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Channel: スガジロウのダイビング 「どこまでも潜る 」
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0215 女子柔道

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 本を読む、考える。書く、考える、そして人と会う、行動(水に入る)というサイクル、きらいではない。その間に個人所得の申請などが入るのが、すごいプレッシャーになる。
 最近話題になった柔道女子パワハラの問題、スポーツを教えるということを仕事の一つとしてきた身として、おろそかにはできない問題だ。

 今日読んだ本。「栄光一途」雫井脩介」
 手に取ったら女子柔道の話だから読むことにした。
 おもしろかった。主人公は、かつて世界選手権で金メダルをとり、まだ若いがアキレス腱切断でオリンピックを断念して引退し、オリンピック代表の下っ端コーチをつとめる望月篠子で、スポーツ心理学を専攻、大学助手もしている筋肉美人で27歳。
スポーツ心理学というと社会スポーツセンターの講習でお世話になった日体大の長田先生を思い出す。怪しい先生だったけれど今お元気だろうか。この小説にもでてくる催眠術のような自律調整法も教えられて、僕もやってみたことがある。やったことがある人少なくないと思う。仰向けに寝て、リラックスして腹式呼吸をする。「右の足がだんだん重くなる。」とか、自己暗示をかけて、最後は心を体から離脱させることができる。僕はついにできなかったけれど、スポーツ心理をやる人はきっとできるのだろう。
 小説のもう一人の主人公は、同じ大学助手仲間の佐々木深紅。示現流達人の女剣士である。テーマは、オリンピックの柔道選手のドーピング問題を扱っていて、題材と主人公たちのキャラクターがおもしろくて一気によんでしまった。女剣士が最後は悪人どもを示現流で叩きのめして解決してしまうのだが。読んだあとの後味が悪かった。オリンピック候補の若い選手たち二人を精神的に壊してしまう。いくらミステリー仕立てにしようとするのでも、せっかくスポーツコーチという職業の苦労と栄光をあるていどの感動で読んでいて、納得しているのにそれをどんでん返ししてしまう。オリンピックに選ばれた、女子と男子の選手が殺人をしてしまうなんて。ありえない嘘になってしまっている。
 ただ、スポーツ選手には、長田先生が言っていたように、メンタルの要素が大きいことはわかる。そしてこの本の頭の方で、主人公のコーチが、イメージトレーニングとメンタルトレーニングのちがいを説明するところなど、よかった。イメージトレーニングは、メンタルとフィジカルの両方にかかる橋なのだ。ダイビングでもフィジカルとメンタルは車の両輪だ。そして、イメージトレーニングはとても大事だ。エントリーからエキジットまで、頭の中でイメージ、つまり絵として超早送りで見通せなくてはいけない。
この小説、監督が日本柔道を強くするためにドーピングをやってしまうのだから、これもありえないひどい話だ。本当に、手に汗握るような面白い小説で、感情移入していたのに、ラストのどんでん返しで、がっかりしてしまった。小説は、サクセスストーリーでなければ、読者を励ますことはできない。
 この小説でもそうなのだが、現実でも、日本の柔道界は金メダルをとらなければ、中心のコーチになることができないみたいだ。
柔道女子15人の乱、週刊文春によれば、筑波、東海連合対明治大学の暗闘だという。あるかもしれないが、しかし、男の監督が女子の選手をはたくなんてありえないことのように思える。たぶん、監督は、自分も殴られて育って一流選手になったのだろう。女と男のちがいもわからずに女子の監督をやっている。やらせる方もどうかしている。男が女をたたけばパワハラだ。女が男をひっかいても、パワハラとは言われない。そして、女が男よりも強い、そして頑固、女の怖さもしらないのだろうか。
 そして、なんと理屈をつけようが、スポーツで暴力はゆるされない時代になっている。愛の鞭なんて言葉は昭和時代の言葉だ。時代を理解しない。つまり社会常識のない人が監督をして強くなるわけがない。スポーツは今では科学だ。論理的でなければコーチはできない。昔とはちがう。


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