スクーバ・ダイビングは、ただ、潜るだけで満足できるのだが、何か、目的を持って潜ることを覚えると、潜るだけでは、つまらなくなる。昔は魚を突いて獲るスピアフィッシングが盛んだった。食べ物を狩るのは原始時代からの人の生命線だったから、人間には狩猟本能がある。しかし、趣味的に魚を突き獲ることは、規則で禁止されているし、ダイバーが魚を追い回せば、少なくともダイバーが潜り、活動する水域からは、魚の姿が消える。スピア、水中銃をカメラに持ち替えた。これならば、規則にも触れないし、魚も減らない。
水中撮影は映像のハンティングだから、狩猟本能も満足させられる。しかし、人は映像撮影の向こう側に更に何かを追い求める。撮影の結果の作品を売ることができれば、プロの写真家になれる。しかし、水中でカメラを構えるダイバー全員がプロの写真家になれるものでもない。もう一つ撮影には大きな意味がある。それは記録することである。撮影記録は、すなわち撮影調査である。これも結果を追い求めることができるから、狩猟である。
ダイビングはチームプレーが原則である。バディが水中でのチームの最小単位であり、バディシステムによって、水中での安全が確保される。バディシステムについては、別の話で、詳しく述べるが、とにかく、ダイビングはチームプレーである。
チームプレーで目的を持って潜水することは、たのしい。僕達の目的は水中撮影による調査であり、この調査をスポーツ的に行えば、楽しいとともに、それぞれ役割を決めて活動するのだから、安全性も高い。
またまえがきが長くなってしまったが、僕たちは千葉県館山、内房側の人工魚礁調査を目的とした潜水を、毎月定例で行うことにしている。
このスポーツダイビングとしての調査が、普及して、スポーツダイバーが潜水する津々浦々で行われるようになれば、日本の海に貢献できることが計り知れない。と目的を思い定めている。
もうこれで、このブログでは、このようなまえがきは次回から省略しよう。これまでにも何回も書いている。
2月15日、で数えて5回めになる。8月23日、12月23日、1月12日、そして今度の2月15日だ。カテゴリー、リサーチダイビングで検索してもらえると、このブログでのこの人工魚礁調査の全記録が見られる。
朝7時の福田くんとの待ち合わせだ。どうしても、朝の待ち合わせは、置きられないのではないか、と心配になる、3時、4時と小刻みに目を覚まして、次に目を開けたのが6時だ。6時には、現地に電話してできるかどうかの確認を取らなければならない。「平らですよ。風が吹いているけれど南風だから大丈夫。1時間では、寝起きで、頭も身体も準備ができない。バッテリーチャージをしているカメラが2台ある。ハウジングに入れて蓋をして、どライスーツだから、「おむつ」を穿く。この前、マミと一緒に館山に向かった時、がまんができなくて大変だった。潜水中に尿意をもよおしたら、危険だ。別に「おむつ」をしたら、その中にしなくてはいけないという規則はない。パンツの代わりにおむつを穿けばよいだけのことだ。
こうやって書かなければ、ぼくがおむつをしているなんて誰も知らない。今、穿いているのは、3回目の使用になる。汚くなっていなければ、5回は使える。
車で事務所に走らなくては間に合わない時間になってしまった。
7次の待ち合わせだが、6時45分に事務所につくと、もう福田くんが来ている。この人はすごい正確なひとなのだ。事務所のドアの外に出していた荷物、ドライスーツのバッグとBC.レギュレーターのバッグを積む。出発、自分の車を車庫にいれる。
海ほたるを通ってゆくことにする。これは速い。
館山に着いて、館山湾を見ると白波が立っている。沖ノ島をかわせば波はすこしはおさまっているだろう。
僕達がトップで到着した。
ガイドの荻原くんが、申し訳無さそうに、「透視度が、6.5mかな」という。数日前までは15m見えたのに。残念だけど仕方がない。透視度の良否は兵家の常、いやダイビングの常だけど、2月は、寒く、水温も低いけれど、透視度は一番いい季節だ。それを頭に思い描いている。しかし、仕方がない。
悪い、6.5mの透視度で、どのくらいの撮影ができるのか、のテストになる。
車から撮影機材を下ろして、荒川さんの作業場で組み立てる。カメラは11台だ。ぼくのG0Pro2が3台、SJが2台、AEEが2台で計7台、福田くんが、SJが2台、コンツアーが1台、ソニーが1台、合計4台で、総計11台になる。
ウエアラブルカメラのオンパレードである。どのカメラが使いやすいか、画質が良いか、そして、インターバルで何時間の記録ができるかの比較になる。
コンツアー、意外に使いやすかった。
カメラをウイング(垂直安定版)に取り付け、浮きとウエイトを取り付ける。辰巳でテストして、ウエイトを最小にしてバランスを撮っている。海でこのセッティングでは初めての使用になる。
一応カメラのテストも行う。
今日のラインの引き方について、荒川さんと打ち合わせる。4.5m角のブロックから、タイヤ魚礁に向かうことにする。タイヤ魚礁は前回も調査しているので、比較になる。そして、数日前、イサキの稚魚がタイヤで撮影されている。すごい大群だった。この真冬の季節でもイサキの稚魚がいるということは、イサキは周年産卵しているのだろう。
この最悪の透視度で、どのくらい見えるかが課題だ。
カメラの準備をしているときは、何時でも身体の調子が悪く感じられる。潜るのが億劫なのだ。しかし、ここで引き下がったら、僕はダイバーとして死ぬことになる。