスで潜る。
三種混合だからトライミクスで呼吸する事になる。このくらいまでは暗算でできることが潜水士としては要求される。僕でもできる?電卓を持ってこないと心配ではあるが。
とりあえず、40m潜ることにして、上記の計算で、呼吸するガスの窒素分圧は400kPaである。普通に暮らしている大気圧と、40mでのガス圧を比べてみる。大気圧での窒素分圧は80kPa、酸素が20kPaで、合計は100kPaである。
40mの窒素分圧が400:大気圧で80である。
しかし、潜った瞬間に体の中に溶け込む窒素が400になるわけではなくて、80から時間経過とともに次第に400に近づいて行く。体の中に溶けている窒素が400kPaになると、もうそれ以上は溶けこんで行かない。これを飽和という。
高圧則で採用している理論式、ビュールマン教授の理論では、この溶け込み方、および浮上の時の溶け出し方について、指数関数的としている。指数関数的とは、例えば飽和の半分まで溶けこむに要する時間、すなわち半飽和までが例えば、10分とすると、10分経過で50%溶け込む。次の10分で残りの50%が溶け込んで100%になる。そうは行かないというのが指数関数的ということで、次の10分では残りの50%の半分25%が溶け込んで、75%が溶け込んでいる事になる。その次の10分では25%の半分だから12.5%、87.5%が溶け込んだことになる。半分の半分をくりかえすと無限の時間がかかるから、とりあえず、6回の繰り返しで、ほぼ100%が溶け込むことにしている。10分で半分だったから、10分の6回繰り返して、60分で飽和に達することになる。つまり、10分の半飽和組織は60分で飽和する。
身体の中の組織は一様ではない。血液、皮膚、筋肉、内蔵、脳、脊椎、骨、等様々である。
それをビュールマン教授の理論では、飽和の半分、半飽和時間を5分から635分までの16通りにわける。これはあくまでも計算のための分類であり、肝臓は何分、胃は何分という指定はない。概して言えば、血流の多いガスの入れ替わりの速い、筋肉などは短く、脊椎など身体の芯で脂肪分が多く血流に少ない部分は長くなる。
例えば半飽和時間が最短の5分の組織では、5分の6回、30分で飽和に達することになる。この組織の呼び名としては、半飽和時間5分の組織、略して5分の半飽和組織という事になる。これを英語でコンパートメントと呼んだり、組織モデルとよんだりしているが、潜水士のテキストでは、半飽和組織という。635分半飽和組織は、635×6=3810分、63,5時間で飽和する。完全に溶け出すのも63時間かかることになる。
ここまではM値の前提条件である。ここまでは、僕でも分かったし、説明もできた。
しつこいけれど、ここまでせつめいしてきてしまったので、行き着くところまで行かなくては、気分が悪いので、つづく。