ダイビングの歴史
久しぶりに歴史書を読んだ。久しぶりと言うよりも、専門(海とか船とか漁業)以外の歴史書を読んだのは、あんまり記憶に無い。
他に歴史について読むのは、教科書の類、予備校の先生が書いたわかりやすいダイジェスト、絵や図版の多いムックの類、あとは小説である。小説は、塩野七生、司馬遼太郎の類はほとんど、そして、ギボンのローマ帝国盛衰史、そういう類とは違う「昭和史」
昭和史 上 1926ー1945 下 1945ー1989
中村隆英
初版1993 読んだ文庫は2012 東洋経済新聞社
著者の中村隆英(たかふさ)は東大名誉教授で著書に「昭和経済史」「戦後日本経済」「現代の日本経済」など、
経済史が専門の先生が書いた。
例によって ブックオフの108円コーナーで手に取り、迷わず買って読み始めた。読了しなくても良いと思っていたのだが、しっかり読了する事が出来た。経済学史が専門の東大名誉教授の書いた本だ。だから、経済の分野がしっかり書かれている。戦後の部分は経済学が主のようだ。経済学などほとんど知らないが、それでも80%ばかりは、解することができた。僕のような経済学の素人が読む経済学史本として名著だと思う。専門外で、小説ではなくて読み終えることができた本は、たいてい名著ということにしているが。名著である。
読みながら、自分が書こうとしている「ダイビングの歴史」のことを考えた。 なぜこの「昭和史」を読み終えることが出来たかというと、昭和は、自分が生きてきた、激動の時代だから、自分の視点があって、それに思いを重ねて読むことが出来た。自分の視点と言ったところで、幼児時代から、小学生、中学、高校、大学、そして就職、独立という時代だが、大学の時はもちろん、小学生の時であっても、自分の視点というものはあった。その視点があったからこそ、身近に感じておもしろく読めた。 自分の生きた時代の歴史は、興味深いし、考えることが多い。ダイビングでも、1956年以来、スクーバダイビングの今日ここまでのすべての時代、歴史を全部生きたのだから、それを書き残すことに大事なことだと思う。
たとえば、僕のレジャーダイビングについては、日本国籍のダイビング指導団体を作り上げ、米国国籍の団体とのせめぎ合いであった。現在では見事に敗軍だが、その視点から書いておくことは、どちらの側からも興味があるだろう。もちろん、逆の視点からは違うという意見も多々あると思うが、その「違う」という考えを引き出すことができれば、それはそれで成功だろう。 僕たちの前の時代、ジェネレーションというと、菅原久一さんらだが、菅原さんがもう少し書いて置いてくれたなら良かったのに、と思う。
だから、僕が書いておくことは、僕の次の次の時代の人の役に立つのだろう?
今ここに書いていることは「昭和史」とは全く関わりのないことなのだが、その関わりのないダイビングの歴史のことを考えながら、「昭和史」を読んでいた。 さて、自分のダイビングの歴史だが、現時点での構成だが、あくまでも現時点であり、これから二転三転するだろうが、とにかく
大きく三つにわけた。
一つは、索引的年表と、やや詳しく内容を記した。年代記とでも言うような部分。
次が小史の部分、小史といってもこのままだと、小さい本一冊分ぐらいある事故の歴史、日本国籍指導団体盛衰記 共同漁業権漁業とダイビング、水中撮影小史、などが大きくて、学生のダイビング、高気圧作業安全衛生規則の歴史、ヘルメット式、マスク式、環境保全活動、パブリック潜水、テクニカルダイビング などがやや小さくて続く。
最後の一つがコラムで、上の小史との境界が定かではないのが、年表部分にはめ込むようなコラムである。
体裁としては年表、年代記部分と小史の二部に分かれるだろう。 ダイビングの歴史も自分の視点と主張があって良いし、それが大事だと「昭和史}を四で確信した。読者が、これは違う、と考えたとすれば、それで、その歴史書は成功している。読者に考えさせたのだから。
自分の生きてきた、携わってきた時代、を歴史として書くことが重要であり、書くことが最後の自分の使命であると思う。そのことを、「昭和史」という自分の生きてきた時代を書いた歴史書をよんだことで確信した。
歴史とは、客観的な最大公約数でなければいけないのでは、と思い悩んでいたところが吹っ切れた。日本にスクーバダイビングが入ってきた1953年のすぐ後の1956年からダイビングをはじめて、そのぜんぶを潜り続けているのは、自分だけなのだから。 ただ年表の年代、何時?はできる限り正確でなければならないし、客観的でなければいけない。小史は主観が入る小説のようなものだが、それでも出来るだけ正確を期したい。小説ではないということだ。
「昭和史」を読み終わったので「平成史」を続けて読みたいとおもったところで、本屋で新刊「平成史」を見つけた。
佐藤優・片山杜秀 小学館2018年4月刊
片山杜秀は慶応大学法学部教授で思想史の研究者で、音楽評論家としても定評がある、ということ。佐藤優の方は、あまりにも多数の本を書いていて、多数書いている、多数読まされているというだけで、もう一冊買いたいとは思えないのだが、この本のように、対談形式で、おもしろくわかりやすくまとめることの職人である。「昭和史」よりも格段に読みやすいはず。僕は今、スキンダイビング・セーフティの改訂版で、4人の対談をやっている。
そして、この本、毎年1pの割合でトピックスを並べて、その解説を対談でやっている。ダイビングの歴史も毎年1P年代記をやろうとしているので、そのまとめ方の参考になるかもと思って買った。
買ってすぐに平成11年(1999)まで読み進んでいる。予想通り読みやすい。
ダイビングの歴史も時代背景無しには作れないので、「昭和史」と「平成史」は参考になる。この本も書棚に並べて置くことになる。
買って良かったということだ。 ※もう、半分は読了した。当たり前だけれど、佐藤優の本だ。よみやすく、おもしろくてどんどん進む。平成史だから、知っていることの羅列で難しくない。それで良いだろう。