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Channel: スガジロウのダイビング 「どこまでも潜る 」
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0208 シンポジウム報告 人工魚礁

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レクリェーショナルダイビングと人工魚礁
   独立行政法人水産総合研究センター 
          水産工学研究所 高木儀昌 

※ 高木先生はJAUSの正会員であり、発表でも映像を見せてくれたが、巨大な高層魚礁を考えだし設計した実績がある。
 ヒラメを対象魚にした低い、十字礁と呼ばれる魚礁に中層に浮く浮魚礁のようなものを付け加えたら、集まる魚の種類も数も変化したことから、浮魚礁の高さまで高くした魚礁が作られた。高層魚礁にあつまるマグロなどの映像が映写された。
 
 発表のレジュメから
 1.はじめに
 人工魚礁の設置は漁業者自らが漁場を広げ、収入を増大させるためにはじめられたものであるが、やがてこの事業が国や県の税金で行われるようになって、当初は石(投石)や廃船、電信柱などを沈めていたものが、コンクリート製や鉄性にものになり、規模や形も様々なものが作られるようになった。
 漁業者は高齢化し、漁業者数は減少の一途をたどり、人工魚礁の造成も減少傾向になっている。特に生産性の高い沿岸の水深30m以浅の海域ではほとんど造成されなくなっている。この生産性の高い海域では様々な開発の可能性を残しているが、漁業にその力はなく、国の制度でも限界にきている。
 新たな開発のためには、漁業と共存できる、海を海として楽しんでいる多くの国民と協力する形を構築する必要がある。

 巨大な高層魚礁

 2.人工魚礁に集まる魚
 人工魚礁は、優良な漁場となっている天然の岩山(天然礁)を人工的に作ろうとしたものであり、天然礁で見られる魚は同じように見られるが、海域、人工魚礁の規模や形で集まり具合が異なり、季節によっても変化する。
 3・人工魚礁の形と集まる魚の関係
 形が変化することで集まる魚が変わり、行動が変わるが、行政的には、人工魚礁の形で集まる魚が変化することは認識されていない。結果として形と魚の関係についての研究は進んでいない。この研究を進めるためには多くの形と集まる魚の関係を調査する必要があり、この調査は時間とお金がかかる割には得られる結果に効果が認められないからであるが、効果の高い形の魚礁を作る研究を進めなければ効果的な造成ができない。
 ※、この部分にレクリエーショナルダイビングとしての人工魚礁調査と研究の余地がある。
 4.魚の生態の解明
 人工魚礁に魚が集まる理由は、餌場、逃避場、産卵場、休息場として利用されていると言われている。しかし、魚と魚礁の位置関係は、従来行われてきた潜水調査から得られた魚礁周辺での魚の観察結果をまとめたもので、魚礁周辺での行動の意味を分析した結果ではない。
 ※、人工魚礁に集まる魚の生態観察によって、魚の生態を研究することができる。
 5.レクリエーショナルダイビングと魚礁研究
 人工魚礁は、日本全国、北海道から沖縄まで様々な形のものが設置されている。そのうち、漁業に使われていないところも多くあり、漁業者の理解が得られれば、レクリエーショナルダイビングの活動の場を拡大できる可能性がある。
 特に沿岸域に設置されている人工魚礁は古いタイプのものがほとんどで、今後の開発によって集魚効果を高めることが出来れば、漁業者との協力が得られやすくなり、沿岸漁業にレクリエーショナルダイビングの活動を役立たせることもできやすくなる。
 私たちは、既存の人工魚礁のように陸上で定形のものを制作し、海域に設置するのではなく、ダイバー自らの手で、海中で組み立てられるプラモデルのような人工魚礁を計画している。このように人工魚礁を懐中で少しずつ組み立てることで、魚の集まり具合を観察しながら、必要な部材のみを取り付けることができ、結果として効果的な魚礁に仕上げることができます。また、予定の形を変えることも可能で、自分たちだけの人工魚礁にすることもできます。
 このように、潜水を楽しみながら海中に人工魚礁を少しずつ組み立ててて、同時に集まってきた魚の行動を写真やビデオで記録することで、魚と形のの関係や魚種別に効果的な人工魚礁の形状が研究出来たり、魚の生態を明らかにすることができる可能性があります。

 JAUS人工魚礁研究会の計画・企画
 水中活動の目標の基本はいまや水中撮影である。ダイバーのほとんどがカメラを手にして、あるいはウエアラブルカメラの普及によって身に着けて潜水する。撮影の基本目標は記録であり、記録の目的は記念撮影、生物の観察撮影である。
 JAUSではウエアラブルカメラを取り上げて、2012年より積極的に研究を行い、ウエアラブルカメラ研究会をつくり、2013年9月のフォーラム、今回2月2日のシンポジウムでも作品を発表して、着々と技術的に成長を続けている。

 ウエアラブルカメラは、一面、水中リサーチ用のカメラとも言える。生物の観察撮影を人工魚礁を対象に行えば、すなわち人工魚礁調査である。ウエアラブルカメラ研究会が多用しているポールカメラなどは、魚礁の奥深くへ挿入して撮影が可能である。しかし、アトランダムに撮影された画像では、調査としての成果に結びつかない。
 ウエアラブルカメラ研究会の活動として、活動ブランチとして、人工魚礁撮影研究グループを結成しようとしている。
 その一環とも成るべく、今回の高木先生の講演をお願いした。今後調査結果の分析、手法の確立について、顧問的に助力していただく予定にしている。

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