増井 武 氏撮影
今回の目標は東大の海洋調査探検部がその50周年記念に発表する研究調査の実施状況を、横から撮影記録して、発表に力を添える。それは、目を離さないことでもあるので、学生のダイビングの安全確保にもつながっている。
別の眼で監視していることが、安全確保の要点でもある。 2000年、21世紀に入ってから、大学・研究者のスクーバダイビング事故がいくつか、あまり間隔を置かずに起こり、大学・研究室が、スクーバダイビングを使う研究をテーマに選ぶことは、稀れ、になった。その安全を確保する確実な手段が無くなったと思える現状では、無理からぬことである。
自己責任と、ぼくらダイバーは唱えるけれど、それが、空念仏に過ぎないことは、よくわかっている。だからといって、リサーチ・ダイビングは、一生をかけて、追ってきたテーマである。やめるわけにはいかない。終わりまで行く、覚悟をしている。
東大探検部50周年の現役の発表は、安全の追求に裏付けられていなければならないし、安全確保の方法の確立も、そのテーマであろう。
そして、この自分は、東大海洋調査探検部50周年の、そのスタートの時から、アドバイザーで関わっており、そこで指導した縁で、僕のバディとして沖縄、オーストラリアに同行して、親しい付き合いをしている小久保英一郎(現、東大理論天文学教授)は、そのコーチ的な役割を果たしている。
それでも、日本水中科学協会のタイトルの付いた研究会に彼らが参加することは、責任を負いきれないという意見もあった。
しかし、
日本水中科学協会が発足以来目指してきた最大のテーマは、学生、研究者の安全な研究活動の手法追求でありその支援である。実技としてはプライマリーコースをやり、最新ダイビング用語辞典を編纂した。最新ダイビング用語辞典は、辞典の形を取っているが、実は研究者のダイビングテキストなのだが、その意味では、ちょっと遠回しになってしまっていた。
そこで、今「リサーチ・ダイビング」という本を計画している。
その内容要旨は別に発表するが、この人工魚礁研究会は、その実験フィールドとして、最重要である。
保険の加入も含めて、いくつかの実施上のトラブルというか議論が、ここにきて提起されているが、それも、このフィールドワークの実践的な効果である。 誰れでもそうなのかもしれないが、僕は走りながら考える。フィールドで実体験をして、間違いに気づき、間違いを指摘されながら、考えをまとめていく。海にでなければ、考えがまとまらない。言葉をかえれば経験から学ぶ。
5月の調査までは、東大は東大、僕らは僕らで、別々の調査活動をしていて、陰ながら見て、安全をキープしよう、という形だった。
6月20日の研究会で、東大のチームを撮影してみて、そうだ、彼らの動きを逐一撮影しようと、撮ったのだが、そのとった部分がカメラミスで撮れていなかった。
7月は学生の期末試験、僕は豊潮丸航海で中止、8月の初旬、7日に予定を持ってきた。 台風8号が九州へ抜け、その後を追うように、9号が先島へ、さらにその後を10号が接近してくる。
8月7日は、8号が高気圧の縁を巡るように九州に向かう、その横で、波左間は凪だと予想した。
波左間の荒川オーナーによれば、20日以上凪が続いているという。その凪の最終日近くに滑り込みできた。 9時集合。
何時も遅刻の東大チーム、早起きをお願いしたので、30分ほどの遅刻で、到着した。 ログ date 2019 0807
第26回 人工魚礁研究会 一回目の潜水
①目的:タイトル 人工魚礁研究会
③場所 波左間
④スポット 超大型FP礁10個
⑤天候 晴れ 南西の風 沖で5m 波高 0。5 m
⑦水温 27 ℃
⑧透視度 30 m 1ノット弱の流れ
⑨潜水開始 1014
潜水時間 28 分 ターンプレッシャー 80
⑩最大水深26,4 m
⑪潜水終了
⑫インターバル プラン 90分
⑬チーム 須賀 山本徹 早崎 増井 高野 鶴町 奥村 福田 東大探検部 田村陸 實藤未来 内田 ⑭バディ A 須賀 鶴町 福田 B奥村 山本徹 高野 C 早崎・増井 D 東大3人
⑮残圧予定 50
摘要
全員に上記の計画ログを渡してのブリーフィング
計画
AとC バディは、Dの東大チームの動き撮影
Aは、タンクが小さい須賀を含むので、早く上がるので、CはDを最後までフォロー、
Bは3名が離れないようにして山本 主導 Aと一緒に浮上
JAUS正会員である細田さんが臨時参加 須賀のAチームに入れる。 このログは計画書でもある。(上記はすでに書き込んである)時間、水深などをあとから書き込む。
この計画書を各自メンバーに渡してブリーフィングを行う。
実施
FP ポイントは、流れがあるという。僕は流れが怖い。体力的にさかのぼれないおそれがある。
出発の寸前まで、ドライスーツで行くつもりだった。身体が重いのがドライの難だが、それでも、寒いよりは良い。サンファンのハイブリッドジャージは動きやすさは、ウエットと変わらない。
しかし、朝の暑さで、さすがに、これはドライは厳しいとウエットにした。
ウエイトは6キロのベルト、沈まないと流れが恐ろしいので、レッグにウエイトをつけた。
荒川さんは僕らが、多分僕が流されないようにガイドラインを張ってくれた。ボートを繋いでいるブイとは別に、魚礁からボートの梯子部分とを結んでロープを張った。
僕は船首から飛び込んで、船尾の梯子まで流されていき(ゆるい流れだが)ロープをつかんで たぐり急速潜降した。
驚くほど透視度が良かった。夏なので、濁りを心配していた。この透視度ならば、良い撮影ができるだろう。何時もと同じように、増井、早崎組が先に降りていて、山本さんは、それに続き、荒川さんは船首の潜降策の途中にとまって、全体をウオッチしている。山本さんは、直下にいるが、とバディをお願いした奥村君と高野さんは見分けがつかない。。
僕の後ろには、僕のバディの鶴町がいるはずで、それを見るようにして福田君がいて、そのさらに後にの学生Dバディがいるはず。
Olympus TG4の上に載せた、ウエアラブルカメラのAKASO braveが回っている状況を確認する。これは、エントリーからエキジットまで動画を記録している。(またまた、時間設定を間違えた。9時との表示は、10時である)左手で、ロープを手繰りながら、右手でカメラを保持する。マスクマウントも回しておけば、この潜降シーンは、うまく撮れるのに、マウントの糊付けが剥がれてしまって、その後なおしていない。早く修理しなければ。 流れの速い水面近くは過ぎたので、ロープを離して自由潜降にした。これが、手放したことが、失敗だった。撮った絵的にも、ロープが写っていた方が良いし。ロープを手繰って魚礁の上に着陸した方が良かった。
海底に着底して、振り返るようにして、学生Dバディを確認する。彼らは着底しないで、三人固まって確認しあっている。それを下からあおり気味に撮る。上を通過して魚礁の方に向かう彼らをフォローしていくつもりになった。
が、フォローできない。自分が進まないのだ。魚礁が流れを遮っているはずなのに自分の身体が進まない。進まない理由は、オーバーウエイト、水平姿勢が下手くそな上にカメラを構えて回しながら進むと身体が立ってしまう。プライマリーコースをやっていた時に、ずいぶん練習して、まあまあの線まで行ったのに、その後練習していないのでさび付いている。それに、加齢のため、背中が曲がっている。
大きな、一番良いカメラを使っている福田君が追って撮っている。だから、まあ良いけど、情けない。僕が遅いので、心配して、ターンしてきた鶴町と並んで魚礁に向かう。
いつもならば、まず下の段(超大型ブロック二段重ね)に入って、オオモンハタ、メバルをチェックするのだが、学生を追っていて追いつかなかったので、中途半端になってしまった。
もう一度着底してウエイトを締め直す。30cmぐらいのイサキの群、が魚礁の中と外を出入りしている。イシダイ2尾通過
一応、魚類をチェックして、上の段に登り、学生バディを上から探す。
ちょうど3人がラインを引いて魚礁に入ってくるところだった。それを上の段から俯瞰で撮る。
先頭を3年生の田村君がカメラを構えて撮影しながら、(カメラをきっちりと保持しながら)ゆっくり移動撮影をしている。後から、2年の實藤さんが30mの巻き尺ラインを引いてくる。2年の内田君は、スチルで撮影、ストロボが光っている。周囲、全体状況を撮影している。このフォーメーションは、とても良い。實藤さんにマスクマウントを着けさせたらさらに良いだろう。
泳ぎ方も安定していて水平姿勢もとれている。大した流れではないが、流れの中、入り組んだ魚礁のなかをうまく進んできている。バランスも悪くない。泳ぎ方フォームは今一歩だが実用的に問題ない。(今の僕はひどいので、指導はできないが、秋にでも考えよう)
魚礁にはシロガヤの類が密生している。手袋をしてこなかったことを後悔する。
僕は、一応学生は打ち切って、魚の撮影に切り替える。30cmほどのマアジの群が、良い位置にいたのだが、福田君が撮影して散らしてしまった。が、まだマアジの群は魚礁を周回している。魚礁についているのだ。このマアジの群れは、僕たちが魚礁の中に入ってから、寄ってきたみたいだ。
大きなイシダイを見つけたが、下の段にいる。下の段に降りてメバルの大きな群れとイシダイをいい感じで撮れると思ったが、残圧をみると60近くまで下がっている。残念だが下には降りられない。
荒川さんに合図して、ラインを手繰って浮上した。
下で、学生を福田君が撮影しているのがみえる、
後で福田君の映像を見ると、彼らは、延ばした巻き尺ラインを今度は手繰りながら撮影している。戻り途は田村君の撮影する映像にはラインが入り、それを實藤さんがまきながらもどる。これもゆっくりした移動撮影だ。
この撮影結果である程度の定量もできるだろう。結果の発表が楽しみである。
二回目の潜水
①目的:タイトル 人工魚礁研究会
③場所 波左間
④スポット ドリーム
⑤天候 晴れ 南西の風 沖で5m 波高 m
⑦水温 26 ℃
⑧透視度 20 m
⑨潜水開始 1213
インターバル 1時間29分
潜水時間 31 分 ターンプレッシャー 80
⑩最大水深,23.3 m
⑪潜水終了
⑫インターバル プラン 90分
⑬チーム 須賀 山本徹 早崎 増井 高野 鶴町 奥村 福田 東大探検部 田村陸 實藤未来 内田
⑭バディ A 須賀 鶴町 福田 B奥村 山本徹 高野 C 早崎・増井 D 東大3人
⑮残圧予定 50
摘要
2回目の潜水の方が体調も良くなっているし、バランスも良くなっている。余裕を持って潜降できた。
ドリームの上の面、タカベの小さな群、イサキの群が出入りしていて、オオモンハタも3尾、上面に出てきている。
透視度は、午前のFPより、一段低くなっていて10ー15mほどしか見えず、美しいというイメージにならない。その代わりに流れはない。
学生のDバディが見つからない。彼らはラインを引くものとおもっていたので、ラインを捜した。ラインを捜せばすぐに見つかるはずなのだ。
ところが、彼らは、この回、ラインを引かなかった。ちょっとした打ち合わせでも良いから、ダイビング直前のブリーフィングをしておけばよかった。
これは、今回の最大の反省点だ。ドリーム魚礁は慣れていて、おろそかになった。
それに、東大の計画書をもらって居ないのでミズテンになっている。しかし、彼らも走りながら考えているのだろうから、これで良いかもしれない。いずれにせよ、次回あたりで、ミーティングをして、みんなの意見を聞こう。そのためには、「ねらい」程度の仕様書がほしいので、田村君に頼んでおいた。
自分の毎度の調査パターンで、まず下の段を縦断、次に二段目を見る。下の段にはメバル、大きいカサゴ、2段目で、鶴町がイセエビを見つけた。何時も同じ場所にいる。
特筆は、オオモンハタが、上面に何尾も出てきていたことだ。
2段目を通過し、上の段に上がるタイミングで、学生チームを見つけた。しかし、ラインを引いていない彼らは、撮影しても絵にならない。ただ、そこに集まっているだけ、にしか見えない。面倒ではあるが、ラインの効用は大い。先月の豊潮丸の潜水でも、ラインが重要だった。
「リサーチ・ダイビング」では、ラインに一章を設けるつもり、僕は、100mと50mの巻尺を持っているが、東大チームの使っている30mがコンパクトで良い。
ドリームは、透視度がやや悪かった、といっても、10m以上見えているのだが、これまでの調査で、はじめて、ドリーム魚礁よりも、大きなFPの乱積みが魅力的に見えた。
ドリームに近接したFP魚礁もあるのだが、このところ見ていない。
次の8月には、FP二つの見比べをしてみよう。
波左間海中公園では、マンボウランドと呼ぶ、網囲いの中で、ジンベイザメをキープしている。これは、僕が先々月来た時に、定置網には入り、秋まで餌をやって飼っている。
ジンベイがいるので、現在、マンボウはリリースしてしまって居ない。
毎年のことなので、僕自身は、ことさらに、ジンベイを見たいとも思わないが、学生諸君にとっては、楽しいことだ。二本目の残圧を50残して、三本目をジンベイ見物に当てることにした。僕はどうしようか、迷った。僕が潜ると、エントリー エキジットに人の手を煩わすことになる。
潜らないつもりでいたが、舟から見下ろすと、水がきれいだ。これは、良いかもしれない。潜ることにした。
水面から見ると、この網囲いは、それほど大きく見えないが、潜水して見ると、ずいぶんと大きい。
ジンベイ君は、網に沿ってぐるぐる回っている。待っていれば回ってくる。追ったらキリもない。待っていて、動画を撮った。残圧50を30ほど使って、回ってくるジンベイを二回撮影するチャンスがあった。
まあまあ、気に入ったショットが撮れた。僕の使っているカメラはヤクザなコンデジだから、人に見せるような絵は撮れないが、それでも、まあまあ、見られる。現在、パソコンの背景にしている。
透視度が良かったので、良いカメラを持っている福田君、増井君 早崎さんはすばらしい映像がとれている。
僕は返す返すも、FPのメバルの群れと、イシダイのショットが撮れなくて残念。