減圧理論のことをもう少し。
思い違いがないように、勉強しなおす。
まず、前置きとして、減圧理論について、自分としての沿革から。
はっきり言って減圧理論については無知である。無知であることを書くな!とも思うが、ブログは、論文ではないから、一緒に考えてみよう。
60年潜水していて、減圧理論など知らなくても、水中で活動する(潜水する)ためには、差し支えない。つまり、どうでも良いと思っていた。
学生時代には、当時最先端だった米国海軍の標準減圧表を使った。今の前の前の前の前の、その前のくらいの表だった。繰り返し潜水は、一度目の潜水時間を2倍にするという方法だった。3回めは三倍か?。馬鹿でもわかる方法だった。
その頃、1950年台の米国海軍の表で潜ると、3%ぐらいの確率で減圧症になると教えられた。しかし、なっても治療できるレベルだ、とも教えられた。ダイビングはロシアンルーレットのようなものだと考えていたから、100発中3発ならば別にかまわない。それも治療可能、命は取られない。多くの米国海軍のダイバーも同じように考えたのではないだろうか。
やがて、1962年、日本に高気圧作業安全衛生規則
(その頃の呼び名はちがっていた)ができ、減圧表が規則に含まれた。理論とか何かはわからないから別として、使いにくいことを絵に書いて写真にとったような表だった。だから、この表は潜水士の試験専用とした。そのころから潜水士講習の講師をやっていたから、試験問題専用の減圧表だった。その試験問題というのも、まともな潜水実務家だったら、考えつかないようなひっかけ問題だった。しかし、その問題がこの制度がはじまった1962年から2014年まで、姿、形はかわったが、コンセプトは同じで出題され続けていた。一日についての潜水時間の制限が200分として、最初の潜水で130分潜ってしまった、次の潜水で何分潜れるか。という形の問題だ。200-130=70分、ではない。でも、出題内容によっては、70分のこともある。使いにくいことこの上ない計算図表から、修正時間を求めなければ正解はできない。講習の講師としては、文句を言っても始まらない。テキストがバイブルである。神の言葉には逆らえない。
使いにくい繰り返し潜水の計算図表。
実務としては、使い慣れた米国海軍の表と潜水士の表と比べて、結果の数値、停止時間と停止深度はそれほど変わらないから、米国海軍で行った。その頃になると、米国海軍の表は繰り返し潜水が表から簡単にわかって使いやすかった。
やがて、レクリエーションの潜水の指導をするようになると、米国海軍の表は、米国海軍の水兵さん対象だから、遊びの日本人女性ダイバーには当てはまらないのではないのか、という人が出てきた。実は、日本人女性の方が減圧症にはなりにくいのではないか?とかあとで考えたが、とにかく、もう少し、安全度の高い表が良いのではないかと、英国海軍のRNPLという表を使った。これは使いやすい表で、高気圧作業安全衛生規則とはかなり離れてしまうが安全な方向に離れるのならば、事故さえ起こさなければ良いのだろうと判断した。
やがて、全日本潜水連盟の理事長をお願いしていた、石黒信雄さんが、RNPLよりもカナダ国防省の定めたDCIEMの方がよいのではないかと言い出して、当時、お金があった全日本潜水連盟がその使用権を買った。
DCIEM
石黒さんは、僕の100m潜水(現在、月刊ダイバーに連載中)の総指揮をお願いした上に、ヘリウムまでテイサンから引っ張ってきてくれた。恩人である。彼は子会社の日本アクアラングから、親会社のテイサンに移ったという切れ者で、そして、減圧理論の大家でもあり、「ダイビング・テクノロジー」という本を著している。数式の多い難しい部分は読んでいないので、これから読もうかとおもっている。もしも、石黒さんがお元気であれば、理論はすべておまかせして、僕は運用だけを心がけていれば良いのだが、残念ながら、脳梗塞で倒れ、幸いにしてお元気ではあるが、なかなか東京には出ておいでになれない。
要するに減圧表は、高気圧作業安全衛生規則の表よりも使いやすく安全度の高いと定評のあるものを使えばよろしいわけで、減圧理論はブラックボックスに入れて、蓋をしておいた。
2010年に日本水中科学協会をはじめて、2012年にはダイビングについてのすべてを網羅した最新ダイビング用語事典を製作した。これには減圧理論も書かなくてはいけないので、タバタでダイブコンピューターのことをやっておられ、ダイブコンピューターに関わる減圧理論の権威者である今村さんに監修をお願いした。その最新ダイビング用語事典にもここで話題にしていたM値が書かれている。これで十分であり、何かがあればこれを参照すれば良い、と片付けた。
僕は潜水士の講習の講師が長かったことで、潜水士受験の対策本を書くことになり、若くて、潜水士講習をたくさん、北海道の大学とか専門学校のほとんどを担当している工藤和由くんを共著に誘い入れ、理論的なことは工藤くんに投げて、運用については自分と区分けして書いた。いろいろ不備はあったが幸いにして売れ行きが良く、増刷できることになった。
一方で、高圧則が、1962年以来改定してこなかった減圧表を改訂することになった。使いにくさと、さらに時代遅れを絵に書いたものではさすがにまずいということで、亡くなってしまった、真野先生(医科歯科大学名誉教授で、潜水医学関連では、沢山お世話になり、最新ダイビング用語事典の監修もお願いした。)が、この表改定を最後の仕事にされていた。
先生との雑談の折り、もう規則で減圧表を提示するのは、やめて、減圧理論を提示したら?などと話した。もちろん僕の意見などはどうでも良いわけだが、そのとおりになってしまった。評論家としては、的を得ていたのだろう。藪をつついて、蛇をだしてしまったかもしれない。
そんなことで、減圧表に代わって減圧理論が登場した。
減圧理論もさまざまであるが、潜水士の規則では、ビュールマンの理論式が採用された。この理論式も古く、クラシックであり、1963年頃に初登場している。つまり、高圧則の減圧表と登場時期がほぼ同じである。それまでは、ホールデーンの減圧理論、これも数式は理解不能であるが、言葉で説明すると、絶対圧力で、2分の1の減圧では気泡化がおこらないという理論でわかりやすい。40mに潜水しているならば、20mまで上がってきても良い。現在でも、基本的にはこの理論は基本的に使われているが、この延長線上にあるのがビュールマンの理論で、2分の1ルールの代わりに持ちだされたのがM値であった。
自分的には、数式はすべてNGである。さらに、英語もノー、日本語で自分及び、一般ダイバーにわかるように説明したい。
思い違いがないように、勉強しなおす。
まず、前置きとして、減圧理論について、自分としての沿革から。
はっきり言って減圧理論については無知である。無知であることを書くな!とも思うが、ブログは、論文ではないから、一緒に考えてみよう。
60年潜水していて、減圧理論など知らなくても、水中で活動する(潜水する)ためには、差し支えない。つまり、どうでも良いと思っていた。
学生時代には、当時最先端だった米国海軍の標準減圧表を使った。今の前の前の前の前の、その前のくらいの表だった。繰り返し潜水は、一度目の潜水時間を2倍にするという方法だった。3回めは三倍か?。馬鹿でもわかる方法だった。
その頃、1950年台の米国海軍の表で潜ると、3%ぐらいの確率で減圧症になると教えられた。しかし、なっても治療できるレベルだ、とも教えられた。ダイビングはロシアンルーレットのようなものだと考えていたから、100発中3発ならば別にかまわない。それも治療可能、命は取られない。多くの米国海軍のダイバーも同じように考えたのではないだろうか。
やがて、1962年、日本に高気圧作業安全衛生規則
(その頃の呼び名はちがっていた)ができ、減圧表が規則に含まれた。理論とか何かはわからないから別として、使いにくいことを絵に書いて写真にとったような表だった。だから、この表は潜水士の試験専用とした。そのころから潜水士講習の講師をやっていたから、試験問題専用の減圧表だった。その試験問題というのも、まともな潜水実務家だったら、考えつかないようなひっかけ問題だった。しかし、その問題がこの制度がはじまった1962年から2014年まで、姿、形はかわったが、コンセプトは同じで出題され続けていた。一日についての潜水時間の制限が200分として、最初の潜水で130分潜ってしまった、次の潜水で何分潜れるか。という形の問題だ。200-130=70分、ではない。でも、出題内容によっては、70分のこともある。使いにくいことこの上ない計算図表から、修正時間を求めなければ正解はできない。講習の講師としては、文句を言っても始まらない。テキストがバイブルである。神の言葉には逆らえない。
使いにくい繰り返し潜水の計算図表。
実務としては、使い慣れた米国海軍の表と潜水士の表と比べて、結果の数値、停止時間と停止深度はそれほど変わらないから、米国海軍で行った。その頃になると、米国海軍の表は繰り返し潜水が表から簡単にわかって使いやすかった。
やがて、レクリエーションの潜水の指導をするようになると、米国海軍の表は、米国海軍の水兵さん対象だから、遊びの日本人女性ダイバーには当てはまらないのではないのか、という人が出てきた。実は、日本人女性の方が減圧症にはなりにくいのではないか?とかあとで考えたが、とにかく、もう少し、安全度の高い表が良いのではないかと、英国海軍のRNPLという表を使った。これは使いやすい表で、高気圧作業安全衛生規則とはかなり離れてしまうが安全な方向に離れるのならば、事故さえ起こさなければ良いのだろうと判断した。
やがて、全日本潜水連盟の理事長をお願いしていた、石黒信雄さんが、RNPLよりもカナダ国防省の定めたDCIEMの方がよいのではないかと言い出して、当時、お金があった全日本潜水連盟がその使用権を買った。
DCIEM
石黒さんは、僕の100m潜水(現在、月刊ダイバーに連載中)の総指揮をお願いした上に、ヘリウムまでテイサンから引っ張ってきてくれた。恩人である。彼は子会社の日本アクアラングから、親会社のテイサンに移ったという切れ者で、そして、減圧理論の大家でもあり、「ダイビング・テクノロジー」という本を著している。数式の多い難しい部分は読んでいないので、これから読もうかとおもっている。もしも、石黒さんがお元気であれば、理論はすべておまかせして、僕は運用だけを心がけていれば良いのだが、残念ながら、脳梗塞で倒れ、幸いにしてお元気ではあるが、なかなか東京には出ておいでになれない。
要するに減圧表は、高気圧作業安全衛生規則の表よりも使いやすく安全度の高いと定評のあるものを使えばよろしいわけで、減圧理論はブラックボックスに入れて、蓋をしておいた。
2010年に日本水中科学協会をはじめて、2012年にはダイビングについてのすべてを網羅した最新ダイビング用語事典を製作した。これには減圧理論も書かなくてはいけないので、タバタでダイブコンピューターのことをやっておられ、ダイブコンピューターに関わる減圧理論の権威者である今村さんに監修をお願いした。その最新ダイビング用語事典にもここで話題にしていたM値が書かれている。これで十分であり、何かがあればこれを参照すれば良い、と片付けた。
僕は潜水士の講習の講師が長かったことで、潜水士受験の対策本を書くことになり、若くて、潜水士講習をたくさん、北海道の大学とか専門学校のほとんどを担当している工藤和由くんを共著に誘い入れ、理論的なことは工藤くんに投げて、運用については自分と区分けして書いた。いろいろ不備はあったが幸いにして売れ行きが良く、増刷できることになった。
一方で、高圧則が、1962年以来改定してこなかった減圧表を改訂することになった。使いにくさと、さらに時代遅れを絵に書いたものではさすがにまずいということで、亡くなってしまった、真野先生(医科歯科大学名誉教授で、潜水医学関連では、沢山お世話になり、最新ダイビング用語事典の監修もお願いした。)が、この表改定を最後の仕事にされていた。
先生との雑談の折り、もう規則で減圧表を提示するのは、やめて、減圧理論を提示したら?などと話した。もちろん僕の意見などはどうでも良いわけだが、そのとおりになってしまった。評論家としては、的を得ていたのだろう。藪をつついて、蛇をだしてしまったかもしれない。
そんなことで、減圧表に代わって減圧理論が登場した。
減圧理論もさまざまであるが、潜水士の規則では、ビュールマンの理論式が採用された。この理論式も古く、クラシックであり、1963年頃に初登場している。つまり、高圧則の減圧表と登場時期がほぼ同じである。それまでは、ホールデーンの減圧理論、これも数式は理解不能であるが、言葉で説明すると、絶対圧力で、2分の1の減圧では気泡化がおこらないという理論でわかりやすい。40mに潜水しているならば、20mまで上がってきても良い。現在でも、基本的にはこの理論は基本的に使われているが、この延長線上にあるのがビュールマンの理論で、2分の1ルールの代わりに持ちだされたのがM値であった。
自分的には、数式はすべてNGである。さらに、英語もノー、日本語で自分及び、一般ダイバーにわかるように説明したい。