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Channel: スガジロウのダイビング 「どこまでも潜る 」
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0522 潜水士とケーブルダイビングシステム

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何時も一緒に潜っている早稲田の博士課程の学生から、後輩が潜水士の試験を受けるから、今度の改正で、僕と工藤くんの書いた改正前の参考書「一発合格」で大丈夫かという質問がきた。
まず、新テキストを読んでください。改正になって試験と関係のあるのは減圧表の部分です。減圧表を規則に組み込んでいたものを外して、代わりに減圧理論が入ってきました。参考書「一発合格」を減圧表の部分を外した全体は、有効です。おそらく、今年の試験も減圧表の部分を外して、後は、従来の問題が、そのまま出るものと思われます。 新しく減圧表に入れ替わって加入した減圧理論についてですが、用語として、M値、半飽和組織について新しく書き加えられています。しかし、新しいテキストのM値の説明は、説明が下手で、理解不能です。なんだかわかりません。試験としては、テキストの160pの用語の定義のフレーズを覚えておけば良いでしょう。「過飽和もある圧力以内では減圧症に罹患しない。その減圧症に罹患しない最大の不活性ガス分圧をM値という。」なんだかわからない説明は丸暗記する他ない。後は、純酸素を減圧に使用できるようになったこと、窒素分圧の最大が定められて、空気では40m以上に潜れなくなり、その代わりに混合ガスの使用の説明があります。これも覚えておくこと、器材としてはリブリーザーの説明が付け加えられていて、この部分にちょっと山をかけています。リブリーザーの長所短所を覚えておいてください。これで、現役の大学生ならば、五択の選択の感があるでしょうから、一発合格となるでしょう。
こんなことを書いたら、工藤くんから書き込みがあった。
なんだか、高気圧室内作業向けの法改正、システム潜水屋さん向けの新テキストで、従来の潜りさん向けの話はかやの外になってしまったような感じですよね。時代の流れなのでしょうか?
新テキストは、180度までいかないにしても、80度くらいは斜めに進んでしまった感があります。そう思うのは僕だけでしょうか?

 僕もそう思う。作業潜水の港湾潜水士は、未だなんとかなるとして、水産、漁業の潜水は、これでもう壊滅する。
 これまででも、漁業者がこの試験を通るのは難しかった。問題が難しいとか易しいとか言う前に、筆記試験というものがもう駄目な人がおよそ半数である。これまでの試験で半数だったから、今度の改正で、新しく漁業者が潜水士になることは、更に半分になるだろう。窒素の溶けこみと同様に、指数関数的に受かる者が減ってゆく。
 工藤君も北海道で、漁師さんの潜水士受験講習で頭を痛めている。東京近在では、漁業者がダイビングを習って、アワビの稚貝放流をやりたいということで、潜水士が取れないと困る。決して能力が低いわけではない。ビジネスと漁については卓越した能力をもっている。しかし、40歳過ぎてから数式が沢山出てくる試験に合格することは不可能な人が、半数以上だろう。

 そして、もう一つ困ったことがある。今度の規則改正で、窒素分圧が400kPa(キロパスカル)を超えてはいけないことになった。
工藤くんの説明によれば、
空気100%=酸素21%+窒素79%を
空気100kPa=酸素21kPa+窒素79kPa
と、%をそのままkPaに読み替えても良く、
窒素400kPaまでの制限は、
400kPa÷79kPa=5(絶対圧力)なので40mが空気の限界
これもかなりややこしい。なんだかわからない人がほとんどだろう。要するに、400kPa以上に窒素の分圧の高い空気を吸ってはいけないと規則で定めたわけだ。窒素が400ということは、1気圧(大気圧)で79だから、400を79で割れば、およそ5atmになる。絶対圧5気圧は、40mだから、40m以上空気で潜ってはいけないことになった。
漁業の潜水、たとえば定置網漁業では40mを超える潜水が毎度のことである。その度に混合ガスを作ることなど、漁業組合では難しい。規則は無視する他ない。無視するだろう。旧減圧表のように90mまで空気で潜れるというのが世界の常識に外れているといっても、せめて60-70mは空気で潜って良いことにしておかないと。潜水作業が、できなくなってしまう。知人の多い、北海道知床半島の定置では、どうするのだろう。この規則改訂は、水産の潜水の首を締めてしまう。
一方で、僕も潜った事がある大分県の保戸島で60mに空気で3人が潜って全員死んでしまった。しかしこれは空気で潜ったから、だけではなくて、下手くそが一人混ざっていたからで、しかも、水面との連絡手段を全く講じていなかった。40m以上は、有線通話機を持つとか中性浮力の命綱をもつこととかすると、僕の考えたケーブルダイビングシステムになる。もはやケーブルダイビングシステムは、在庫も無くなってしまったし、自分の分として2セット残っているだけだ。

なんだかんだ言ってもやはりケーブルダイビングシステムがあきらめられないのだ。
 
 レクリエーションダイビングでも、困ったことがある。インストラクターやガイドダイバーはプロの潜水士として、規則に従わなくてはいけない。規則は作業ダイバーのための規則だから、インストラクター、ガイドダイバーと一緒にバディで潜る、お客もこの規則に従わなくてはならなくなる。
 全てが作業潜水の規則で縛られる。水産の現場でも、スポーツの現場でも毎度無視、違反し続ける他ないだろう。そして、その工事作業潜水でも、工藤くんの言うとおりで、お金のかかるシステム潜水で行わなくてはならなくなる。そんなことはできにくいから、無視するだろう。

 どうしたら良いのだろうか。漁師さんでも受験に受かる参考書を作る。レクリエーションについては、問題点を洗い出すようなシンポジウム、フォーラムをやって、問題提起する。そんなことで、とりあえず、様子を見る他はない。


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