Quantcast
Channel: スガジロウのダイビング 「どこまでも潜る 」
Viewing all articles
Browse latest Browse all 1388

0218 波佐間人工魚礁(3)

$
0
0
 秋になると、何時ドライスーツを着ようかと思う。このごろでは、早めにドライスーツになる。寒いからではなくて、なるべく早くドライスーツになじみ、身体に付けるウエイトになれようとおもうのだ。ドライスーツなしでは冬も潜り続けることができない。
 その冬が来ると、今年の冬は生きて越せるだろうかと思い始めたのは何歳の時からだったろう。76歳だったか、もっと前だったか。生きてということは、人間としての死ではなくて、ダイバーとしての死、本州太平洋岸に潜る気力がなくなるということだ。
 ダイバーとは、野生の動物だとおもう。冬を越せるだろうかなどと思うまでは、そんなことを考えもしなかった。そんなことを考えるということが、野生ではなくなるということなのだろう。

 タンクを背負う。今日は12リットルにした。10リットルでは、100mのラインの往復ができないと困る。ボートの床にタンクを置いてもらって、BC.のベルトに肩を入れる。ボートオペレーターが左肩を入れるのに手を貸してくれる。四つん這いの姿勢で、ベルトを引き締める。ホースをドライスーツにつないで、タンクのコックを開いてもらい、マウスピースを咥えて吸ってみる。

 バディの福田くんは、今、ベルトに肩を入れたところだ。そのまま少し待つ。
 二人の準備ができて、OKサインを交わして、ぼくはそのまま、船縁に這ってゆく。立ち上がる事はできない。7キロのベスト、4キロのベルト、それに今日は、1-4キロのレッグウエイトをしていない。レッグウエイト分の重さがあるドライフィンを履いている。このごろ、このフィンを履かないのだが、この方がバランスが良くなるかと付けて見たのだ。
 頭を下にして水中に突っ込む。身体が一回転して水面に顔を出すとき、足に空気が入っていると上手く起き上がれない。ドライの空気を抜いて、BC.の空気を抜く。どうやら正立して船を見る。福ちゃんが大きなカメラを、手渡したもらう、その船頭の姿を見た。潜降のロープまでの距離が8mほどある。その8mを泳ぐのが嫌なのだ。泳力が弱くならないように、プールではダッシュのトレーニングに余念がないのだが、重いウエイトとタンクを着けるだけで、息が上がりそうで、そして水中で一回転、そのまま、垂直に水底にむかうことは、福ちゃんと打ち合わせ済みだ。頭を下にしてフィンを動かす。フィンの推進力が緩い。ドライフィンのベルトはスプリングベルトなのだが、締め付けがゆるくて足首のところでフィンが折れるのだ。とにかく、懸命に動かして、沈む。
 透視度が6.5mの濁りだから、何も見えない。カメラを付けているラインの起点が見つからなかったらどうしよう不安になる。ロープをたぐれば良かったかなと少し悔やむ。

福ちゃんが前に回って姿を見せてくれた。フォローしていることのシグナルだ。そのまま潜ると、真新しいロープが斜めに見えている。良かった。ラインの端に着けられているブイのロープだ。
 ゼロ地点のカメラは、4.5角人工魚礁の縁に上手く着けられている。海底に膝をついて、カメラをチェックする。ソニーが付いている。これは福ちゃんのカメラだから、間違いはないだろうと、てから離して、鉛ロープのラインをたどる。ラインには黒いビニールテープで印がついていて、印のところにカメラのウエイトラインがクリップでとりつけられている。全部のカメラが正常に動いていることをぼくがチェックすることになっている。

 黒い10m間隔のマークではなくて、その中間の5mマークに付けられたのがあった。そのままにしておいても良いのだが、いや、そのままにしたほうが良かったのだが、はずして曳いて行く。どこかについていないところがあるはずだから、そこにつけよう。
 福ちゃんがフォローして上方から僕の姿と周辺の海底状況をさつえいしているはずだ。カメラと、もしも魚礁があれば、その魚礁との相対的な位置関係が記録できる。ダイバーの姿がうつりこんでいるということは、ものの大きさと比べるスケールになる。
 本当は、トリムをとった水平姿勢になり、フロッグキックで泳がなければならないのだが、フィンの調子がカクカクでそんなことはできない。なるべく、泥を巻き上げないようにと意識はする。
 SJのカメラが動いているかどうかのインジケーターが見難い。リセットして動かそうとすると電源が切れてしまう。水中でカメラをセットするのがこのカメラでは難しい。

 100mの端までチェックしたので、ラインの上を基点に戻る。
 実は、水中であまり調子がよくなかった。少し身体のバランスが悪く、気持よく泳いでいない。浮上のロープを手繰って、水面に向かう。実は、実はが続くがダイブコンピューターを忘れてきている。普段の生活では、時計型のダイブコンピューターがあまり使い勝手がよくない。カシオのプロテックスを使っている。今朝、寝坊したのでPCのキーボードの上に置いて、忘れないようにしていたのだが、PCも見ずに出てきた。
 別にどうということはない。水深25mならば無減圧の潜水時間は25分とおぼえている。安全停止は適当にやればいい。荒川さんがあとから上がってきたので、彼と一緒に浮上すればいい。
 荒川さんが浮上する。後をついて浮上。彼は身軽に梯子を上がる。ぼくもフィンのかかとを踏んで上がろうとするが、ロングのドライフィンでかかとが上がらない。膝で上がろうとすると、誰かがタンクを引き上げてくれる。自分の力で上がれなくなったら、引退だ等と言っていた手前、恥ずかしいのだが、とにかく引きげられる。右足のドライフィンが外れたと思ったが外れていなかった。このフィンがおかしかった。


 2回目の潜水はパスして、カメラの引き上げをした。2回目はフィンも変えて、レッグウエイトも付けて、いつもの体勢になり、2回めの方が調子が良くなるので、と思っていたが、この濁りでは撮影にならない。無理をすることもない。無理をしない、なんて言ったこともない。無理をして生きているのだ。が潜っても何の成果も期待できない、トレーニングだけだが、そのトレーニングをしないで、終えてしまった。

Viewing all articles
Browse latest Browse all 1388

Trending Articles